SSブログ

火焔の鎖 [海外の作家 か行]


火焔の鎖 (創元推理文庫)

火焔の鎖 (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2012/01/28
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
27年前、米空軍の輸送機が農場に墜落した。この事故で九死に一生を得たマギーは、とっさに乗客の死んだ赤ん坊と自分の息子をすり替えていた。なぜ我が子を手放したのか? 少女の失踪や不法入国者を取材しながら真相を探るドライデンは、拷問された男の死体を見つけてしまい……。大旱魃にあえぐ沼沢地(フェン)を舞台に、敏腕記者が錯綜する謎を解き明かす。CWA賞受賞作家が贈る傑作。


今年の6月に読んだ本の感想を書き終わったことですので、読了本落穂拾いを。

「水時計」 (創元推理文庫)(感想ページはこちら)に続く、ジム・ケリーの第2作で、新聞記者ドライデンが引き続き探偵役を務めます。
「本格ミステリ・ベスト10〈2013〉」 第3位。

帯に「英国探偵小説の正当なる後継者」とありまして、言い得て妙、です。
渋い。
あっ、でも、渋いと言っても、退屈ということではありません。
じっくり読ませる、という感じでしょうか。

前作「水時計」 とはうって変わって、旱魃や火災といった熱い(暑い)火のイメージに濃く彩られた作品です。

本書の構成を、川出正樹の解説から引用します。
あらすじにも書いてある、27年前の赤ん坊すり替え事件の「動機を探るメインストーリーに、アフリカからの不法入国者斡旋業の実態解明と、違法ポルノ写真の流通経路の追跡という二つのサブストーリーが加わり、事態はどんどん錯綜していく。」

あれもこれも結びついて、一気にわっと解決する、というパターンではなく、題材を拡げたので、ドライデンの捜査がバラバラ感がありますが、要所要所でドライデンの妻ローラが彩りを添えます。
こういう英国ミステリ、たまに読みたくなります。
シリーズはこのあと、
「逆さの骨」 (創元推理文庫)
「凍った夏」 (創元推理文庫)
と翻訳されており、買って積読状態です。
じっくり読んでいきます。


<蛇足>
「騒がしい日本人観光客の一段が、パレス・グリーンにいるアイスクリームのヴァンのまわりに群がっている。それを除くと、町の中心部にはひと気がなかった。」(338ページ)
うーん、日本人観光客がやり玉に挙がっていることに、謝罪すべきか、お礼を言うべきか。
コロナ前ではありますが、最近では海外の観光地では、日本人はかなり比重が下がってしまい、韓国人・中国人に数でも騒がしさでも、激しく後れを取っています。




原題:The Fire Baby
著者:Jim Kelly
刊行:2004年
訳者:玉木亨





nice!(16)  コメント(0) 
共通テーマ: