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幽霊を創出したのは誰か? [日本の作家 森博嗣]


幽霊を創出したのは誰か? Who Created the Ghost? (講談社タイガ)

幽霊を創出したのは誰か? Who Created the Ghost? (講談社タイガ)

  • 作者: 森 博嗣
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2020/06/19
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
触れ合うことも、声を聞くことも、姿を見ることすら出来ない男女の亡霊。許されぬ恋を悲観して心中した二人は、今なお互いを求めて、小高い丘の上にある古い城跡を彷徨っているという。
城跡で言い伝えの幽霊を思わせる男女と遭遇したグアトとロジの許を、幽霊になった男性の弟だという老人が訪ねてきた。彼は、兄・ロベルトが、生存している可能性を探っているというのだが。


2022年9月に読んだ6冊目の本です。
森博嗣のWWシリーズの、
「それでもデミアンは一人なのか?」 (講談社タイガ)(感想ページはこちら
「神はいつ問われるのか?」 (講談社タイガ)(感想ページはこちら
「キャサリンはどのように子供を産んだのか?」 (講談社タイガ)(感想ページはこちら
に続く第4作です。

タイトルに「創出」という固い語が使われているのでおやっと思いました。
いままでのシリーズタイトルと比べて格段に硬質な感じがするからです。
でも、考えてみると「創出」以外に言いにくいですね。
ここは個々の幽霊がどうして幽霊になったのか? という文脈というよりはむしろ、幽霊という概念がなぜ生み出されたのか?というニュアンスで使われていると思うからです。

端的にグアトが
「どうして、人間は、幽霊のような存在を発想したのかな。どんな需要があったのでしょう。」(59ページ)
という場面もあります。

「ある一人のウォーカロンだった経験を持つ知性が、次のウォーカロンに乗り移る」「これは、いわゆる幽霊や亡霊に近いイメージ、ではありませんか?」(58ページ)
というのも面白い疑問ですね。

これまでのところ、リアルとヴァーチャルをどう捉えるかというのがWWシリーズのテーマなのかな、と思えているのですが、リアルとヴァーチャルという対比で進んできた思索が、「幽霊」という存在をフィルターとしてあらたな角度で検証される、という感じでしょうか。

今の技術では、人間の感覚のほとんどを仮想体験させることを実現した。したがって、既にリアルでしか得られない価値はない。それなのに、まだリアルに自分が存在するという意識を捨てられない人が多いはず。(281ぺージ)

この「幽霊を創出したのは誰か?」 (講談社タイガ)で扱われる幽霊騒ぎも、このことを十分に意識したものです。

しかし、リアルかヴァーチャルかも大きい課題だと思うのですが、このシリーズの設定である、ほぼ人は死なない、という方がインパクトが大きいのではなかろうか、と思ったりもしました。
そして展開される議論(思索)も、死なないからこそ、という展開をとっているように思えます。


いつものように英語タイトルと章題も記録しておきます。
Who Created the Ghost?
第1章 誰が魂を連れてきたの? Who brought the soul?
第2章 誰が霊を組み立てたの? Who built the spirit?
第3章 誰が心を凍らせたの? Who froze the heart?
第4章 誰が人を造形したの? Who shaped the human?
今回引用されているのは、コーマック・マッカーシーの「ザ・ロード」 (ハヤカワepi文庫)です。

<蛇足>
「入ってみると、絨毯がブルーのプレィルームだった。」(163ページ)
プレィって、どう発音するのでしょう?



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