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新世界より [日本の作家 か行]

新世界より(上) (講談社文庫)

新世界より(上) (講談社文庫)

  • 作者: 貴志 祐介
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2011/01/14
  • メディア: 文庫

新世界より(中) (講談社文庫)

新世界より(中) (講談社文庫)

  • 作者: 貴志 祐介
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2011/01/14
  • メディア: 文庫

新世界より(下) (講談社文庫)

新世界より(下) (講談社文庫)

  • 作者: 貴志 祐介
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2011/01/14
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
1000年後の日本。豊かな自然に抱かれた集落、神栖66町には純粋無垢な子どもたちの歓声が響く。周囲を注連縄で囲まれたこの町には、外から穢れが侵入することはない。「神の力」を得るに至った人類が手にした平和。念動力の技を磨く子どもたちは野心と希望に燃えていた…隠された先史文明の一端を知るまでは。<上巻>
町の外に出てはならない―禁を犯した子どもたちに倫理委員会の手が伸びる。記憶を操り、危険な兆候を見せた子どもを排除することで実現した見せかけの安定。外界で繁栄するグロテスクな生物の正体と、空恐ろしい伝説の真意が明らかにされるとき、「神の力」が孕む底なしの暗黒が暴れ狂いだそうとしていた。<中巻>
夏祭りの夜に起きた大殺戮。悲鳴と鳴咽に包まれた町を後にして、選ばれし者は目的の地へと急ぐ。それが何よりも残酷であろうとも、真実に近付くために。流血で塗り固められた大地の上でもなお、人類は生き抜かなければならない。構想30年、想像力の限りを尽くして描かれた五感と魂を揺さぶる記念碑的傑作。<下巻>


2022年6月に読んだ4作目の本です。
上中下3巻となる貴志祐介のSF大作で、第29回日本SF大賞受賞作。
「このミステリーがすごい! 2009年版」第5位。
子どもを主人公にし、SF初心者にもやさしい冒険SF──やさしいとはいっても、中身はハード=激しいというか厳しいものですが。

安定した周囲、社会に護られていた人物が、その周囲、社会の矛盾や問題に直面し、探りながら成長し壁を越えていく、というストーリーはこの種の物語の王道です。
まさに王道を行く、堂々とした作品。
その過程で、エンターテイメントの様々な要素がふんだんに盛り込まれています。

舞台は千年後の地球。
今現在の文明は先史文明と呼ばれています。歴史になっちゃっていますね。
「サイコキネシスが、科学の曙光によって照らし出されたのは、キリスト教暦二〇一一年」(上巻229ページ)とされ、その後能力者とその他の者の対立が激化、能力者は核兵器をしのぐ力を得、すべての政府が崩壊し、戦乱と飢餓、疫病の発生で人口は最盛期の二パーセント以下になり、その後の変遷を経て物語の時点の、安定した社会が実現している、と説明されます。

結界で護られた人間社会と、その結界の外の世界。美しく秩序ある平安な人間社会を守るために、荒廃した結界の外がある。
人間社会のありようが、機械文明の進んだ未来像ではなく、現時点から見て古めの、戦後の昭和的雰囲気を醸しているのが特徴かと思います。
クライマックス的シーンが、なにしろ夏祭り──盆踊りですから。
──ほかの ”町” の様子を知りたくなりました。特に、(今でいう)諸外国の。

「こういう本を書いて改めて難しいなと思ったのは、世界の謎を追求するのと、個人が生き延びるために戦うことをどうやってシンクロさせるのか」というSFマガジンインタビューでの作者の発言が大森望の解説で引用されていますが、そこに主人公たちの成長も絡むわけで、上中下の3巻といえども、決して飽きることはありません。

壮大に組み上げられている世界観ですので、中には想定できてしまうものもあります。
想定できたとしても、そのことは決してマイナスではなく、物語の先を急ぐ推進力となりました。

主人公たちが最後にたどりつく境地は、幸せの新天地なのかどうか。
「けっして信じたくはないが、新しい秩序とは、夥しい流血によって塗り固めなければ、誕生しないものなのかもしれない。」(下巻536ページ)
という感慨を、どう受け止められるでしょうか?
個人的には、もとの世界も、主人公たちがたどりつく世界も、嫌ですね......
意外と今と変わらないのかもしれませんが。
やはり、希望をもって次のフレーズを。
「想像力こそが、すべてを変える。」




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