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アンデッドガール・マーダーファルス 2 [日本の作家 青崎有吾]


アンデッドガール・マーダーファルス 2 (講談社タイガ)

アンデッドガール・マーダーファルス 2 (講談社タイガ)

  • 作者: 青崎 有吾
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/10/19
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
 1899年、ロンドンは大ニュースに沸いていた。怪盗アルセーヌ・ルパンが、フォッグ邸のダイヤを狙うという予告状を出したのだ。
 警備を依頼されたのは怪物専門の探偵“鳥篭使い”一行と、世界一の探偵シャーロック・ホームズ! さらにはロイズ保険機構のエージェントに、鴉夜(あや)たちが追う“教授”一派も動きだし……? 探偵・怪盗・怪物だらけの宝石争奪戦を制し、最後に笑うのは!?


2023年6月に読んだ最初の本の感想です。
「アンデッドガール・マーダーファルス 1 」(講談社タイガ)(感想ページはこちら)に続くシリーズ第2作である、青崎有吾「アンデッドガール・マーダーファルス 2」 (講談社タイガ)

「アンデッドガール・マーダーファルス 1 」感想で、「アンデッドガール・マーダーファルス 3」 (講談社タイガ)で完結なのかな?、と書いたのですが、2023年7月に映像化されて、第4作「アンデッドガール・マーダーファルス 4」 (講談社タイガ)も出ましたね。

目次が
第三章 怪盗と探偵
第四章 夜宴
となっていまして、前巻からの続きであることがクリアに宣言されています。

今回はひときわ派手ですよ。
引用したあらすじに「探偵・怪盗・怪物だらけの宝石争奪戦」と書いてありますが、目次の次のページに登場人物表が掲げてあり、そこにかかれている名前を見るだけで、わくわくがとまりません。

アルセーヌ・ルパン、ファントム、シャーロック・ホームズ、ジョン・H・ワトスン、レストレード、ガニマール......
ミステリ好きだとこちらに目を奪われますが、そもそも盗みの対象となる宝石<最後から二番目の夜>の持ち主で、主要な舞台となる邸宅の持ち主であるフィリアス・フォッグは、ジュール・ベルヌ「八十日間世界一周」 (創元SF文庫) の主人公なんですよね。
この登場人物表に含まれていない豪華キャストもいます。

宝石<最後から二番目の夜>盗難の予告状、鉄壁の守りを固めたはずの壮麗な大邸宅(フォッグ邸。巻頭の見取り図からすると屋敷というレベルを超えている気がしますが......)。
<最後から二番目の夜>は人狼の居場所をつきとめる手がかりとなるという。
なんだかわくわくしますね。
ここに、数々の豪華絢爛な登場人物たちが所狭しと大活躍。

現在の視点でみると、古めかしい筋書きではあるのですが、時は1899年。
むしろこういう筋書きこそふさわしい、と思ってしまいます。

青崎有吾らしい、論理に基づく謎解き、という点での興味は薄いのですが、それを補って余りある、華麗な登場人物たちの丁々発止の駆け引き。
知力、腕力(!) の限りを尽くして、争奪戦が繰り広げられます。
攻守それぞれが、何段構えにもなった策を弄しているため、思惑が交錯して展開が読みにくい。

こういう先人のキャラクターを盛りだくさんに導入すると、あちらを立てればこちらが立たずで、中途半端な仕上がりになってしまう例もあります。さてさて、本作の首尾は直接読んで確かめていただかないといけないのですが、怪物たちが登場することが良い効果を発揮しているように思えました。

強大な敵も明らかになりましたし、物語も大きく転回します。
「アンデッドガール・マーダーファルス 3」 がとても楽しみになってきました。


<蛇足1>
「いやこの近くにタッソー館ていう蝋人形館があっては。ニッチな人気が……」(102ページ)
ホームズが追ってくるかも、という状況でマダム・タッソーで観光しようというあたり、さすがはルパンなのですが、マダム・タッソーがニッチ!? 当時はあまり人気がなかったのでしょうか?
長蛇の列の観光名所というイメージなのですが。

<蛇足2>
「土地勘のない市内を歩き回るうち完全に迷ってしまった。」(105ページ)
土地勘ではなく、土地鑑が正しい、とどこかで読んだことがありますが(確か、佐野洋の「推理日記」だったかと)、"土地勘" も雰囲気がでて良い表記ですね。

<蛇足3>
「深まりつつある紺色の空に、ビッグ・ベンやヴィクトリア・タワー、トラファルガー・スクエアのモニュメントの影が浮かび上がっている。」(144ページ)
ヴィクトリア・タワー?? 国会議事堂(ウェストミンスター宮殿)の塔のことを指すのですね。

<蛇足4>
綺羅星のような登場人物たちのうちの一人に、アレイスター・クロウリーがいるのですが、このジャンルは疎くて、調べてしまいました。

<蛇足5>
「ハナイカダ」
 やがて彼女は妙な言葉を発した。日本語だろうか、津軽と静句が目だけで反応する。(127ページ)
のちに196ページで絵解きがなされますが、このシリーズ、こういうところも面白いですよね。
その絵解きの少し前、194ページには「釜泥」が出てきます。

<蛇足6>
虹について
「……光のスペクトル。虹の七色か」
「そう、赤、オレンジ、黄色、緑、水色、青、そして紫。」(316ページ)
と、ワトスンとシャーロック・ホームズがやり取りをするのですが、ここは少々疑問です。
以前も別の作品の感想で書いたのですが、虹を七色として認識しているのは日本でして、アメリカやイギリスでは七色としてはいません。
鴉夜たちやり取りにしておけばよかったのではないでしょうか?
ちなみに、日本語では一般的なのは、赤橙黄緑青藍紫、かと思います。



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