さよなら、シリアルキラー [海外の作家 ら行]
<カバー裏あらすじ>
ジャズは高校三年生。町ではちょっとした有名人だ。ある日、指を切りとられた女性の死体が発見され、ジャズは連続殺人だと保安官に訴える。なぜジャズには確信があったのか──彼が連続殺人犯の息子で、父から殺人鬼としての英才教育を受けてきたからだ。親友を大切にし恋人を愛するジャズは、内なる怪物に苦悩しつつも、自ら犯人を捕えようとする。全米で評判の青春ミステリ。
読了本落穂ひろい。
バリー・ライガの「さよなら、シリアルキラー」 (創元推理文庫)
2017年10月に読んだようです。
冒頭のシーンは、警察が現場検証を行っているのを背の高い草に隠れて伺っている主人公ジャズ。
非常に怪しい幕開けで、これだけではジャズがいわゆる正義サイドなのか悪サイドなのかわからない。
次第に、ジャズは正義サイドで、あらすじにもあるように不幸なことに父親ビリーがシリアル・キラーで、連続殺人鬼としての英才教育(!) を受けてきた17歳の青年、ということがわかります。
連増殺人鬼のことがわかるから、捜査を手伝わせてくれ、というジャズ。
もうこれだけで面白そうではないですか!
当然のことながら、ジャズを取り巻く環境は容易ではありません。
シリアル・キラーが父親。その手にかかった被害者の家族がやってきたりする日常も、事件の捜査とならんで、しっかり描かれていきます。
祖母と暮らす毎日もジャズにとっては厳しい。今はいない母親に関するあやふやな記憶も悩み。
ジャズを支えるのは、ジャズにとってかけがえのない友人、ビリーの側に堕ちてしまいそうになるのをつなぎとめ、正気でいさせてくれるハウイーと、彼女であるコニー。
70ページになると、ジャズが伺っていた事件の犯人である”ものまね師”が登場。逆にジャズを伺っていることがわかります。
このあたりはシリアル・キラーものサスペンスの王道のパターンではありますが、主たる視点が連続殺人鬼の息子ということで自らに対する疑問を抱える青年の思春期の苦悩と照射しあってとても新鮮です。
「おまえは人殺しだ。まだ誰も殺していないだけで」(351ページ)
というセリフ、強烈でしょう?
青春小説のテイストが好きなので、とても楽しく読みました。
このあとのシリーズも購入してあるのですが、未読です。
(超)久しぶりに手に取ってみたいと思います。
原題:I Hunt Killers
作者:Barry Lyga
刊行:2012年
訳者:満園真木
タグ:バリー・ライガ
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