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殺し屋たちの町長選 [日本の作家 か行]


殺し屋たちの町長選 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

殺し屋たちの町長選 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

  • 作者: 加藤 鉄児
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2015/07/04
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
失踪した姉探しの途中で、知らず知らずミツルがエントリーしたのは、殺人斡旋サイトだった! 強迫神経症の自称・斉藤は、その症状により仕事を干された殺し屋。再起をはかるべくサイトから選んだのは、愛知県仁宝町の町長立候補者。報酬額は格安の100万円。だが他にエントリー者がいることを知り、斉藤は焦る。元役人コンビ、殺し屋組合の経理担当者など、殺し屋たちのバトルが始まる!


読了本落穂拾い、続けます。
2015「このミス大賞」隠し玉。
第13回 『このミステリーがすごい!』大賞に応募された作品を改稿したものです。
このときは同時に、
山本巧次「大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう」 (宝島社文庫)(感想ページはこちら
も隠し玉として刊行されました。
ちなみに、この年の大賞は、
降田天「女王はかえらない」 (宝島社文庫)
優秀賞が、
辻堂ゆめ「いなくなった私へ」 (宝島社文庫)
神家正成「深山の桜」 (宝島社文庫)
豊作の年だったようですね。

「大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう」がおもしろかったので、同時隠し玉の「殺し屋たちの町長選」 (宝島社文庫)にも期待してしまうところです。

殺し屋に”組合”がある、という設定は面白いです。その名も東日本特殊請負業組合。
そこが仕事を斡旋する、しかもネットで、というのも面白い。
よく考えたなぁ、と。
多彩な殺し屋が一つの殺しをめぐって競い合う。
人を食った設定にふさわしく、殺し屋たちのキャラクターも人を食っている。
いいではないですか。
ターゲットは町長選の候補者。
こちらも一筋縄ではいきません。

解説で古山裕樹が
「人物も事件もふざけた印象が強いけれど、物語のつくりはいたって丁寧。多数の登場人物が、それぞれの目的のために好き勝手に動き回りながらも、ラストは綺麗に着地を決めてみせる」
と書いていますが、そういう作品です。

設定などから伊坂幸太郎との類似が指摘されることもある作品のようですが、あまりその点は気になりませんでした。
であれば、いい作品でした。めでたし、めでたし、のはずなんですが、どうも物足りない。
そこそこサプライズになりそうな要素も仕掛けられているのですが、いずれも小粒で弾けない。
なんともじれったくなる作品でした。


<蛇足>
「だったら後腐れのないほうを、さわりだけでも試されることをお勧めします」(75ページ)
よくある誤解ではありますが、”さわり” の意味を勘違いされているのでは?
導入部、出だしという意味ではありませんよ。
同じように
「姑息な手段も正当な業務と言い切る小槍が頼もしい」(92ページ)
の "姑息" の意味も勘違いされているように思えてなりません。
卑怯な、ずるいという意味ではありません。



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