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ゼロの迎撃 [日本の作家 あ行]


ゼロの迎撃 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

ゼロの迎撃 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

  • 作者: 安生 正
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2015/03/05
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
活発化した梅雨前線の影響で大雨が続く東京を、謎のテロ組織が襲った。自衛隊統合情報部所属の情報官・真下は、テロ組織を率いる人物の居場所を突き止めるべく奔走する。敵の目的もわからず明確な他国の侵略とも断定できない状態では、自衛隊の治安出動はできない。政府が大混乱に陥る中で首相がついに決断を下す――。敵が狙う東京都市機能の弱点とは!? 日本を守るための死闘が始まった。


読了本落穂拾いで、2017年10月に読んだ本です。

「生存者ゼロ」 (宝島社文庫)(感想ページはこちら)の作者安生正の長編第二作です。
先に第三作「ゼロの激震」 (宝島社文庫)感想を先に書いてしまっています。
ちなみに、「生存者ゼロ」感想ページは、このブログのアクセス数ダントツ一位です。


正体不明のテロ組織に襲われる東京。
こういう設定好きなんですよ。
読者には、犯行側ともいうべき朝鮮人民軍のハン大佐の視点のストーリーも提供されるので、親切設計です。

この作品のメインの見どころは、幾重にも考えられたハン大佐の攻撃計画に対して、日本側自衛隊の情報官・真下がどう守るか、という部分にあるのですが、それ以外にも見どころはたくさんあります。

日本には強力な有事法制がないため苦闘する自衛隊、というのはよく言われることで、本書でも国家安全保障会議がかなり緊迫感もって描かれます。
ただ本書では、枚数の制限でもあったのか、あるいは物語が停滞してしまうのを防ぐためか、官僚的な動きであったり、保身的な動きであったりはみられるものの、梶塚首相がかなりの胆力を持つ人物として設定されておりまして、要所要所を切り抜けます。
「よりによってこんなときに」(85ページ)
と触れられているのですが、あと五日で梶塚内閣は総辞職し、総理の地位は後任の民政党総裁に引き継がれることが決まっているというタイミングも、逆に功を奏したのかもしれません。
いざというときに、こういうリーダーに恵まれればよいですねえ。
日本の歴代総理の顔を浮かべてみて、果たしてどういうことになるだろうか、と想像してみるのも......

やはり梶塚首相が出動する自衛隊員に向けてメッセージを発するところが、一つのクライマックスですね。(338ページあたりから)
「自衛官が持つ英雄的な心とは、死を恐れぬ心ではなく、弱きを守るために自らの恐怖心を克服できる心だ。」(344ページ)
このセリフ、作中に描かれたいくつかのエピソードと呼応する力強いメッセージの象徴かと思いました。

ややネタバレ気味になるのですが、ハン大佐の攻撃の重層構造も素晴らしいですし、最終的に推察される各国の思惑にも強く感心させられました。
(茶木則雄の解説は、かなり先のほうまでネタを割ってしまっており、謎解きミステリではないから、明かしてもよいと思われたのでしょうか? エチケット違反なのではないかと感じました。)


タグ:安生正
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