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家族パズル [日本の作家 か行]


家族パズル

家族パズル

  • 作者: 黒田 研二
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/12/12
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


2023年8月に読んだ2冊目の本です。
黒田研二の「家族パズル」(講談社)
2022年12月に文庫化されていますが、「神様の思惑」 (講談社文庫)へと改題されています。

神様の思惑 (講談社文庫)

神様の思惑 (講談社文庫)

  • 作者: 黒田 研二
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2022/12/15
  • メディア: 文庫

5話収録の短編集で、帯に各話の紹介があるので、それを引用しておきます。

悲しみの裏側にそっと隠された深い「家族愛」5つの物語
「はだしの親父」父は亡くなる直前、雨降る病院の庭をなぜ靴を脱ぎ歩いたのか?
「神様の思惑」自殺志願の少年の命を救った優しいホームレスは殺人者だった
「タトウの伝言」大金が必要となった青年は母を騙して、父の形見である絵画を狙うが。
「我が家の序列」リストラ中年と迷い犬の新生活は、奇妙な出来事ばかりの日々で。
「言霊の亡霊」25年も男を苦しめた母の一言。しかし記憶を辿るとある違和感が。

読み終わった感想は、これ、黒田研二の作品? というものでした。
明らかに作風が違う......(笑)。
引用した帯のコメントにあるように「家族愛」の物語だったからです。
わりとトリッキーであることにいい意味でこだわっているのが黒田研二、という印象なのですが、この作品ではトリッキーであることよりも「家族愛」を描くことを重視しているようです。
もちろん、トリッキーな部分もちりばめてあるのですが、むしろ抑え気味な印象。
全体を貫くテーマとして「家族愛」があると知ってしまうと、せっかくのトリッキーな部分にも見当がついてしまう傾向があるのですが、あえてその道を選んでいると思われます。

「はだしの親父」は親父の死を扱ってはいるものの、テイストは日常の謎。ミステリとしてみた場合伏線不足かもしれませんが、「家族愛」であればこの流れが自然かと。

「神様の思惑」は文庫化の際に表題作に選ばれた作品で、ミステリ的にはいちばん意外な解決(動機?)を扱っています。不自然というか、理解を超えた感情を扱っているのですが、これはこれでよいのだ、という気がしました。

「タトウの伝言」は、いつもだと<蛇足>欄を作ってコメントする点があったのですが、それも作者の狙いの一部だったことがわかって少々びっくり。綱渡りのように技巧を駆使した作品ですが、個人的には綱から落ちてしまっている気がしてなりません。

「我が家の序列」が中では一番の好みです。ボンドという犬をめぐる真相には割と早い段階で見当がつくのですが、犬に主と認めさせる主人公の姿をしっかり楽しむことができました。

「言霊の亡霊」はこれまた綱渡りのような技巧の作品です。ただ、過去の回想というのは(作者に)都合よく忘れたり、思い出したりするので、個人的な感想は厳しくなってしまいます。


黒田研二の作品としては異色作である気がしますが、同時に一般の方には入りやすくなった気もします。
これをきっかけに、どんどん新作が出るとうれしいのですが。



タグ:黒田研二
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