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ようこそ授賞式の夕べに (成風堂書店事件メモ(邂逅編)) [日本の作家 大崎梢]


ようこそ授賞式の夕べに  (成風堂書店事件メモ(邂逅編))(創元推理文庫)

ようこそ授賞式の夕べに (成風堂書店事件メモ(邂逅編)) (創元推理文庫)

  • 作者: 大崎 梢
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2017/02/19
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
書店大賞授賞式の当日、成風堂書店に勤める杏子と多絵のもとを福岡の書店員・花乃が訪ねてくる。「書店の謎を解く名探偵」に、書店大賞事務局に届いた不審なFAXの謎を解いてほしいというのだ。同じ頃、出版社・明林房書の新人営業マンである智紀にも事務局長から同様の相談が持ち込まれる。授賞式まであと数時間、無事に幕は上がるのか?! 本格書店ミステリ、シリーズ第四弾!


2022年3月に読んだ9作目(10冊目)の本です。
待ってました、
「平台がおまちかね」 (創元推理文庫)(感想ページはこちら
「背表紙は歌う」 (創元推理文庫)(感想ページはこちら
に続く出版社営業・井辻智紀の業務日誌シリーズ第3弾(というわりに積読にしていて読むのが遅くてすみません)と言いたいところなのですが、どうやら、
「配達あかずきん 成風堂書店事件メモ」 (創元推理文庫)
「晩夏に捧ぐ (成風堂書店事件メモ(出張編)) 」(創元推理文庫)
「サイン会はいかが? 成風堂書店事件メモ」 (創元推理文庫)
に続く成風堂書店事件メモシリーズ第4弾、と規定されているようですね。
残念。井辻くんファンなのに。
まあ、井辻くんと再会できたので、よしとしましょう。

例によってミステリとしては薄いですけれどね。

今回扱われるのは、書店大賞。
つまりは本屋大賞ですね(笑)。
舞台裏の苦労が描かれていまして、大変だなぁ、と。
厳しい状況に置かれている書店業界。本来なら商売敵であるはずの書店同士が手を携えて立ち上がる、というのはロマンを感じます。

ただ、個人的に本屋大賞の現況にあまり感心していないので、厳しくみちゃいますね。
「書店大賞に対してのアンチ意見は、君だって見聞きしてるだろ。すでに売れている本しか選ばれない、ただの人気投票、裏で得票数の操作をしている、一票いくらで売り買いしている、だから信用しない、うさん臭い、インチキ、目ざわり、さっさとやめちまえ。そんなバッシングの数々」(77ページ)
と作中でも登場人物に言わせています。
これらのアンチ意見が正しいのかどうかは知りませんが、少なくとも「すでに売れている本しか選ばれない、ただの人気投票」には同意します。
本好きな本屋の店員さんが、ぜひとも読んでほしいと願う良書を推薦してそこから選ばれる、というのが当初のコンセプトだったのではないかと思うのですが、参加する書店員が増えたからでしょうか、大賞受賞作は受賞以前から本屋の店頭で積まれているような作品ばかりになってしまっています。
本屋大賞はかなり注目度が高く、本屋さんでも積極的に展開されていますので、本屋を活気づける、本を売るというのが目的だとすれば大大大大大成功。イベントとしては非常に優れたものだと思いますが、おすすめ本を知るということからすると、屋上屋を架すものでしかなく、特に価値が感じられません。
それに本屋大賞として推されることで、本屋さんの画一化が一層激しく進んでいってしまっているように思います。
いまやブランド化した本屋大賞ですから、逆に今こそ、隠れた名作を本好きの本屋さんが発掘して世に知らしめてくれればよいのに、なんて考えてしまいます。

あ、いや、本屋大賞に対する意見を述べても仕方ないですね。
本屋大賞を模した書店大賞の授賞式めがけて緊張が高まっていく、というのがプロットのはずなんですが、そこは成風堂書店事件メモシリーズだったり、出版社営業・井辻智紀の業務日誌シリーズだったりのこと、どことなくおっとりした感じで話が進むのが逆に興味深かったですね。
書店大賞に絡んで起こる、閉店したある書店をめぐる騒動の謎を追いかけていくのですが、こちらも書店業界をめぐる問題に焦点が当たっています。
ミステリとしての底はかぎりなく浅く、事件の構図も登場人物の配置も、サプライズはまったくありません。また、犯人の狙いと犯行内容のバランスが悪いように思われたのも残念です。
とはいえ、成風堂書店事件メモシリーズと出版社営業・井辻智紀の業務日誌シリーズが共演しただけでも満足することとしましょう。

また井辻くんの出てくる作品、書いてほしいですね。



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