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巡査さん、事件ですよ [海外の作家 は行]


巡査さん、事件ですよ (コージーブックス)

巡査さん、事件ですよ (コージーブックス)

  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2018/09/07
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
雄大な自然の広がるイギリス、ウェールズ地方。険しいスノードン山の麓の村では、あちこちをひつじが歩き回るのどかな風景がひろがっていた。そんな村へ巡査として赴任してきたエヴァン。都会で起こる事件に疲れ、幼い頃に家族で暮らした村へ戻ってきたのだ。ここでの巡査の仕事は畑荒らしや迷い猫の捜索に、住民どうしの喧嘩の仲裁。悩み事といえば、大家さんの作る食事がおいしすぎでズボンがきつくなり始めたことと、パブのウェイトレスが猛アタックしてくることだった。そんなある日、スノードン山で死体が発見された。本署からやってきた警察官は不幸な事故と決めてかかるが、山をよく知るエヴァンにはどうしてもそうは思えず……!?


2022年9 月に読んだ9冊目の本です。
「貧乏お嬢さま、メイドになる」 (コージーブックス)(感想ページはこちら)ではじまる《英国王妃の事件ファイル》の作家リース・ポウエンの別のシリーズです。
ミステリーにはこちらのシリーズがデビューだったようです。

原書房のコージー・ブックスというコージー・ミステリのレーベルから翻訳されていますが、主人公は男でかつ警官。エヴァン・エヴァンズ。
コージー・ミステリの定型からは大きく外れていますが、舞台となるウェールズのスランフェア村のありようはコージー・ミステリ感を味わわせてくれます。

「よく聞くんだ、エヴァンズ。きみは村の巡査にすぎない。主任警部モースじゃないんだ。今度余計なことに首を突っこんだり、きみの浅はかな考えで勝手なことをしたりしたら、上司に報告する。」(141ページ)
なんて叱られたりする探偵役、いいですよね。
(「巡査さん」という語が使われていますが、お巡りさんという感じなんでしょうね。お巡りさんは事件捜査はしないんですね。)

《英国王妃の事件ファイル》と比較するとミステリ味は濃いめ。
本署は事故と決めつけるけど、不審に思うエヴァンという構図で、したがって当然殺人なわけです。
真相は平凡と言っては失礼かもしれないけれど、それはむしろ本書の場合は長所で、大方の読者の想定どおりに進む物語のテンポが非常に心地いい。
エヴァンをめぐる恋の鞘当ても、(読んでいる側としては)のどかで楽しめそうですし、シリーズを追いかけてみることにしましょう。


<蛇足>
「エヴァンは警察署として使われている建物のこぢんまりした部屋に入った。地元も消防署であり、RAC(イギリス王立自動車クラブ)の施設であり、軽食も売っているガソリンスタンド兼修理工場の〈ロバーツ・ザ・ポンプ〉の隣に建つ小屋だ。」(75ページ)
RACにイギリス王立自動車クラブと説明が付されているのですが、おそらくRAC違いかと思います。
確かにRoyal Automobile Club (イギリス王立自動車クラブ)というのはありますが、これ、いわゆる紳士クラブ。ロンドンの Pall Mall にある社交クラブで、入会するのは簡単ではないと思われますし、その施設が北ウェールズの寒村にあるとは思えません。(Pall Mall についてはアンソニー・ホロヴィッツの「シャーロック・ホームズ 絹の家」 (角川文庫)感想で触れたことがあります)
広くイギリスでRACというと、車に関するサービスを広く提供する企業(?)で、日本でいうとJAFが提供しているロード・サービスや自動車保険などを提供しています。同種の企業にAAというのがあり、AAとRACがメジャーです。
ここのRACは間違いなくこちらかと思います。
──2023.8.28追記
ロード・サービスのRACですが、もともとはイギリス王立自動車クラブのものだったそうです。現在は売却されてRACのものではなくなっているようですが。
なので、この作品の訳し方で正しいのですね。失礼しました。



原題:Evans Above
作者:Rhys Bowen
刊行:1997年
訳者:田辺千幸





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