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奇巌城(ポプラ社) [海外の作家 ら行]


([る]1-1)奇巌城 怪盗ルパン全集シリーズ(1) (ポプラ文庫クラシック)

奇巌城 怪盗ルパン全集シリーズ(1) (ポプラ文庫クラシック)

  • 出版社/メーカー: ポプラ社
  • 発売日: 2009/12/24
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
深夜の伯爵邸を襲った怪事件。秘書が刺殺され、ルーベンスの傑作絵画が盗まれた。事件の裏で暗躍するルパンを追って、奔走する高校生探偵イジドール。大怪盗VS名探偵の推理合戦は、海に浮かぶ古城でついに対決を迎える。莫大な秘宝とともに待ち受ける悲しい結末とは! ?  解説/モンキー・パンチ


2013年2023年10月に読んだ8冊目の本です。
モーリス・ルブランの「奇巌城 怪盗ルパン全集シリーズ(1) 」(ポプラ文庫クラシック)
モーリス・ルブランのルパンものといえば、「怪盗紳士ルパン」 (ハヤカワ文庫 HM)感想で森田崇のコミック『アバンチュリエ(1)』 (イブニングKC)(感想ページはこちら)に触れながら、
「原作の翻訳も改めて読んでみようかな、という気になりました。」
と書いているように読んだものの、1冊で止まっている状態でした(何冊かハヤカワミステリ文庫は買ってあるのですが)。

そんなとき本屋さんでポプラ文庫から、昔懐かしい南洋一郎訳のシリーズが出ていることを発見。
このポプラ文庫版は、カバーの絵が昔図書館で借りて読んだものと同じなのがいかしています。
たしか瀬戸川猛資だったか、ルパンものは大人向けの翻訳で読むとつまらないけれど、南洋一郎訳だとおもしろい、といったようなことを書いていたような記憶があり、懐かしさも相まって買ってみました──といいつつ早川文庫版の大人向けの翻訳も個人的には楽しく読みました。念のため。

巻末に
「この作品は、昭和三十三年にポプラ社より刊行されました」
とあります。昭和三十三年!
この本、古い翻訳ということで、なかなか最近ではお目にかかれない表現が頻出で、そこも楽しめます。
たとえば「泉水池(せんすいいけ)」(17ページ)とか「半長靴」(33ページ)など最近では目にしない表現のように思えます。
「けれどそれまでが不安心だ」(264ページ)
の「不安心」もいまでは「不安」としか言わない気がしますね。
でも、こういうのを読むのはとても楽しい。

ミステリとしてみた場合、書かれた年代を考慮に入れたとしてもあまりにも雑(失礼)で甘々なので評価しづらいのですが、でもこの作品は、すこぶる面白い。
わくわくできますし、本当に面白いんですよね。

高校生探偵イジドールが大活躍、というか、持ち上げすぎ。
ガニマール刑事をはじめ大人たち、果てはアルセーヌ・ルパンに至るまで、
「じつのところ、おれはきみがおそろしいのだ。過去十年間、おれは、きみみたいな相手にぶつかったことがない。きみはおそろしいやつだ。
 ガニマールもホームズも、おれから見たら子供の手をねじるみたいあった。ところが、きみはおれをどたんばまで追いつめ、おれをあぶなくやっつけるところだった。おれは、もうすこしで、しっぽをまいて逃げるところだった。」(130ページ)
なんてイジドールのことを褒めちぎりますが、彼の推理の内容などをみてもとてもとてもそこまでのレベルとは思えない(笑)。物語の牽引役として立派に務めを果たしてはいますけれど......

伯爵家の強盗から、殺人事件、ルパンの消失、医者の誘拐騒ぎに暗号解読、フランス王家の秘密、隠された財宝まで、まさに波瀾万丈のスピード感あふれる物語展開はおもしろい。
子どもの頃にこんな面白い話を読むことができてよかったです。

ルパンものの再読、南洋一郎版で進めるか、大人向けの翻訳で進めるか......悩みますね。


<蛇足>
「きみ、すばらしいことをやっつけたね。大成功だ。われわれ商売人もすっかり鼻をあかされた形だ」(267ページ)
これはガニマール刑事がイジドールを褒めるセリフです。
警察官が商売人というのはちょっと変ですね(笑)。
フランス語の商売人という語には、プロフェッショナルに近い意味があるのでしょうか?


原題:L'aiguille Creuse
作者:Maurice Leblanc
刊行:1909年(Wikipediaによる)
訳者:南洋一郎






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