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ホテル・カリフォルニアの殺人 [日本の作家 ま行]


ホテル・カリフォルニアの殺人 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

ホテル・カリフォルニアの殺人 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

  • 作者: 村上 暢
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2017/08/04
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
アメリカのモハーベ砂漠に聳え立つホテル・カリフォルニア。外界から閉ざされたその空間に迷い込んだトミーこと富井仁は、奇妙な殺人事件に巻き込まれる。連夜のパーティで歌を披露する歌姫の一人が、密室で死体となって発見されたのだ。音楽に関する知識で事件解決に乗り出すトミーだったが、やがて不可思議な状況下で新たな惨劇が……。果たして、繰り返される殺人事件の真相とは?


2022年5月に読んだ9作目の本です。
このミス大賞の超隠し玉。
超隠し玉とは何か、ということは帯に書かれています。
『このミス』大賞15周年記念として、これまで応募された未刊行作品の中から、受賞には及ばなかったものの、編集部が「今こそ世に出したい!」と選び抜いた作品を、大幅改稿した上、”超隠し玉”として刊行しました。
『このミス』大賞は大賞や優秀賞だけではなく、選外の作品から隠し玉として毎年2、3作程度出版しています。
その隠し玉にすら漏れてしまった作品から3作選んで出版されたのが、この超隠し玉。
そもそもの隠し玉はあまりの打率の悪さに嫌気がさしてきていまして、もう買うのを辞めようと思ったところに出てきた超隠し玉。
見送るところなのですが、まあ本質的にはこういうお祭りごとは嫌いじゃないので、3作も出版された中で1冊くらい買っておこうかと思って買いました。
「孤立した砂漠の館で密室殺人! 本賞初の本格ミステリー登場」
「『このミス』大賞史上類がない、直球ど真ん中の〈館〉もの本格ミステリー」
という惹句に注目して選びました。

結論からいうと、やめとけばよかったかな。
もともと期待せず読んだのですが、その低い期待をはるかに下回る出来栄え。

タイトルがホテル・カリフォルニアであることからイーグルスを意識したものであることがわかりますし、話の中身にも音楽の要素がちりばめられています。
謎にも、真夜中のバードソングという音楽が取り入れられています。
探偵役である主人公が謎を解くきっかけも音楽。
このあたりの配置はまずまずだとは思ったのですが......

驚くほど古めかしく、トリックに寄りかかった構成は潔いとも思えるけれど、肝心のトリックが非常につらい。
似たアイデアを利用した前例はあります。そういえばあの作品も新人賞の受賞作で音楽を扱っていましたね。
このトリックは実際に実行可能かどうかは置いておくとして(ミステリ的には十分、ありなトリックだと思います)、読者に対して説得力を持たせるのに気をつかう必要があるトリックだと思われ、前例作ではかなりの労力をその点に割いていた印象があるのですが、この「ホテル・カリフォルニアの殺人」 (宝島社文庫)はこの点に配慮が見られません。

むしろ、トリックを中心にするのではなく、ホテルを舞台にした歌姫たちの物語に焦点を当てていればよかったのかもしれません。
おそらく今後『このミス』大賞隠し玉を手に取ることはないでしょう。

<蛇足>
「東の端にある部屋が『赤の間』で、そこから西に向かって、橙、黄、緑、青、藍、紫となっていた。すなわち、虹の七色だ。」(44ページ)
虹が七色というのは日本の認識であって、世界共通認識ではありません。
アメリカ、モハーベ砂漠にあるモーテルで、経営も日本人ではないというのに虹が七色というのは解せません。






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