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アガサ・レーズンの困った料理 [海外の作家 は行]


アガサ・レーズンの困った料理―英国ちいさな村の謎〈1〉 (コージーブックス)

アガサ・レーズンの困った料理―英国ちいさな村の謎〈1〉 (コージーブックス)

  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2012/05/01
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
「新しい人生のスタートよ!」PR業界を引退し、英国一美しいコッツウォルズの村で、憧れの隠居生活をはじめたアガサ・レーズン。でも、ちいさな村ではよそ者扱いされ、なかなかなじめない。そこで目をつけたのが、地元開催のキッシュ・コンテスト。優勝したら村の人気者になれるかしら? けれど問題がひとつ。「電子レンジの女王」の異名を持つほどアガサは料理が下手だった……。しかたなく“ちょっとだけ”ずるをして、大人気店のキッシュを買って応募することに。ところが優勝を逃したうえ、審査員が彼女のキッシュを食べて死んでしまった!? 警察からキッシュ作りを再現するよう求められたアガサに、人生最大のピンチが訪れる!


2022年8月に読んだ8作目(冊数でいうと10冊目)の本です。
アガサ・レーズンシリーズ、気になっていたのです。
というのも、ロンドンにいた時に本屋さんに行くと必ず見かけたからで、ペーパーバックがすごい冊数並んでいるのです。コージー・ミステリでは一番人気なのかも、と思えるくらい。
日本でもかなりシリーズの翻訳が進んでいますね。
気になっていたので手に取ってみることに。

読みだして、強引なPR業界を引退しロンドンからコッツウォルズのカースリー(Carsely)村へ越した主人公アガサ・レーズンのキャラクターがどうしても好きになれず、読むのをやめようかと思いましたが、途中でなんとか気にならなくなり、以降はコージーらしく、気楽にすいすい読めました。
すいすい読める一方、ミステリとしての謎は薄味で取り立てて言うほどのことはなし。

コージーにしては嫌な性格の主人公を設定したところがミソでしょうか。
訳者あとがきでは「なぜか憎めない」と書かれていますし、ネット上でも評判は悪くないし、本国イギリスでも人気があるようだし、ではあるのですが、アガサ、どうみても嫌な奴です。
押しが強い、強引な駆け引き、目的のためには手段を選ばない、ズルをしても良心は咎めない。
訳者は「本当は不器用で素直で、とてもいい人なのだ」とかばっていますが、その様子はこのシリーズ第1作目では少ししかうかがわれません。
シリーズにおける深化に期待というところでしょうか。
謎解きにもう少し歯ごたえがあるとよいのですが。


<蛇足1>
「その一週間に、アガサはこれまでのあわただしい生活スタイルが抜けず、せっせと観光名所に出かけた。ウォリック城、シェイクスピアの生誕地、ブレニム宮殿に行き」(17ページ)
アガサ・レーズンの移り住んだコッツウォルズは、それ自体が観光地ですが、まわりにも観光名所がいくつかありますね。
ブレニム宮殿というのは、Blenheim Palace で、通常ブレナム宮殿と日本では表記されることが多いです。発音もブレナムの方が近いと思います。世界遺産で、ウィンストン・チャーチルの生家としても知られていますね。

<蛇足2>
「三冊のミステリを買った。一冊はルース・レンデル、もう一冊はコリン・デクスター、もう一冊はコリン・ワトスン。」(116ページ)
アガサ・レーズン、なかなかの選択眼の持ち主ですね。

<蛇足3>
「<イブニング・スタンダード>を買い、レセスター・スクエアの先の映画館でディズニーの《ジャングル・ブック》を再上映していることを発見した。」(238ページ)
レセスター・スクエアですか......
ロンドンの中心部にある広場で、スペルは Leicester Square。このスペルを見れば、レスターと書きたくなる気持ちはわかりますが、発音はレスター。極めて有名な場所なので、日本語のガイドブックにもレスター・スクエアとして出てくるはずですが。
Worcester(ウスター)や Gloucester Road(グロスター・ロード)など同じような発音になる地名は多いです。
ちなみにこの作品が出版された頃は有料でしたが、今では<イブニング・スタンダード>紙は無料で、地下鉄の駅などに積んであります。


原題:Agatha Raisin and the Quiche of Death
作者:M. C. Beaton
刊行:1992年
訳者:羽田詩津子





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