二重螺旋の誘拐 [日本の作家 喜多喜久]
<裏表紙あらすじ>
大学に助手として勤務する香坂啓介は、学生時代の先輩・佐倉雅幸の一人娘の真奈佳に、亡くなった妹の面影を重ねて可愛がっていた。ある日、真奈佳は一人プールに出かけ、そのまま行方不明になってしまう。真奈佳の行方を必死に探す雅幸と妻・貴子のもとに誘拐を知らせる脅迫電話が……。啓介の物語と雅幸の物語は二重螺旋のように絡み合いながら、予想だにしない結末へと収束していく――。
帯に
「驚愕のどんでん返しに二度読み必至!」
とありまして、読者を煽っています。
いわゆる「理系ミステリ」で知られる作者で、今回はその部分は抑え気味ではありますが、主人公の設定にその影響が、というと理系の人に叱られるでしょうね。
啓介の設定が、正直、非常に気持ち悪い。
亡くなった妹の面影を重ねて、という言い訳は用意されていますが、まあ、要するにロリコン。三十歳前の男が、五歳の少女(ってか、幼女ですね)に恋をするって...
一人称で語られる視点人物の行動って、割と気になりにくいものですが、これはさすがにアウトでしょう。
一方で、物語のもう一つのパート、雅幸の方は三人称。こちらは苦労していて、なんか共感できます。
雅幸から見た娘真奈佳の誘拐パートと啓介の話をどう着地させるんだろう、と思って読んでいましたが、なるほどねー、そこへ持っていきますか、というところ。タイトルに込められた意味がわかると、ちょっと、おおっと思います。
ちょっと安直ではありますが、誘拐ミステリの新機軸かもしれません。
啓介をめぐるラストも、なんだか無理やりではありますが、ハッピーエンドではないですか。性癖からすると、あんまりハッピーエンドを迎えられそうにない設定だと思いますが...
雅幸もそうですが、割と優秀な科学者なんですね。
なにより、真奈佳ちゃんがいい子でよかったね。
<ちょっとネタバレ気味の蛇足>
この作品、日付がちゃんと特定されて記載されています。
2013年に単行本で出た作品ですので、曜日の設定から考えて2012年が舞台のようですね。
それでちゃんと11年間の辻褄が合っています。
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