SSブログ

カンナ 京都の霊前 [日本の作家 高田崇史]


カンナ 京都の霊前 (講談社文庫)

カンナ 京都の霊前 (講談社文庫)

  • 作者: 高田 崇史
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2015/01/15
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
偽書「蘇我大臣馬子傳暦」を、なぜ幾つもの集団が命懸けで奪い合うのか? 「乙巳の変(大化の改新)」は、中大兄皇子や中臣鎌足が起こした天皇へのクーデターだとする「玉兎」の真の狙いは? 聖徳太子は、藤原氏が捏造した架空の人物なのか? すべての謎を解くべく、甲斐と貴湖は決戦の地・京都へ。禁断の完結編!


読了本の落穂ひろいを続けます。2016年1月に読んだ本です。

ずっと読んできたカンナシリーズもいよいよ最終巻です。
シリーズを通して徐々に成長してきた(と言っていいのでしょう)甲斐の才能・能力は完全に開花していますし、貴湖にしろ、竜之介にしろ、立派に成長しています。(54ページあたりで貴湖が示す能力などは、このシリーズにまことに便利な能力です笑)
主人公格の若者たちそれぞれの成長物語というところでしょうか。(普通の、常人の成長とは違いますが)

そして物語の背後にあるのは、高田崇史ならではの、虐げられし者、敗れし者の歴史で、QEDシリーズ、カンナシリーズを通して展開されてきたものです。

余談ですが、その意味では「京都の霊前」の「京都」というのも一種のミス・ディレクションかもしれません。
目次と並ぶように、嵐山・太秦の地図が掲げられていますが、嵐山や太秦というのは厳密な意味での京都ではありませんから。

今回のテーマは、シリーズのきっかけともいえる物語の起爆剤、社伝「蘇我大臣馬子傳暦」が示すように蘇我氏です。
この社伝を巡って、さまざまな組織?が争いを繰り広げてきたわけで、それが(一応)決着します。

「千年以上も昔の物だと聞いたけど、そんな古い書物に、今を生きている人たちが命を賭けるほどのの価値があるとは思えない」(44ページ)
とある主要登場人物が語っていますが、全くその通り。
個人的には、このシリーズで語られたことが ”真実” として明るみに出たところで、何も変わりはしないと思いますが、そんなことを言うのは真実の重みや歴史のロマンに不感症になっているのでしょうね。

薬草師も重要なポイントで出てきて、にやりとできます。

高田崇史はこの後もいくつもシリーズを展開し、巻数もかなり重ねてきているので、さて、追いかけようかどうしようか......


<蛇足>
事件を捜査していた警察が手を引くところで、担当の若い刑事を捜査打ち切りとして説得?するシーンがあります。
「すると菱川は山野辺の耳元に口を寄せて、二言三言呟いた」(229ページ)
本筋とはあまり関係ないのですが、非常に気になりました。
わずか二言三言で、血気盛んな若手を黙らせてしまう、どんな言葉を吐いたのでしょう??





nice!(11)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 11

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。