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キネマ探偵カレイドミステリー ~再演奇縁のアンコール~ [日本の作家 さ行]


キネマ探偵カレイドミステリー ~再演奇縁のアンコール~ (メディアワークス文庫)

キネマ探偵カレイドミステリー ~再演奇縁のアンコール~ (メディアワークス文庫)

  • 作者: 斜線堂 有紀
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2017/08/25
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
日常は映画より奇なり
 火事で家が燃え、嗄井戸(かれいど)が住む銀塩荘の一階に引っ越した奈緒崎(なおさき)は、嗄井戸の部屋に入り浸る日々を過ごしていた。
 夏休みが終わり、大学に赴いた奈緒崎は同級生にかけられた『スタンド・バイ・ミー』窃盗容疑を晴らすため、嗄井戸のもとへ向かうが――。
 実力派女優の家に残されたピンク色の足跡、中古ビデオ屋の査定リストに潜む謎……圧倒的な映画知識で不可解な事件を解決してみせる引きこもりの秀才・嗄井戸。その謎解きの中には彼自身の過去が隠されていて――?!


2023年2月に読んだ8冊目の本です。
「キネマ探偵カレイドミステリー」 (メディアワークス文庫)(感想ページはこちら)に続く、斜線堂有紀の第2作。
「キネマ探偵カレイドミステリー ~再演奇縁のアンコール~ 」(メディアワークス文庫)

第一話「再演奇縁のオーバーラップ」(『スタンド・バイ・ミー』)
第二話「自縄自縛のパステルステップ」(『アーティスト』)
第三話「正誤判定のトレジャーハント」(『バグダッド・カフェ』)
の三話からなる連作短編集、『バグダッド・カフェ』観てないなぁ。
なんですけど、このエンディングはずるいよ、斜線堂さん。
嗄井戸の過去につながりそうな、とても怖いシーンで終わるだなんて!

巻頭に、探偵役を務める嗄井戸高久と語り手である俺・奈緒崎との牧歌的とも言えるやりとりが掲げられているので、安心していたら、なんという終わり方。
続きが気になって仕方ない。

さておき。各話みていくと、
「再演奇縁のオーバーラップ」は、奈緒崎の同級生が『スタンド・バイ・ミー』を盗んだ疑いをかけられるという物語ですが、盗みそのものから話の焦点がずれていくところがおもしろかったですね。しかし、この同級生は運のいいやつだ。
「自縄自縛のパステルステップ」は、白い敷石につけられたピンク色のペンキの足跡の謎なのですが、正直無理があると思います。実物を見たわけではないので、そういうものだと言われたらそれまでなのかもしれませんが、登場人物は絶対気づくと思いますし、心理的にもありえないと思うのですが(登場人物が状況に慣れていなかったというのがギリギリ可能な解釈でしょうか)。
同種のアイデアを使った作品は、ミステリではいくつか先例がありますが、いずれも鮮やかというよりはミスが目立つので、使いにくいアイデアなのかもしれませんね。
とはいえ、舞台女優である荒園杏子が印象的だったのと、束(たばね)と奈緒崎の話というのがなかなか味わい深かったので、楽しみましたが。
「正誤判定のトレジャーハント」は、遺産が一千万単位で少なかったので、死後に処分されたDVD、VHSコレクションの中にお宝が隠されていたのではないか、という謎で、目のつけ処が面白いなと思いました。でも、簡単にできるのかな、これ?
そして最後にねぇ.....こんな爆弾シーンで締めくくるなんて、斜線堂さん、いじわるです。

この「キネマ探偵カレイドミステリー ~再演奇縁のアンコール~ 」(メディアワークス文庫)は、嗄井戸の影が薄いわけでは決してありませんが、語り手である奈緒崎のキャラクターがどんどん浮き彫りになっていく感じがしてとても楽しかったです。
さて、「キネマ探偵カレイドミステリー ~輪転不変のフォールアウト~」 (メディアワークス文庫)をなるべく早く読まなきゃ。


<蛇足1>
「フィルム・アーキビストです。いわば、映画の保存師ですね。映画を後世に残す為、フィルムの劣化を防ぎ、全ての映画を守る仕事です。」(21ページ)
そういう職業があるのですね。
非常に重要な仕事だと思います。

<蛇足2>
「トーキーってなんだ?」
「そのまま、無声映画に対して音声のついた映画のことだよ。麗しくも喋るもの。Moving Picture が movie になるんだから Talking picture が Talkie になるのも自明だろう?」(153ページ)
なるほど。トーキーという語は知っていましたが、語源的にムービーと相似形ということは意識していませんでした。

<蛇足3>
「終幕だ。……愁作(ゆうさく)だったな」(184ページ)
嗄井戸の決めゼリフで、一話目が奇作で、三話目が「感涙必至の秀作」だったのですが、この第二話の「愁作」がわかりませんでした。まあ、「愁い」という字で雰囲気はわかるんですけど、愁の字を「ゆう」と読んだら伝わらない気がします。
小説ならではの表現ということでしょうか?





タグ:斜線堂有紀
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