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ニャン氏の童心 [日本の作家 ま行]


ニャン氏の童心 (創元推理文庫)

ニャン氏の童心 (創元推理文庫)

  • 作者: 松尾 由美
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2018/11/21
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
仕事に悩む女性編集者の田宮宴はある日、袋小路で人が忽然と消えるという事件に遭遇。謎の実業家にして童話作家のミーミ・ニャン吉先生の事務所で、秘書の丸山にその不思議な出来事について話すと、そばにいた猫が何かを伝えようとするかのようにニャーニャーと鳴いている……。ニャン吉先生ことニャン氏の正体とは?! 愛すべき猫探偵・ニャン氏の事件簿パート2、出来だニャ。


「ニャン氏の事件簿」 (創元推理文庫)(感想ページはこちら)に続くシリーズ第2弾です。

「袋小路の猫探偵」
「偽りのアプローチ」
「幸運の星の下に」
「金栗庵の悲劇」
「猫探偵と土手の桜」
「ニャン氏のクリスマス」
の6編収録の短編集で、題して「ニャン氏の童心」 (創元推理文庫)
「〇〇の事件簿」だと先行作が多くてどれだと特定できませんが、「〇〇の童心」とくれば、これは絶対にブラウン神父。「ブラウン神父の童心」 (創元推理文庫)に違いない!
それが証拠に? 冒頭の「袋小路の猫探偵」なんて、ちょっとチェスタトンっぽい謎解きです。
もっとも、ニャン氏はやり手の実業家でもあり、innocent な感じはあまりしませんけれども(笑)。

視点人物が「ニャン氏の事件簿」のときの佐多くんから、童話作家「ミーミ・ニャン吉」先生の担当編集者である田宮宴に代わりました。また佐多くんとは会ってみたかったのにな。

他の作品にも触れておきます。
「偽りのアプローチ」は、チェスタトンというよりは、〇〇〇〇・〇〇〇〇ですね。
東京準備室開設をめぐるエピソードやタイトルの「偽りのアプローチ」の意味は、少々やりすぎ感ありますが、そこはチェスタトンらしいかな?
前作を実家に送ってしまって今手元にないので確認できないのですが、ここに出てくる来栖というバイトのメイド、再登場ですよね?

「幸運の星の下に」は、古書査定中の出来事で、この前に読んだ「キネマ探偵カレイドミステリー ~再演奇縁のアンコール~ 」(メディアワークス文庫)にDVDの査定の話があって、思わぬ暗合を楽しみました。
謎解きそのものは他愛のないものですが、ネコの世界にもこういうことがあるのでしょうか?

前話のラストで、ニャン氏の正体が視点人物である田宮宴に明かされましたので、「金栗庵の悲劇」からニャン氏は、堂々たる名探偵として登場します。この切り替わり具合が結構心地よいですね。
金栗庵はきんぐりあんと読むのですが、まさかねぇ(笑)。
この作品に岡崎という人物が出てきます。ニャン氏のことを知っています。
すっかり忘れていましたが、佐多くんの先輩だったような気がします。上のメイドさんと併せて確認しなければ。

「猫探偵と土手の桜」には参りました。
傑作というのとは違うのですが、個人的に完璧にツボです。
ある意味、日常の謎の頂点ではなかろうかと勝手に思ってしまったくらい、大好き。
仕掛ける(?)のが執事というのがいいですし、これを解くのがネコというのも、とても気が利いていると思いました。
怒る人もいるでしょうねぇ、これ。でも、好きです。偏愛です。

「ニャン氏のクリスマス」はうって変わってものものしい雰囲気の作品となっています。
ニャン氏にお届け物をしないといけなくなった田宮宴という設定ですが、ニャン氏の居場所を教えることができない、という冒頭から不穏な香り。
もっとも、そのために、起こる事件の真相が非常にあからさまである点はミステリとしては弱いですが、シリーズの転回点というか、本書の大団円という感じがステキでした。

シリーズは、次の「ニャン氏の憂鬱」 (創元推理文庫)に続いているので、とても楽しみです。


<蛇足1>
「日本では『ハチワレ』、英語圏では『タキシードキャット』と呼ばれる、顔の上半分と背中および手足が 黒、残りは真白な猫だ」(13ページ)
恥ずかしながら「ハチワレ」という語を知りませんでした。

<蛇足2>
「猫好きがみんないい人だなんて言うつもりはありません」島村はつづけて「しかし、猫が嫌いな人というのは、まずたいてい、ろくなものじゃないのです」(100ページ)
いわゆる「動物好きに悪い人はいない」という言い回しはバカバカしいものですが、ここまで言い切られると天晴れですね。思わず笑ってしまいました。


<2024.1.10追記>
改行されず、とても読みにくい状態になっていたのを修正しました。
中身はいじっていません


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