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斬首人の復讐 [海外の作家 さ行]


斬首人の復讐 (文春文庫)

斬首人の復讐 (文春文庫)

  • 作者: マイケル・スレイド
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2005/09/02
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
雪深い山中で次々発見される首なし死体。一方、市内でも被害者を斬首、その首を警察に送りつける事件が発生した。<刎刑吏 (デキャピテイター)>と<斬首人 (ヘッドハンター)>、カナダ全土を脅かす二人の殺人鬼をつなぐものとは――? 壮絶な迫力、波乱万丈の展開、姿を現す意外な犯人たち。J・ディーヴァー級の連続驚愕で圧倒するジェットコースター・ミステリ。

帯に、“カナダのディーヴァー”と書いてあって、笑ってしまいました。ディーヴァーとは随分違うような。どんでん返しにかける情熱は似ていると強弁できなくもないかもしれませんが...
マイケル・スレイドのこの作品は、「ヘッド・ハンター」 (上) (下) (創元推理文庫) の続編というか完結編というかなので、先に「ヘッド・ハンター」を読んでおいたほうがよいと思います。「ヘッド・ハンター」のストーリーをラストに至るまで作中で紹介してしまっているので、「ヘッド・ハンター」を読んでいなくても「斬首人の復讐」は楽しめますが、「斬首人の復讐」を先に読んでしまうと「ヘッド・ハンター」が楽しめなくなってしまうように思います。
警察小説、サスペンス、ホラー、サイコ、アクション、歴史....といろいろな要素をぶちこんだ、一大エンターテイメント、なのですが、それぞれの要素が溶け合って渾然一体というわけではなく、それぞれの要素がそれぞれの要素のまま一つの作品に同居している、という感じの作品です。しかも、視点もころころと変わりいろんな人物を短い断章でつないでいく形式なので、調子がつかめるまではかなり読みにくいです。未整理なごつごつした印象を受けるのは、スレイドについてはいつものこと。
このごちゃまぜ感と、上にも書きましたが、どんでん返し、意外な犯人へのあくなき執念(妄執?)が特徴です。
無理矢理感はあっても、なんとか意外なものを仕立てようという作者の心意気を楽しみたいです。お腹いっぱいになりますが...
心意気といえば、訳者の夏来健次さんもすごいですね。ちらっと目次を見ていただければと思います。凝りすぎというかなんというか。すごい!
次の「メフィストの牢獄」 (文春文庫)もぜひ読もうと思います。
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グラーグ57 [海外の作家 さ行]


グラーグ57〈上〉 (新潮文庫)グラーグ57〈下〉 (新潮文庫) グラーグ57〈下〉 (新潮文庫)
  • 作者: トム・ロブ スミス
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2009/08/28
  • メディア: 文庫


<背表紙あらすじ>
運命の対決から3年――。レオ・デミドフは念願のモスクワ殺人課を創設したものの、一向に心を開こうとしない養女ゾーヤに手を焼いている。折しも、フルシチョフは激烈なスターリン批判を展開。投獄されていた者たちは続々と釈放され、かつての捜査官や密告者を地獄へと送り込む。そして、その魔手が今、レオにも忍び寄る……。世界を震撼させた『チャイルド44』の続編、怒涛の登場!<上巻>
レオに突きつけられた要求は苛酷をきわめた。愛する家族を救うべく、彼は極寒の収容所に潜入して、自ら投獄した元司祭を奪還する。だが、彼を待っていたのは裏切りでしかなかった。絶望の淵に立たされ、敵に翻弄されながらも、レオは愛妻ライーサを伴って、ハンガリー動乱の危機が迫るブタペストへ――。国家の威信と個人の尊厳が火花を散らした末にもたらされる復讐の真実とは?<上巻>

