SSブログ

煙で描いた肖像画 [海外の作家 は行]

煙で描いた肖像画 (創元推理文庫)

煙で描いた肖像画 (創元推理文庫)

  • 作者: ビル・S. バリンジャー
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2002/07
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
ある日、偶然に見つけた思い出の少女の写真。彼女は今どうしているのだろうか? そのちょっとした好奇心はいつしか憑かれたような思いに変わり、ダニーはわずかな手掛かりを追って彼女の足跡を辿り始める。この青年の物語と交互に語られていくのは、ある悪女の物語。二人の軌跡が交わるとき、どんな運命が待ち受けているのだろうか? サスペンスの魔術師の代表作がついに登場。


いったりきたりしておりますが、5月に読んだ1冊目の本の感想です。
バリンジャーといえば、「歯と爪」 (創元推理文庫)「赤毛の男の妻」 (創元推理文庫)を読んだことがあります。
分類すると、「歯と爪」は二つのストーリーをカットバックで交互に語っていく手法を用いた作品、「赤毛の男の妻」は叙述トリックを用いた作品です。
技巧派として知られる作者ですが、この「煙で描いた肖像画」 は、カットバックで交互に語る手法を初めて使った作品(らしい)です。

一つ目のストーリーは、偶然見つけた写真から思い出の少女クラッシー・アルマーニスキーの今を突き止めようとするダニー。
そしてもう一つが、その探されるほうの女の成り上がりストーリー。
しかし、若いころ一度見ただけの女性に、いくら美しかったとはいえこれほどの執着を見せるとは、すごいぞ、ダニー。今でいうストーカーに近い執念を感じますが、ピュアといやあ、ピュアですね。
一方のクラッシーのほうは次から次へと名前を変え、男を踏み台にして金を、よりよい暮らしを手に入れていく。
ダニーとクラッシーの対比が見どころなのでしょう。
そしてこの二人が交差するラスト。
今となってはあまり新味も衝撃も感じないラストになっていますが、当時のインパクトはすごかったのでしょうね。
一種のファム・ファタールものとも言えますし、いびつなボーイ・ミーツ・ガール物語とも言えます。
なかなか味わい深い面白い作品だと思いました。

「消された時間」 (ハヤカワ・ミステリ文庫)も読みたいので、ぜひ復刊してください。


原題:Portrait in Smoke
作者:Bill S. Ballinger
刊行:1950年
翻訳:矢口誠




<蛇足>
この作品、創元推理文庫版が出るとほぼ同時に、小学館からも別訳で出版されました。
こういうことが起こると、どちらも売り上げに影響が出たでしょうね...
煙の中の肖像 (SHOGAKUKAN MYSTERY―クラシック・クライム・コレクション)

煙の中の肖像 (SHOGAKUKAN MYSTERY―クラシック・クライム・コレクション)

  • 作者: ビル・S. バリンジャー
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2002/05
  • メディア: 単行本




nice!(7)  コメント(0) 

nice! 7

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。