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赤き死の香り [海外の作家 ら行]


赤き死の香り (論創海外ミステリ)

赤き死の香り (論創海外ミステリ)

  • 作者: ジョナサン ラティマー
  • 出版社/メーカー: 論創社
  • 発売日: 2008/06
  • メディア: 単行本


<表紙袖あらすじ>
富豪一族に相次いで起こる変死事件。現場に残されたクチナシの香りを追って、酒と女に弱い私立探偵ビル・クレインが謎に挑む。古典的名作『モルグの女』のジョナサン・ラティマーによる、ハードボイルド+本格ミステリの秀作。ビル・クレイン・シリーズ最終作。

単行本です。
作者、ジョナサン・ラティマーの作品を読むのはこれが初めてです。
本書に登場する探偵ビル・クレインもので既訳の「処刑6日前」 (創元推理文庫)「モルグの女」 (Hayakawa pocket mystery books)も読んでいません。ノン・シリーズの「シカゴの事件記者」 (創元推理文庫)も読んでいません。
帯に
「『モルグの女』のラティマーによる
ハードボイルド+本格ミステリ
酔いどれ探偵ビル・クレイン登場」
と書いてあって、
「あら、本格ミステリっぽい作家だったんだ」と意外な気分で購入しました。典型的なハードボイルド作家だと思い込んでいたんですよね。
で、読み始めるとすぐに違和感が。
クレインと事務所長の姪アンとが夫婦のふりをしているところに泥棒が入ってくる、という冒頭のシーンからして、ハードボイルドで連想する緊迫感というよりは、ユーモラス。ビルとアンのやりとりは掛け合い漫才みたい。
そう、これはハードボイルドはハードボイルドでも、渋いハードボイルドではなく、軽ハードボイルドなんですね。
やった! 軽ハードボイルド、大好きです!
なによりやはり、酔いどれ探偵というだけあって、すぐにアルコールに向おうとする陽気なクレインと、わんさか登場する美女たちとのやりとりは、にやりとできます。ナイトクラブで急にダンスすることになるシーンとか、いかにもそれらしい。
アンとの微妙な距離感もまた、定番中の定番で、楽しめます。
本格ミステリ、とされている部分はちょっとぐだぐだな感じがしますが、意外な犯人を創出しようとしているだけでよしとしましょう。
ラスト近くで「あんたは単なる馬鹿かと思ってたわ」(301ページ)とビル・クレインはある登場人物から言われるのですが、うーん、行き当たりばったりで真相にたどり着いたようなもので、そう言われてもある意味やむなし(笑)。本格ミステリ的な名探偵とはちょっとずれた存在ですね。
でも、そこも軽ハードボイルドなら当然のことで、この作品を無理やり本格ミステリとして売り出す必要はないと思います。
それよりも、ちゃんと軽ハードボイルドであるということを明確に打ち出しておいて欲しかった。
それで十分楽しいんだから。
「処刑6日前」 「モルグの女」 もぜひ読んでみたいので、復刊希望です!


原題:Red Gardenias
作者:Jonathan Latimer
刊行:1939年
翻訳:稲見佳代子




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