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Another エピソード S [日本の作家 あ行]


Another エピソード S

Another エピソード S

  • 作者: 綾辻 行人
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2014/12/20
  • メディア: 単行本

<帯(裏表紙側)あらすじ>
「見えるの? きみには、僕が」
「見える……けど」
答えて、彼女は右の目をすっと細くする。
左の目には蒼い義眼の、冷ややかな光が。(本文より)
1998年夏休み――両親とともに海辺の別荘へやってきた見崎鳴、15歳。そこで出会ったのは、かつて鳴と同じ夜見山北中学の三年三組で不可思議な〈現象〉を経験した青年・賢木晃也の幽霊だった。謎めいた古い屋敷を舞台に――死の前後の記憶を失い、消えたみずからの死体を探しつづけている幽霊と鳴の、奇妙な秘密の冒険が始まるのだが……。


読了本落穂拾いです。
手元の記録によると2016年9月に読んでいます。
単行本で読みました。
上で Amazon から引用している書影とカバーのデザインが違います。
遠田志帆さんの装画になっていまして、こちらの方が好みですね。

「Another」(上)(下)(角川文庫)(感想ページはこちら)の続編というのか、スピンオフというのか。帯には「W映像化された未曽有の学園ホラー 満を持して続編登場!!」となるので、続編でいいのでしょうね。

前作の感想で、「ところでこの作品、シリーズ化が可能だと思うのですが、そのおつもりはないのでしょうか??」と書いていましたので、まさに待望の続巻。
本格ミステリも好きですが、綾辻行人のホラーも好きなんですよ。

同じ地続きの世界で、登場人物も共通して鳴が登場しますが、「Another」(上)(下)とはかなり手触りが違います。

物語の額縁として、鳴と榊原恒一が登場し、全編とのつなぎ役を果たしますが、主人公はこの二人というよりは、賢木晃也となりましょうか。
この賢木晃也という人物、死んでいまして幽霊(!)
幽霊と鳴の出会いと幽霊の回想がメインのストーリーです。

既に死んでいるから、というわけではないでしょうが、物語全体が静かな佇まい。
独特の雰囲気に溢れていますが、不穏な雰囲気(何かが起こるぞ、起こるぞ)という感じではなく、静謐。

「驚愕の結末!!」と帯に書いてあり、確かに綾辻行人らしく仕掛けてはあるのですが、そういう仕掛けが暴かれてもなお、静謐な印象が変わらない点がポイントだなと思いました。
こういうタイプの小説の場合、「驚愕の結末」を迎えると作品の印象が変わってしまうことが多いように思います。でも、この「Another エピソードS」 (角川文庫)の場合は、どんでん返しをしても印象が変わらない。
実はこれってすごいことなんじゃないかな、と思えます。

その仕掛けは、ちょっと無理が多いかな、という印象を受けました。
「アライ」さんのくだりは苦笑してやり過ごすとしても、メインの仕掛けは無理なんじゃないかな、と。
ぼかして書いておくと、違いを埋めることはできたのだろうか、と不思議に思うのです。それをにおわせるようなところもさほど見受けられませんでしたし(もっとも謎解きミステリではないので、手がかりをばらまいておいて回収、という手続きを踏む必要はないのですが)。
究極的には本人の意識の問題だから、という弁護も成立するとは思うのですが、ちょっと不思議です。

とはいえ、しっかりと作品世界に浸ることができたので、満足です。

当然文庫化されていまして、書影はこちら↓です。

Another エピソードS (角川文庫)

Another エピソードS (角川文庫)

  • 作者: 綾辻 行人
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2016/06/18
  • メディア: 文庫


すでに続刊「Another 2001」(KADOKAWA)も出ていて楽しみです。


タグ:綾辻行人
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