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インフェルノ [海外の作家 は行]

インフェルノ(上) (角川文庫)

インフェルノ(上) (角川文庫)

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2016/02/25
  • メディア: 文庫

インフェルノ(中) (角川文庫)

インフェルノ(中) (角川文庫)

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2016/02/25
  • メディア: 文庫
インフェルノ(下) (角川文庫)

インフェルノ(下) (角川文庫)

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2016/02/25
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
「地獄」。そこは“影”──生と死の狭間にとらわれた肉体なき魂──が集まる世界。目覚めたラングドン教授は、自分がフィレンツェの病院の一室にいることを知り、愕然とした。ここ数日の記憶がない。動揺するラングドン、そこに何者かによる銃撃が。誰かが自分を殺そうとしている? 医師シエナ・ブルックスの手を借り、病院から逃げ出したラングドンは、ダンテの『神曲』の“地獄篇”に事件の手がかりがあると気付くが──。<上巻>
医師シエナとともにヴェッキオ宮殿に向かったラングドン教授は、ダンテのデスマスクを盗み出す不審人物の監視カメラ映像を見て、驚愕する。一方、デスマスクの所有者で大富豪のゾブリストは、壮大な野望の持ち主だった。彼は「人類は滅亡の危機に瀕している」と主張し、人口問題の過激な解決案を繰り広げ、WHO“世界保健機関”と対立していた。デスマスクに仕込まれた暗号には、恐ろしい野望が隠されていた──。<中巻>
人類の未来を永久に変えてしまう、恐るべきゾブリストの野望──。破壊的な「何か」は既に世界のどこかに仕掛けられた。WHO事務局長シンスキーと合流したラングドンは、目に見えぬ敵を追ってサン・マルコ大聖堂からイスタンブールへと飛ぶ。しかし輸送機の中でラングドンに告げられたのは、驚愕の事実だった! ダンテの“地獄篇”に込められた暗号を解読し、世界を破滅から救え!怒涛のクライマックス!<下巻>


2023年5月に読んだ7作目(7~9冊目)の本です。


「天使と悪魔」 (上) (中) (下) (角川文庫)
「ダ・ヴィンチ・コード」(上) (中) (下) (角川文庫)
「ロスト・シンボル」 (上) (中) (下) (角川文庫)(感想ページはこちら
に続く、ラングドン・シリーズ第4作です。

トム・ハンクス主演の映画を先に観ています(感想ページはこちら)。

今回原作を読んで、映画が原作に基本的に忠実に作られていることがわかって驚きました。
各巻薄いことは薄いのですが、それでも文庫で上中下巻あるものを、映画の長さに押し込めるとは......すごい手腕ですね。
逆に、原作がスカスカなのかというと、特段そういうわけでもなく、映画のほうの感想では「専門知識があまり活躍しない」と述べましたが、小説という形態だとそこが書き込まれています。

今回は、ダンテの「神曲」ということで、なじみがあまりにも......(こちらに教養がないだけですが)
積み重ねられる蘊蓄もただただ「ああ、そうですか」と受け止めるだけしかできないのですが、フィレンツェやベネツィアの観光名所を巡っていく目まぐるしくスピーディーな逃走・追跡劇の小休止として機能しているのかもしれません。

扱われているのは、いわゆる「人口論」で、いかにも古めかしく、ヨーロッパの古い街並みに合っているのかも。
「人類は、抑制されないかぎり、疫病のごとく、癌のごとくふるまう。」(258ページ)
と考える悪者、ちょくちょく出てきますよね。

映画とはラストが違う(映画の記憶があいまいで......)のですが、原作の方では前作「ロスト・シンボル」同様に、作者の想像の翼は現実からちょっと飛躍したところにまで伸ばされています。

それにしても、ラングドンは敵味方が入り乱れる中、手がかりをたどって一種の宝探し(到底宝とは言えませんが)を演じるわけですが、今回の敵がどうして手がかりをばらまいているのか、ちっとも理由がわかりません。
狙いは明らかであるし、それが正しいことと確信しているのだから、阻止されてしまうような手がかりをばらまいたりせず、黙って実行に移せばよいと思うのですが...自己顕示欲というのでは説明しきれない大きな問題のように思えました。


<蛇足1>
「難なく読めた── ”SALIGIA” と。
 ──略──
 『七つの大罪をキリスト教徒にそらんじさせる目的で、中世にヴァチカンが考え出したラテン語だよ。”サリギア(SALIGIA)” というのは頭字語で、スペルビア(superbia)、アワリティア、ルクスリア、インウィディア、グラ、イラ、アケディアの頭文字をそれぞれとっている』 
 ──略──『高慢、貪欲、邪淫、嫉妬、貪食、憤怒、怠惰』」(上巻104ページ) 

