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玉村警部補の災難 [日本の作家 海堂尊]


玉村警部補の災難 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

玉村警部補の災難 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

  • 作者: 海堂 尊
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2015/06/04
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
「バチスタ」シリーズでおなじみ加納警視正&玉村警部補が活躍する珠玉のミステリー短編集、ついに文庫化! 出張で桜宮市から東京にやってきた田口医師。厚生労働省の技官・白鳥と呑んだ帰り道、二人は身元不明の死体を発見し、白鳥が謎の行動に出る。検視体制の盲点をついた「東京都二十三区内外殺人事件」、DNA鑑定を逆手にとった犯罪「四兆七千億分の一の憂鬱」など四編を収録。


2023年11月に読んだ8冊目の本です。
海堂尊の「玉村警部補の災難」 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)


4編収録の短編集ですが、帯にある紹介を引用しておきます。
検死体制の盲点をついた犯罪に遭遇した田口医師は……。「東京都二十三区内外殺人事件」
巨大迷路内でお笑い芸人が殺された──。加納の推理はなんと!? 「青空迷宮」
DNA鑑定を駆使しながら、加納&玉村の捜査が始まる 「四兆七千億分の一の憂鬱」
暴力団幹部連続死事件の裏で、闇の歯科医が暗躍する! 「エナメルの証言」


「東京都二十三区内外殺人事件」は、ある古典短編ミステリのネタを取り込んで、白鳥の行動に反映させ、海堂尊お得意の主張に絡めています。アイデアとしては流用でもあり取り立てて言うほどのこともないのですが、田口、白鳥、加納(、そして玉村)とそれぞれ登場人物の性格を反映した物語になっているのがおもしろい。

「青空迷宮」は、TV撮影という監視状況下で発生した屋根のない立体迷路での殺人事件で、一種の不可能犯罪になっていますが、設定上犯人があまりにあからさまなのが弱点ですね。細かな部分が面白いのでちょっと残念。

「四兆七千億分の一の憂鬱」は犯人があからさまなところから出発して、加納との対決、という流れになります。あまりにも特殊状況なのが弱いと思いましたが、犯人の主張が崩れるきっかけが面白いですね。

「エナメルの証言」はちょっと異色作ですね。
加納、玉村よりも、犯人サイドの一人に力点があるようです。
法医学、歯科分野における盲点(?) をついた犯罪を描いており、とてもおもしろい思いつき。
ニッチでなければならないのに、需要が多そうなのが難点ですね(笑)。ラストの一文にニヤリとしてしまいました。

加納といい、あるいは白鳥といい、海堂尊特有の奇矯な人物で、ロジカルモンスターだかなんだかで、論理を振りかざして暴れまわるのですが、これを殺人事件など事件の捜査に当てはめると、なんだか危なっかしく見えてしまいます。
そこは作者も心得ておられて
「一見危うげだが、加納警視正にとっては盤石の王道を進んでいるだけだったのか。」(130ページ)
とフォローの文があったりもしますが、それでも、加納警視正にとっての王道、にすぎず、無理を通そうとしても道理が引っ込まないように思えました──作中では通るのですが。


<蛇足1>
「これからは推理小説作家も困るだろうな。アリバイ崩しの最終兵器が素人にもこんなに簡単に手に入るようじゃ、旧来型の推理小説は成立しなくなる」
「今は推理小説なんて呼ばず、ミステリー小説と言うんです。」
ー略ー
「最先端の科学や社会情勢を書かずして、いったい何が楽しんだね、あの連中は?」
「そういう分野はSFとか社会派小説と言うんですよ、警視正」
(134ページ)
加納と玉村との会話で登場人物のセリフですから、作者の意見と解すべきではないのかもしれませんが、この部分は作者の意見も混じっているのでしょうね。
推理小説、ミステリーも定義はいろいろ、内容も千差万別で幅が広いので、いろんなご意見がありますね。

<蛇足2>
「ガイシャは白井加奈、三十五歳、専業主婦です。趣味はネイルアートです。」(145ページ)
被害者の説明箇所ですが、警察の報告で趣味を言うんでしょうか?(笑)
しかも特段事件と関係のない趣味です。







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