SSブログ

キャサリンはどのように子供を産んだのか? [日本の作家 森博嗣]


キャサリンはどのように子供を産んだのか? How Did Catherine Cooper Have a Child ? (講談社タイガ)

キャサリンはどのように子供を産んだのか? How Did Catherine Cooper Have a Child ? (講談社タイガ)

  • 作者: 森 博嗣
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2020/02/21
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
国家反逆罪の被疑者であるキャサリン・クーパ博士と彼女の元を訪れていた検事局の八人が、忽然と姿を消した。博士は先天的な疾患のため研究所に作られた無菌ドームから出ることができず、研究所は、人工知能による完璧なセキュリティ下に置かれていた。
消えた九人の謎を探るグアトは、博士は無菌ドーム内で出産し、閉じた世界に母子だけで暮らしていたという情報を得るのだが。


森博嗣の新しいシリーズ、WWシリーズの、
「それでもデミアンは一人なのか?」 (講談社タイガ)(感想ページはこちら
「神はいつ問われるのか?」 (講談社タイガ)(感想ページはこちら
に続く第3作です。

あらすじにも書かれている人間消失が事件で、作中136ページでヴォッシュ博士が指摘しているように真賀田博士の事件と似通っているところがポイントですね。

森博嗣の本を読むといつも思うのは、「すべてがFになる」 (講談社文庫)と比べると、遥けき地点まで来たなぁという感慨です。
この人間消失の真相も、真賀田博士の事件とは異次元の解決を見せます。

このレベルになるとさわりを出してもネタバレにはならないでしょうから、自分の備忘として引用しておきます。
「生命ではなく、存在なのだ。
 存在こそが、最も重要な、この世界を形成するユニットであり、基本だ。
 リアルとヴァーチャルの両立は、あらゆる存在を脅かす。物体とは、単にリアルの存在の総称でしかない。存在は既に、原子からなる物体よりも、その焦点を引く視線でしか捉えることができないものになっているのだ。」(249ページ)

しかし、こんな地点までたどり着いてしまうと、このあと物語はどこに向かうのでしょうね?
森博嗣の中では、すっかり地図が出来上がっているのでしょうけれど。
それはリアルとヴァーチャルの全き融合なのかも、ですね。


Wシリーズのように英語タイトルと章題も記録しておきます。
How Did Catherine Cooper Have a Child ?
第1章 どのように彼女は姿を消したか? How did she disappear?
第2章 どのように彼女は届けられたか? How did she arrive?
第3章 どのように彼女は破壊したか? How did she destroy?
第4章 どのように彼女は生かされたか? How was she alive?
今回引用されているのは、グレッグ・イーガンの「ディアスポラ」 (ハヤカワ文庫 SF)です。

<蛇足1>
「いきなり、だからねって」テーブルの椅子に座っていたロジは吹き出した。(13ページ)
あれ? ロジってこういう反応をする人でしたか?
グアドとの関係性がどんどん変わってきている証左かも。

<蛇足2>
「幸い、僕には研究という大賞があった。それに打ち込んできたから、ほかのさまざまな不満に出合わなかった。その点では、今は少しだけ不安を感じている。研究から離れたこともあるし、大切な人ができたこともある。失うものを得てしまった、ともいえるだろう。」(33ページ)
さらっとグアドがすごいことを言っています!

<蛇足3>
「しばらく、マシュマロのように柔らかい沈黙が続いた。」(48ページ)
マシュマロのような柔らかい沈黙、ですか。
張りつめたような緊張感漂う沈黙とは正反対の沈黙なのでしょうね。

<蛇足4>
「ああ、ちょっと、考えごとをしていた」僕は彼女に言った。
「そうでしょうね、きっと」ロジは猫のように微笑んだ。(250ページ)
猫のように微笑む......
ロジが!?


nice!(13)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 13

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。