SSブログ

秘密 season 0 7 [コミック 清水玲子]


秘密 season 0 7 (花とゆめCOMICSスペシャル)

秘密 season 0 7 (花とゆめCOMICSスペシャル)

  • 作者: 清水玲子
  • 出版社/メーカー: 白泉社
  • 発売日: 2018/07/05
  • メディア: コミック

<カバー裏あらすじ>
2061年、世の中は75年ぶりに接近するハレー彗星の話題で持ちきりだった。そんな中、「偉人」たちの「脳」ばかりが奪われる奇妙な事件が発生。一体誰が何の目的で行ったのか。この事件は「第九」MRI捜査に関わりは全くないのだろうか──。薪と青木が捜査を進める中、明らかになった真相とは…。


ずいぶん久しぶりになりましたが、清水玲子の秘密シリーズを。
今回のお話は「冬蝉」というタイトル。
蝉のエピソードとハレー彗星のイメージが全編を覆っています。

「もし私が1週間で死ぬ蝉だったなら 他の生き物が80年も100年も生きる事など知りたくもない」
「神がもしたわむれに蝉に真実をしらせたなら 何故 そんな残酷なことをなさるのか
 何故 神は人間に身に余る英知をさずけたのだろう
 なぜ我々はいけもしない何億光年も彼方の宇宙にこんなに憧れるのか
『蝉』なのに」(47ページ~)

焦がれるあまりに踏み出す研究者たち vs 薪、という構図で、研究者たちの方に薪の恩師を配したところがミソですね。
「第九」の意義にも関わる非常にデリケートな問題を扱っており、脳を見ることに対する立場が一見すると逆転しているように思えるところがポイントなのでしょう。
またこの点については、このシリーズの出発点である「新装版 秘密 THE TOP SECRET 1」 (花とゆめCOMICS)(感想ページはこちら)に収録されている米大統領の話「秘密 -トップ・シークレット-1999」のテーマでもあったということも注目すべきポイントだと思います。

これと同時に、天体観測に触発されて、薪がありし日の鈴木とのすれ違いを回想するシーンが挟み込まれます。
こちらで、アズマヤマドリの習性をめぐって青木が演じる役割が、登場人物たちの立ち位置を考えると味わい深い。
シリーズ的には重要なエピソードだと思うのですが、個人的にはあまり感心しませんでした。というのも、薪の心情があまりにもダイレクトに描かれすぎていると感じたからです。
心の中のものとはいえ、セリフとして表出してしまうのは、物語のトーンとして違和感があります。
エピソードそのものはとてもいいと思ったのですが。

ところで、スタイリッシュな造本になっていて素敵なのですが、配色にはもっと気をつかってほしいです。
この「秘密 season 0 7」 (花とゆめCOMICSスペシャル)は深い緑が基調色になっていますが、裏のあらすじや袖の紹介文などのように、そこに黒い文字を乗せるととても読みにくい。
ユニバーサルデザインうんぬんとかいう大きな話の遥か手前で、製品として読みにくさという点は考えてもらいたいな、と思います。


<蛇足1>
「ただ私達に譲れない信念と宇宙への思いがあるように彼にも…検察側にもあるのだと思います」(100ページ)
薪のことを指して言っているセリフです。
薪は警察であり検察ではないので、ここは話者の勘違いということになります。
殊にこの物語の場合、薪と検察はまったく同体とはいえず、意見を異にし対立しているのですから、なおさらおかしく感じてしまいます。
一般的には混同されているのかもしれないな、と思いつつ、ちょっと残念に思いました。

<蛇足2>
112ページに
「せっかく京都にいるんだ尚護院の八ツ橋食べたいな…」
という薪のセリフがあり、名菓として三角形のお菓子の絵が描いてありますが、それ生八ツ橋で八ツ橋じゃないですよ(笑)。
八ツ橋は、その名のとおり、八ツ橋をかたどったものですから、細長い瓦型というのでしょうか、そういう形の硬いお菓子(分類するとおせんべいでしょうか)です。
柔らかくて中に餡などが入っているのは生八ツ橋で、別のお菓子です......
まあ、こんなこと言っても世間的には生八ツ橋こそが八ツ橋かもしれませんが。
でも、ちゃんと後段144ページでは生八ツ橋と書かれていますから、薪がいい加減に記憶していたということですね。こらっ、薪!




タグ:清水玲子
nice!(13)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 13

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。