実験的経験 Experimental experience [日本の作家 森博嗣]
<後ろ側 帯>
ここにあるのは新しい小説のカタチ。
小説の極点を軽やかに飛び越える、究極の森博嗣的「創作」--
単行本です。
帯に書かれているようにこれが小説の新しいカタチなのであれば、大概の人は(と勝手に不特定多数を代弁してしまいますが)小説を読むのをやめてしまうと思います。少なくとも、こういうのを書くには森博嗣だけでいい。
これはまさに、「究極の森博嗣的『創作』」、ですね。森博嗣にしか書けない、森博嗣にしか書くことが許されない、そういう作品だと思います。小説なのか、エッセイなのか...
読んでいる最中、何度か大笑いできましたが、それは森博嗣が笑わせようとしたところではないんじゃないだろうか、と思っています。
この作品ではダジャレが連発されていますが、苦笑するしかないですし、ダジャレ以外でも、もともと森博嗣は狙ったユーモアが得意ではないような気がします(森博嗣でなくてもユーモアというのは狙うと難しいですけれど)。たとえば、哲学者である土屋賢二のエッセイはとてもおもしろくて、ネタ切れ気味の最近はともかく、初期の作品の「われ笑う、ゆえにわれあり」 (文春文庫)や「われ大いに笑う、ゆえにわれ笑う」 (文春文庫)などは、ひねったユーモア連発でとてもおもしろく、森博嗣も土屋賢二のファン(?)らしいですが、「人間は笑う葦である」 (文春文庫)の解説を森博嗣が書いていて、土屋の文章のマネ(?)をしているのですが、実につまらない。いや、そのぶん土屋の偉大さが浮き上がって解説としては成功なのかもしれませんが...
話が大きく脱線してしまいましたが、この本に話をもどして...
森博嗣らしい考え方が、表にどーんと出てきているのが特徴です--個人的には「理系」という括りは正しくないように思っていますが、まあそれは余談ですね。
P090の視点をめぐる話とか、P113やP158にみられる原子力発電に関する話とか、P146の作品の理解の話とかが代表例でしょうか。こういうのを楽しく読める人にのみおすすめ、です。
<2014.11.30追記>
今年の7月に文庫化されていましたので、書影を追加。
実験的経験 Experimental experience (講談社文庫)
- 作者: 森 博嗣
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2014/07/15
- メディア: 文庫
タグ:森博嗣
2012-07-21 15:51
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