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プリンセス刑事 [日本の作家 喜多喜久]


プリンセス刑事 (文春文庫)

プリンセス刑事 (文春文庫)

  • 作者: 喜久, 喜多
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2018/10/06
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
女王統治下にある日本。現女王の姪で、王位継承権第五位の王女・白桜院日奈子が選んだ職業は、なんと刑事だった!? 「ヴァンパイア」と呼ばれる殺人鬼による連続殺人事件の捜査本部に配属された日奈子と、彼女のパートナーに選ばれた若手刑事の芦原直斗は、果たして凶悪な犯人を逮捕することができるのか――?


2022年11月に読んだ3冊目の本です。

カバー裏のあらすじを読んで感じていたことではあるのですが、読んでみるとこれは、似鳥鶏の戦力外捜査官 姫デカ(第1作の感想ページはこちら)と相似形です。
主要な視点人物である芦原直斗の扱いも、ほぼほぼ戦力外捜査官を踏襲した感じです。

あちらと比べると、こちらは王族(!)ということですから、守らなければならない度はアップしているものの(当然ながら専属のボディガードもいます)、無敵度も大幅アップ。
ミステリとしては安易な方向に進んでいるとも思えますが、同時に物語の駆動力はあがるのかもしれません(だって王族の権威とか特権を活用できるのですから)。
ただ、戦力外捜査官シリーズと比較して大きな違いは、ユーモアでしょうか。
戦力外捜査官シリーズはユーモアミステリとして優れていますが、この「プリンセス刑事」 (文春文庫)は、喜多喜久のこと軽妙には描かれていますが、ユーモアをほとんど感じさせず、極めて真面目に真面目につづられています。
この設定を真面目に扱うというのは、なかなかの冒険かもしれません。

事件は猟奇殺人のシリアルキラー。
この事件の構図が平凡なのが残念ですね。
読者は相当早い段階で真犯人の見当がついてしまうはずです。

容疑者の雑多な個人情報を入力し、電子空間上に再現構築した架空の人格を用いてシミュレーションして犯人を追い詰める、などという大仰なアイデアが盛り込まれていますが、これ現実に研究されているのでしょうか?
264ページあたりから描かれる推論には正直まったく感心しませんでした。
これなら昔ながらの刑事のカンの方が頼りになりそう......

シリーズ化されていまして、
「プリンセス刑事 生前退位と姫の恋」 (文春文庫)
プリンセス刑事 弱き者たちの反逆と姫の決意 (文春文庫)
と今のところ第3作まで出ています。
王族という設定を導入したことで、無理筋な、あるいは斬新な捜査方法をとることができるようにも思えますので、そういう方向でシリーズが展開されるとおもしろいかもしれませんね。

シリーズということで注目は、白桜院日奈子のお兄さま、白桜院光紀(みつき)でしょうか。
「王族の家に生まれた男子はね、誰からも歓迎されない存在なんだ。王位継承権はないのに、女王や姫の血を引いてるから無下にはできない。はっきり言えば、無駄飯食いの厄介者さ。式典の参列や来賓の出迎え、外遊なんかの国事行為は姫の役目だと決まっているしね。だから、ボクたちは『王子』や『プリンス』と呼んでもらえない。無価値であることがボクたちのアイデンティティーなんだよ」(291ページ)
とうそぶいたりもしますが、立場上? 立場を活かして、結構いいところをかっさらっていきます。
シリーズ次作でも活躍してほしいですね。


<蛇足>
「それは人生で初めて味わう、新鮮な気づきと感動だった。」(31ページ)
もはや「気づき」という語を気持ち悪いと言いたてたところでまったく無駄な抵抗といえるほど、この表現は蔓延ってしまっていますが、この無神経で醜悪な表現が出てくる前は、こういう時どう書いていたのでしょうね? おそらく ”発見” くらいを使っていたのでしょうね。






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