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精神病院の殺人 [海外の作家 ら行]


精神病院の殺人 (論創海外ミステリ)

精神病院の殺人 (論創海外ミステリ)

  • 出版社/メーカー: 論創社
  • 発売日: 2018/12/05
  • メディア: 単行本



2023年8月に読んだ3冊目の本。
ジョナサン・ラティマーの「精神病院の殺人」 (論創海外ミステリ)
単行本です。論創海外ミステリ221

作者、ジョナサン・ラティマーの作品を読むのは
「赤き死の香り」 (論創海外ミステリ)(感想ページはこちら)、
「サンダルウッドは死の香り」 (論創海外ミステリ217)(感想ページはこちら
についで3冊目ですが、この「精神病院の殺人」がデビュー作だったようです。

探偵役は私立探偵ビル・クレインで、酔いどれでそれなりに腕っぷしも強い(はず)なので、いかにもハードボイルドに出てきそうな探偵役なのですが、内容は本格ミステリだと思いました。

酔いどれ探偵ビル・クレインが、精神病院に潜入捜査する、というのが入り口で、そこで連続殺人の幕が開きます。
入院の手続きのときに医者に職業を聞かれて、
「実は、おれは名探偵なんだ」(34ページ)
と答えるのが笑えますし、拘禁棟に連れられようとするときには
「『おれを閉じ込めるなんて、大きなまちがいだ』彼は真剣に訴えた。『おれはC・オーギュスト・デュパンなんだぞ』」(38ページ)
と言ったりもします。デュパンですよ、デュパン。
ハードボイルドを目指しているなら、ここはもっと違う名前になりそうです。

事件も、鎖されたような精神病院を舞台に、限られた登場人物内で起こる連続殺人、ですから、いかにも本格ミステリ。
金庫の盗難騒ぎ(?) から始まって、精神病院ならではの騒ぎを繰り返しながら(という表現は、コンプライアンス的にアウトな気がしますが)酔いどれ探偵が真相を突き止めていく。
騒がしいやりとりや出来事にくらまされるところは多々ありながら、しっかり手がかりは撒かれていますし、ビル・クレインも酔っ払っていてもしっかりその手がかりを回収していきます。
密室状況的な謎も、きわめて常識的な解決を提示してみせるなど、なかなか小技が効いています。
それに勘ぐりすぎかもしれませんが、ハードボイルド調の要素すら一種のミスディレクションとして機能しているように思いました。


ジョナサン・ラティマーの旧訳作品たちを復刊あるいは改訳してくれないでしょうか?


<蛇足1>
「テニスコートと、クロケットのフィールドと、ゴルフのパッティング用のグリーンがあって」(18ページ)
クロケットとあるのは、croquet のことだと思われます(クリケットのタイポではないでしょう)。
日本語では普通クロッケー(あるいはクロケー)と呼ばれているものでしょうね。

<蛇足2>
「八十万ドルの債権入り貸金庫の鍵と四十万ドルの債権が入った手提げ金庫の行方」(325ページ)
笹川吉晴による解説ですが、ここは債権ではなく債券ですね。
本文ではちゃんと債券になっているんですけどね。




原題:Murder in the Madhouse
作者:Jonathan Latimer
刊行:1935年
翻訳:福森典子









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