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鼻 [日本の作家 さ行]


鼻 (角川ホラー文庫)

鼻 (角川ホラー文庫)

  • 作者: 曽根 圭介
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2007/11
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
人間たちは、テングとブタに二分されている。鼻を持つテングはブタに迫害され、殺され続けている。外科医の「私」は、テングたちを救うべく、違法とされるブタへの転換手術を決意する。一方、自己臭症に悩む刑事の「俺」は、二人の少女の行方不明事件を捜査している。そのさなか、因縁の男と再会することになるが……。日本ホラー小説大賞短編賞受賞作「鼻」他二編を収録。大型新人の才気が迸る傑作短編集。

「暴落」「受難」「鼻」の三作を収録。表題作が日本ホラー小説大賞短編賞受賞作です。
この作者は同じ年に「沈底魚」 (講談社文庫) で乱歩賞を受賞しています。「沈底魚」 は公安を題材にしたエスピオナージュであったことを考えると、非常に芸風の広い作家ですね。
ホラーと一口にいっても、3つそれぞれ違った傾向のものになっています。
「暴落」は、個人が株として上場されていたら、というもしもの世界を舞台にした作品で、妙なリアリティが漂ってきます。
「受難」は、ビルとビルの隙間に閉じ込められた(?)男の不条理劇のような顛末を描いています。リアリティはないはずなのに、登場人物たちの壊れ方が怖い。
「鼻」はミステリの手法(?)を駆使しています。私のパートと、ゴシック体で書かれる俺のパートが交錯していく物語です。タイトルが「鼻」で、差別の対象となっている人たちがテングと呼ばれていることから、私のパートの世界観は読み取りやすい一方、匂いを気にしている俺のパートの関連がなかなかつかめず読み進んでいると、さっと二つを融合し、もやもやを取り払って見せる作者の手腕にはびっくりしました。
ホラーというジャンルなので、好き嫌いはあると思いますが、作者の実力は十分感じられると思います。
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