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火喰鳥を、喰う [日本の作家 は行]


火喰鳥を、喰う

火喰鳥を、喰う

  • 作者: 原 浩
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2020/12/11
  • メディア: 単行本

<帯裏側あらすじ>
信州で暮らす久喜雄司に起きた二つの異変。ひとつは久喜家代々の墓石が何者かによって傷つけられたこと。もうひとつは、70年以上前の死者の日記が届けられたこと。日記は太平洋戦争末期に戦死した雄司の大伯父の、生への執着が書き記されていた。そして日記が届いた日を境に、久喜家の周辺では怪異が起こり始める。日記を発見した新聞記者の狂乱、雄司の祖父・保の失踪。そして日記に突如書き足された、「ヒクイドリ ヲクウ ビミ ナリ」という一文。雄司は妻の夕里子とともに超常現象に詳しい北斗総一郎に頼るが……。


2022年7月に読んだ7冊目の本です。
第40回横溝正史ミステリ&ホラー大賞受賞作。
この賞、名前が転々と変わっていますが、ナンバリングは刷新されておらず、横溝正史賞からの連番なのですね。
単行本で読みました。
もう文庫本になっています。書影はこちら。

火喰鳥を、喰う (角川ホラー文庫)

火喰鳥を、喰う (角川ホラー文庫)

  • 作者: 原 浩
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2022/11/22
  • メディア: 文庫

単行本と同じ絵を使っていますね。

さて、横溝正史ミステリ&ホラー大賞受賞作。
ミステリかホラーか、というとミステリ読者としては残念ながらホラー。
何が起こったのか知りたくて、真相を追い求めていく姿はミステリ的。
戦時中の火喰鳥のエピソードが浮かび上がってきて、ホラー色が出てくるのですが、これが怖くない。
エンディングへ向けてホラー色が高まっていきますが、どうも理が勝っている印象。

ですが、そこが面白い。
謎を追求していく様子にすっかり引き込まれてしまいました。
賞にふさわしい作品だと思います。

ただ、個人的にこのエンディングが好きじゃないんですよね。
あくまで好き嫌い、好みの問題なので、作品の価値には毫も影響を与えませんが。そこがちょっと残念でした。


<蛇足>
「我々の戦力を鑑みるに、敵陣への玉砕攻撃の挙に及ぶは愚の骨頂と言うべき他なく」(42ページ)
戦時中の日記の記載です。
当時「戦力鑑みる」という言い方をしたとは思えないのですが。
そもそも「所々片仮名混じりの達筆」(30ページ)とされていますが、当時の感覚だとほぼ片仮名ではないかと思います。(現代の)記者が介在しているのだから、今風に読みやすくした、とでもしておけばよかったのにと思います。
それであれば、「鑑みる」という不自然な用法は、記者が勝手に直したからだと解釈できてよかったのに。
もはや「を鑑みる」も正しいという人の方が多いようですので、無駄な指摘ではありますが。まさに、蛇足。
これを最後に「を鑑みる」を指摘するのはやめようと思っています。




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