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名もなき復讐者 ZEGEN [日本の作家 た行]


【ドラマ原作】名もなき復讐者 ZEGEN (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

【ドラマ原作】名もなき復讐者 ZEGEN (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

  • 作者: 登美丘 丈
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2019/08/06
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
八戸で水産加工場を営む佐藤幸造のもとに、突然「女衒」を自称する男が現れ、偽装結婚を持ちかけてきた。相手は、病気の夫の治療費をまかなうため、中国から出稼ぎにきている李雪蘭。彼女は女衒に斡旋された歌舞伎町の風俗マッサージ店で働いていた。幸造は迷いつつも、男の話を承諾するが……。一方、偽装結婚を取り持ち、女たちの世話をする裏で、女衒は妻を自殺に追い込んだ男たちへの復讐を続けていた──。


2022年9月に読んだ7作目の本です。
第17回『このミステリーがすごい!』大賞 U-NEXT・カンテレ賞受賞作。
『このミステリーがすごい!』大賞の後の部分はずいぶん聞きなれないものですが、福井健太の解説によると「募集時にはなかった枠のサプライズ受賞」とのことで、ドラマの原作を探すという趣旨だったようですね。次の第18回でも受賞作貴戸湊太「そして、ユリコは一人になった」 (宝島社文庫)が出ています。2年間だけの賞だったようですね。

冒頭、八戸の水産加工場を経営する幸造の視点で始まります。
女衒から偽装結婚を勧められる。
このまま幸造視点で物語が進むのかと思いきや、すっと女衒の視点に移ります。

物語としては、すごくありふれたチープな復讐劇。
いかにもテレビ向き、というところでしょうか。

ありふれた設定、ありふれた話かもしれませんが、この主人公格の女衒のキャラクターはおもしろいなと思いました。
「真面目で冒険をしない幸造とはおそらく正反対の生き方をしてきたであろう女衒に惹かれた。たった一度だけ、はじめて会った時に見た瞳には、溢れそうなほどの暗さを湛えていた。その暗さに惹かれた。いや、その暗さから、女衒の人間味を垣間見た気がした。この男のことを信用してもいいと思ったのだ。」(216ページ)
と幸造が述懐するシーンgなありますが、これはうなずけました

ただ、女衒の一人称を選択したのは疑問で、内面がるる語られるのはむしろ興ざめに感じました。
この点でもテレビ向きといえるかもしれません。



<蛇足1>
1年契約で百五十万円という報酬が高いのか安いのかわかりませんが、「相手は新宿のマッサージ店で働く中国人。国に家族を残して出稼ぎで日本に来ているんだ。貧しい家族のために必死で働いているよ。」(10ページ)というのには少々疑問を感じました。地域差はあるでしょうが、いまどきの中国は豊かですし、貧しい地方でも中国国内の都市へ向かうのではないかと思うのです。海外へ行くにしても日本ではないような気がします。

<蛇足2>
「幸造は、新宿どころか、この八戸を一歩も出たことがない。」(11ページ)
すっと読み流したのですが、考えてみればこの表現はおかしいですね。「新宿に行くどころか」としないと揃わないですね。


<蛇足3>
「いくら琥珀の中で保存されようと、遺伝子は時間の経過とともに劣化する。フィクションの世界では保存された恐竜の遺伝子からクローンを生み出す描写が往々にして見られるが、理論上は限りなく不可能に近い。」(216ページ)
なるほど、そうなんですね。





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