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ぼくを忘れたスパイ [海外の作家 た行]


ぼくを忘れたスパイ〈上〉 (新潮文庫)ぼくを忘れたスパイ〈下〉 (新潮文庫)ぼくを忘れたスパイ〈下〉 (新潮文庫)
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2010/09/29
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
父がスパイだった? それも辣腕? 競馬狂いで借金まみれのチャーリーは、金目当てで認知症の父を引き取ってから次々と奇怪な出来事に見舞われる。尾行、誘拐未遂、自宅爆破に謎の殺し屋の出現。あげく殺人犯に仕立てられ逃げ回る羽目に……。父は普通の営業マンではなかった? 疑念は募る。普段のアルツハイマーの気配も見せず、鮮やかに危機を切り抜ける父の姿を見るたびに――。<上巻>
何が真実で、何が真実でないのか? チャーリーは混乱するばかりだった。父はCIAに所属していて、なんらかの秘密作戦に従事していた。二人を追うのはCIAなのか? 何を聞いても返事が意味不明な父の病。時折訪れる明晰な瞬間にはスーパーヒーローに化けるが、普段は過去も現在もわからない彼が重大な国家機密を握っていたとしたら。独創的な主人公像が絶賛を浴びた痛快スリラー。<下巻>


9月に読んだ13作目の本です。
キース・トムスンの「ぼくを忘れたスパイ」〈上〉 〈下〉 (新潮文庫)

颯爽と敵の目をかいくぐり、危機を切り抜け、情報を手に入れるスパイ。
そんな勝手なイメージを持っているスパイですが、痴呆症になったら大変でしょうねぇ。国家機密すら知っていたりするのですから。
主人公チャーリーは、そんな父を持つダメ男。
理不尽にも狙われて父親と一緒に逃げ惑う羽目に。

と言ってしまえばこれだけの話ですが、おもしろいですねぇ。
いつもはボケていける父親が、ふっと正気を取り戻しスーパーヒーローの活躍を見せる、という痛快さ。
相次ぐ危機を乗り越えていきます。
痴呆症の父親を守る息子、という構図が、痴呆症の父親に守られる息子、に転じるおかしさもあります。

痴呆症となると、いつ正気を取り戻すかという点どうしてもご都合主義というか、都合のいいときに正気を取り戻すようになってしまいがちで、この作品もその弊からは逃れられていないのですが、ありふれていても「息子が危ない」ときに正気を取り戻す、というのはなかなか手堅いですね。

一方で
「馬体の血液量は一般的に体重の十八分の一だということはわかるぞ」(67ページ)
なんて、スパイにどう役に立つのかわからない知識が披露されたりもします。

というわけで、読み終わって、あー面白かった、といっておしまいにすればよいのですが、振り返ってみると、消化不良というか、この題材ならもっと面白くなったんじゃないかな、と思えてなりませんでした。
息子チャーリーに視点を置いていることからくるユーモアも、一転ハバナで繰り広げられるスパイ戦も、逃避行の間繰り広げられる戦闘シーンも、どれもこう今一歩感が漂うんですよね。

まさにないものねだりなのですが、ちょっと残念です。



原題:Once A Spy
作者:Keith Thomson
刊行:2010年
訳者:熊谷千寿


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