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狐色のマフラー:杉原爽香<48歳の秋> [日本の作家 赤川次郎]


狐色のマフラー (光文社文庫)

狐色のマフラー (光文社文庫)

  • 作者: 赤川次郎
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2021/09/14
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
爽香は、勤務する〈G興産〉に密かに吸収合併話が進行していることを知る。それには社長・田端将夫の秘書で愛人と噂される朝倉有希が関わっており、何かと目障りな爽香を陥れようとしているらしい。一方、爽香の裸体画を目玉展示とする〈リン・山崎展〉が計画されている〈NK美術館〉は、幽霊騒動に揺れていた……。登場人物が読者と共に年齢を重ねる大人気シリーズ!


シリーズも第34弾で、爽香は48歳。
2021年9月に刊行されましたので、シリーズにようやく読むのが追いつきました。

毎度のことですが、今回も爽香には次から次へと事件が持ち込まれ、それぞれにぎやかに様々なシリーズ登場人物を巻き込みながら、収斂させていきます。
そのうえ、自社の合併話まで。
なんですが、この合併話がいただけません。リアリティがかけらも感じられない。
だいたい社長の田端って、ここまでダメダメな人物設定でしたでしょうか?
赤川次郎って、もともと取材をされるタイプではない、と本人も以前おっしゃっていましたし、経済的な話は苦手なのではないでしょうか。
このあたりはほかのエピソードにも明らかでして、たとえば爽香が勤める<G興産>の創業五十周年の記念事業として爽香が企画したという、若手の海外研修。
「爽香が考えたのが、二十代の若手社員をが海外研修に送り出すことだった。
 もちろん、ひと月やふた月では意味がない。少なくとも一年、それもアメリカやドイツなどのビジネス先進国ではなく、中東やアフリカ、東南アジアなどの国で、どんなビジネスが可能か、そしてそれらの国々が本当に必要としているものは何か。
 <G興産>が今、世界に対して貢献できることは何なのか。肌で感じて来てほしいと思ったのだ。」(51ページ)
気宇壮大で結構ですが、<G興産>の企業体力、費用対効果、そしてリスク対策、いずれの面からも非現実的すぎて苦笑するしかありません。

この点は目をつぶるとして、その他の面はいつもながらの大騒動を楽しめます。
なにより爽香には、裏社会も味方についているわけですから、怖いものなし。ずんずんトラブルを解決していけます。

金田夏子という歌い手が登場し活躍し、シリーズの今後を賑わしてくれるのでは、と期待したのですが、どうやら今作限りのようですね。ちょっと残念。
「楽譜って、こんなことにも役に立つんですね」(257ページ)
というセリフのシーンは、思わず笑ってしまうくらいだったのに。

それにしても、前作「焦茶色のナイトガウン」 (光文社文庫)(感想ページはこちら)の最後で不穏だったある登場人物、どうなったのでしょうか?
気になっています。



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