<蛇足2>
「いちばん上の濠に視線をもどし、十の濠に書かれた文字を上から下へ順に読んでいった。
  C……A……T……R……O……V……A……C……E……R」
『カトリヴァサー?』ラングドンは言った。『イタリア語だろうか?』」(上巻118ページ)
この段階では、CATROVERCER という語にラングドンはまったく心当たりはなさそうです。しかし、
「CATROVERCER。この十の文字は、美術界有数の謎──数世紀にわたって解明されていない謎──の中核をなしている。一五六三年、フィレンツェの名高いヴェッキオ宮殿で、壁の高い位置にこの十文字を用いたメッセージが記された。
 ──略──
 ラングドンにとって、その暗号は慣れ親しんだものだった」(上巻171ページ)
となっていて、あれ? となりました。意味はわからないにせよ、単語そのものは馴染みのあるものなのですから。
上巻118ページの段階では記憶喪失がまだ抜けきっていなかったということでしょうか?

<蛇足3>
「サンドロ・ボッティチェルリによるこの地図こそ、ダンテの描いた地獄を最も正確に再現しています。」(上巻154ページ)
このイタリアの画家は、ボッティチェリだと思っていましたが、この本ではボッティチェルリと表記されています。
ボッティチェリは、ボッティチェッリとも書かれることがあり、スペルを見ると "Sandro Botticelli" でうから、llの部分の発音がポイントですね。

<蛇足4>
「メディチ家。
 その名前はまさにフィレンツェの象徴になっている。三世紀に及ぶ統治時代に、計り知れない富と影響力を持ったメディチ家は、四人の教皇とふたりのフランス王妃、さらにはヨーロッパ最大の金融機関をも生み出した。今日に至っても、銀行はメディチ家が考案した会計方法を用いている──貸方と借方からなる複式簿記だ。」(上巻172ページ)
複式簿記はルカ・パチョーリにより考え出されたと思っていたのですが、違うのですね。
ルカ・パチョーリは複式簿記を学術的に説明した人だったようです。
ただ、wikipekia を見ただけですが、メディチ家が銀行に導入する以前より、複式簿記はあったようですね。

<蛇足5>
「フィレンツェ共和国の威厳ある政庁舎として建てられたこの宮殿を訪れる者は、雄々しい彫像の数々に圧倒される。アンマナーティの作である、四頭の海の馬を踏みしめるたくましいネプチューンの裸像は、フィレンツェによる海の支配の象徴だ。宮殿の入口では、ミケランジェロの<ダヴィデ像>──まちがいなく世界で最も称賛されている男性裸像──の複製が、栄光に満ちた立ち姿を披露している。<ダヴィデ像>の横には<ヘラクレスとカークス像>──さらにふたりの裸の大男を刻んだ像──があり、ネプチューンの噴水に配されたいくつものサテュロスの像と合わせて、総数一ダースを超える露出したペニスが観光客を出迎えることになる。」(上巻260ページ)
ヴェッキオ宮殿についての説明で、たしかにその通りなのでしょうが、言い方(笑)。

<蛇足6>
「昔からの習わしによると、ベアトリーチェへの祈りの手紙をこの籠に入れると、利益(りやく)があるという──相手にもっと愛されたり、真実の恋が見つかったり、死んだ恋人を忘れる強さが身についたりするらしい。」(中巻107ページ)
ダンテ教会として知られるサンタ・マルゲリータ・ディ・チェルキ教会の場面です。
御利益(ごりやく)という使い方しか触れたことがない気がしますが、ここでは利益(りやく)。

<蛇足7>
「さわやかな海風に、駅の外の露店で売られているホワイトピザの香りが混じっている。」(中巻247ページ)
ホワイトソースをかけたピザをホワイトピザというのですね。

<蛇足8>
サン・シメオーネ・ピッコロ教会の特徴的な緑青の丸屋根が高く見える。──略──勾配がとりわけ急なドームと円形の内陣はビザンチン様式であり、円柱が並ぶ大理石のプロナオスは明らかにローマのパンテオンの入口を模したギリシャ古典様式だ。」(下巻247ページ)
プロナオスがわからず調べました。



原題:Inferno
作者:Dan Brown
刊行:2013年
翻訳:越前敏弥





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