「このミステリーがすごい! 2009年版」第1位、週刊文春ミステリーベスト10 第2位だった前作「チャイルド44」 上下巻 (新潮文庫) につづく第2作。(前作の感想はこちら
この作品は、「このミステリーがすごい! 2010年版」の第6位、週刊文春ミステリーベスト10 第4位です。
前作は圧政下におけるシリアル・キラーの捜査物であったのに対し、今回は冒険・アクション物のスタイルをとっています。
時代はスターリンからフルシチョフへ変わったものの、ソヴィエト社会の厳しい状況は変わっていません。むしろ混乱が増幅されているところも。この背景をうまく取り込んでいます。
過去の所業が原因で復讐のターゲットにされるレオの文字通りの苦闘を描いているのですが、養女ゾーヤとの関係でも苦闘していて、さらにはこの2つが絡み合ってしまう展開となり...レオにはとってもつらい状況。
地下道での戦い、船での戦い、収容所での戦い、そして市街戦とアクションシーンも連続してさまざまなパターンで用意されています。
前作は事件の捜査そのものがつらいのではなく、体制のせいで捜査をすることがつらい、捜査を続けることでつらい状況に陥ってしまう、という事件の外側がつらい設定でしたが、今回は事件、主人公レオの行動そのものが苛酷でつらいもので、暗い、重苦しいところは同じでも、読者に与える印象は異なってきます。
もちろん、時代背景・体制の部分もきちんと書かれていて、レオを巻き込んでいくメカニズム(?)にもミステリらしく(?)目配りされています。
作者が前作のラストで投げかけた一筋の光明の行く末をこの作品は扱っていますが、光をレオが守れるかどうかハラハラしながら、十分に満足して読み終わりました。
個人的には、前作よりもこちらの方がおもしろかったです。
第3作「エージェント6 (シックス)」 〈上〉 〈下〉 (新潮文庫) がすでに翻訳されています。読むのがとても楽しみです。

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チャイルド44 [海外の作家 さ行]


チャイルド44 上巻 (新潮文庫)チャイルド44 下巻 (新潮文庫)チャイルド44 下巻 (新潮文庫)
  • 作者: トム・ロブ スミス
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2008/08/28
  • メディア: 文庫


<背表紙あらすじ>
スターリン体制下のソ連。国家保安省の敏腕捜査官レオ・デミドフは、あるスパイ容疑者の拘束に成功する。だが、この機に乗じた狡猾な副官の計略にはまり、妻ともども片田舎の民警へと追放される。そこで発見された惨殺体の状況は、かつて彼が事故と遺族を説得した少年の遺体に酷似していた……。ソ連に実在した大量殺人犯に着想を得て、世界を震撼させた超新星の鮮烈なデビュー作。 <上巻>
少年少女が際限なく殺されてゆく。どの遺体にも共通の“しるし”を残して――。知的障害者、窃盗犯、レイプ犯と、国家から不要と断じられた者たちがそれぞれの容疑者として捕縛され、いとも簡単に処刑される。国家の威信とは? 組織の規律とは? 個人の尊厳とは? そして家族の絆とは? 葛藤を封じ込め、愛する者たちのすべてを危険にさらしながら、レオは真犯人に肉迫してゆく。<下巻>

「このミステリーがすごい! 2009年版」第1位、週刊文春ミステリーベスト10第2位で、2008年CWA賞(イアン・フレミング・スチール・ダガー賞 [The Ian Fleming Steel Dagger for best thriller] )を受賞しています。
「子供たちは森に消えた」 (ハヤカワ文庫NF)が扱っている事件を題材にしたミステリ。
社会の不行跡である犯罪は貧困と欠乏がなくなれば消滅する。新しい社会は今も発展しており、まだ完成はしていないが、この社会には犯罪は存在しない。--このテーゼに基づいて、存在を否定される児童連続殺人。
主人公レオも最初は体制側で、被害者の一人の父親である部下のヒョードルに対して、殺人などではない、事故だったのだ、と説得する側です。主人公レオが体制側から滑り落ち特権を奪われ、真実に目覚め(?)、体制と闘いながら、連続殺人犯を捕まえる、というのが骨子です
したがって、物語のトーンは非常に暗いものとなります。扱われている事件が児童連続殺人ですから、なお一層。圧政下の暮らし、ということで想像する嫌な生活を裏付けるようなエピソードも次々に出てきます。恐怖政治、密告社会.... 作者は最後のエピソードに一筋の光明を投げかけたのでしょうが、光が弱い... 全体を通して、救いがなく、重苦しい。肌に合わない人、多いのではないかと思います。
ミステリ的な趣向という観点で見ると、シリアル・キラーの正体・動機にはもうひとひねりほしいところですが(想像のついた読者は結構いると思いますので)、個が全体に奉仕するという建てつけの社会に対し、あくまで個、あまりにも個に起因したシリアル・キラーを対置したところに作者の狙いがあるのでしょう。そこを楽しめるかどうかが評価の分かれ目になりそうな気がします。

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