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ずっとお城で暮らしてる [海外の作家 さ行]


ずっとお城で暮らしてる (創元推理文庫)

ずっとお城で暮らしてる (創元推理文庫)

  • 作者: シャーリィ ジャクスン
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2007/08
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
あたしはメアリ・キャサリン・ブラックウッド。ほかの家族が殺されたこの屋敷で、姉のコニーと暮らしている……。悪意に満ちた外界に背を向け、空想が彩る閉じた世界で過ごす幸せな日々。しかし従兄チャールズの来訪が、美しく病んだ世界に大きな変化をもたらそうとしていた。“魔女”と呼ばれた女流作家が、超自然的要素を排し、少女の視線から人間心理に潜む邪悪を描いた傑作。


「あたしはメアリ・キャサリン・ブラックウッド。十八歳。姉さんのコンスタンスと暮らしている。」
この書き出しでこの小説は始まります。
視点人物はこのメアリ(メリキャットと呼ばれています)。彼女の視点で、静かな暮らしと、村人との緊張感のある日常が描かれます。
屋敷で起こった事件の犯人として疑われた姉さんのコンスタンス。裁判では無罪になったけれど、村人の見る目は厳しく、引きこもっている姉に代わって行く、村への買い出しはメリキャットにとって苦行です。
この部分も、なにか起こるんじゃないか、とハラハラします。
村に行くのはつらいけれど、それなりに安定した生活を送っていたところへ従兄のチャールズがやってきて、平穏なメリキャットとコンスタンスの生活にひびが入り始めます。財産狙いなのが見え見えで可笑しいのですが、それに対するコンスタンスの考えや態度あたりから、読んでいて、あれれ? と妙な気分になってきます。
一人称で書かれた小説というのは、だいたいにおいてその視点人物に感情移入する、あるいはその視点人物になった気分で読んでいくものだと思うのですが、どうも、この「ずっとお城で暮らしてる」の場合、メリキャットに違和感を覚えるのです。
閉じこもった生活で、姉がすべて、という暮らしですから、ある程度普通じゃないのは予想していますが、度を超していて...無邪気といえば無邪気なんですが、冒頭にさりげなく忍び込まされた、18歳という年齢を考えると、怖くなってきます。
静かな生活を望む主人公たちを蝕む村人や従兄の“恐怖”を描くと同時に、その守るべき対象である主人公が歪(いびつ)という“恐怖”を味わうことになります。

解説を桜庭一樹が書いていまして、帯にも引用されているのですが、
「本書『ずっとお城で暮らしてる』は、小さなかわいらしい町に住み、きれいな家の奥に欠落と過剰を隠した、すべての善人に読まれるべき、本の形をした怪物である」
というのはとても印象的ですね。
動的なシーンもあるのですが、しんとした、冷え冷えとした感触のホラー作品でした。

原題:We have always lived in the castle
作者:Shirley Jackson
刊行:1962



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