蒋介石の黄金 [日本の作家 た行]
<カバー裏あらすじ>
昭和二十二年、元日本軍特務機関員の滝安吾は久しぶりに上海の地を踏んだ。かつて、戦犯として捕えられる直前に中国から脱出する際、助力を得た恩人の孔子敦の依頼に応じたのだ。が、訪ねた孔の屋敷は襲撃をうけ廃墟と化し、妻子は死体で発見され、孔も瀕死の重傷を負っていた。孔は上海市長から、ある荷の運搬を命じられていたという。その仕事を引き継いだ滝は、大きな渦に呑み込まれてゆく。傑作冒険活劇。
2022年6月に読んだ5作目(7冊目)の本です。
伴野朗を読むのは、いったいいつ以来だろう?
最近は書店で本を見かけることがほぼなくなりましたが、北京原人の骨を扱った「五十万年の死角」 (講談社文庫)で江戸川乱歩賞を受賞している作家で、中国を題材にとった冒険ものの作家というイメージです。
この「蒋介石の黄金」 (徳間文庫)は、終戦から2年が経過した、国共対立が激しい中国を舞台に、タイトルにもうたわれている蒋介石が隠したといわれる黄金をめぐる駆け引きを描いています。
時代背景からというだけではなく、筋立てにどこか懐かしい雰囲気が漂います。こういう作品、結構読んだよね、という感じのなつかしさです。
冒険小説的な展開でも、力でねじ伏せるタイプと違い(力がものをいう場面もありますが)、こういう騙し騙されという攻防戦、大好きなんですよ。
馬賊になった元日本陸軍軍曹とか、エピソードも興味深く楽しめます。
多数の関係者が入り乱れる入り組んだプロットのお宝争奪戦なのに、振り返るとすっきり感じるのは、やはり作者の腕でしょうね。
もともと国際謀略小説というのは日本で書かれることが少なくて、冒険小説的な味付けのものも最近は減ってきているのが残念です。
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