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虚像の道化師 [日本の作家 東野圭吾]


虚像の道化師 (文春文庫)

虚像の道化師 (文春文庫)

  • 作者: 東野 圭吾
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2015/03/10
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
ビル5階にある新興宗教の道場から、信者の男が転落死した。男は何かから逃れるように勝手に窓から飛び降りた様子だったが、教祖は自分が念を送って落としたと自首してきた。教祖は本当にその力を持っているのか、そして湯川はからくりを見破ることができるのか(「幻惑す」)。ボリューム満点、7編収録の文庫オリジナル編集。


ガリレオ・シリーズ第7弾。
もともと単行本のときには、
「虚像の道化師 ガリレオ 7」
「禁断の魔術 ガリレオ8」
と2冊の短編集だったのを再編集し、「猛射つ」以外の作品を文庫版の「虚像の道化師」 (文春文庫)に収録、「猛射つ」は長編化して文庫版の「禁断の魔術」 (文春文庫)にした、ということのようです。
ああ、ややこしい。

ということで、この「虚像の道化師」には
「幻惑す まどわす」
「透視す みとおす」
「心聴る きこえる」
「曲球る まがる」
「念波る おくる」
「偽装う よそおう」
「演技る えんじる」
の7編収録です。
もっとも目次では、第一話、第二話、ではなく、第一章、第二章、となっていて長編のような形で掲げられていますが、各話につながりがあるわけではなく、短編集ですね。

このシリーズいわゆる物理トリックの限界に挑んでいる、という側面もありますが、そして最初の頃はそういう興味が強かったように思うのですが、最近では、物理トリックをどう物語に組み込むか、あるいは、物理トリックでどう物語を盛り立てるか、に焦点が当たっているような気がします。
たとえば、「心聴る きこえる」の幻聴(?)トリック、最後に作者注として「二〇一二年五月時点で実用化は確認されていません」と書かれていまして、その点では不可能なトリック、あるいは実際にはない技術を用いたトリックとして、アンフェアという非難を受けかねないトリックではありますが、物語にきれいに溶け込んでいるのであまり不満を感じません。
「透視す みとおす」の透視トリックも、そんなにうまくいくかなぁ、と思わないでもないですが、このトリックをきっかけとして登場人物間の関係に新しい光があたるので、これはこれであり、と思えてしまいます。
そのほかの作品にも簡単に触れておくと、
「幻惑す まどわす」
教団教祖の念の正体(?) はちょっと笑えてしまうのも、物理トリックならではでしょうか。
「曲球る まがる」
物理トリックらしいものは登場しないのですが、物理現象が謎解きに貢献します。
むしろピッチャーの投球をガリレオが解明しようとするのがおもしろいですね。
「念波る おくる」
双子がテレパシーを使う、という題材。
こういうのって、理に落ちるとおもしろくなくなりそうなのですが、そして理に落ちた着地を見せるのですが、謎をあばく方向に使っている点がよかったのかな、と思いました。
「偽装う よそおう」
物理トリックではなく、事件の解明を科学的に行っていく、という展開になっています。
しかし、湯川のキャラクター、ずいぶん変わってきていませんか!?
「演技る えんじる」
物理トリック、ではないですね、この作品で使われているトリックは。
ただ、一般人でも思いつきそうな、でもそれなりに凝ったトリックになっていて、個人的にお気に入りのトリックです。

全編を通して、若干のネタバレにはなりますが、事件の犯人以外の人物がトリックを使うという設定がちらほらあるのが気になりました。トリックにもいろいろな使いかたがある、ということですね。



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