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謎解きはディナーのあとで3 [日本の作家 東川篤哉]

謎解きはディナーのあとで 3 (小学館文庫)

謎解きはディナーのあとで 3 (小学館文庫)

  • 作者: 東川 篤哉
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2015/01/05
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
恋ヶ窪の住宅街に建つ屋敷の寝屋で、老人の死体が発見される。枕元にあったのは、ペットボトルと湯呑み。死の直前には、飼い猫が行方不明になっていた。ペットロスによる自殺なのか、他殺なのか――事件は迷宮入りしていく。宝生邸に眠る秘宝が怪盗に狙われる、体中から装飾品を奪われた女性の変死体が見つかるなど、相次ぐ難事件に麗子はピンチ。そしてついに麗子と執事の影山、風祭警部の関係にも変化が訪れて……!? 令嬢刑事と毒舌執事コンビの国民的ユーモアミステリ第三弾。文庫版特典として、『名探偵コナン』とのコラボ短編小説『探偵たちの饗宴』収録。


「謎解きはディナーのあとで」 (小学館文庫)(ブログの感想ページへのリンクはこちら
「謎解きはディナーのあとで (2)」 (小学館文庫)
に続くシリーズ第3弾です。
前作「謎解きはディナーのあとで (2)」は2017年6月に読んでいるのですが、感想は書けずじまいになっています。

この「謎解きはディナーのあとで 3」 (小学館文庫)は、
「犯人に毒を与えないでください」
「この川で溺れないでください」
「怪盗からの挑戦状でございます」
「殺人には自転車をご利用ください」
「彼女は何を奪われたのでございますか」
「さよならはディナーのあとで」
「探偵たちの饗宴」
の7編収録です。最後の「探偵たちの饗宴」はボーナストラックという感じなので、六話収録+おまけ、といういい方がふさわしいのかもしれません。

さて、このシリーズは探偵役である執事の影山のキャラクターがポイントで、その影山が吐く、主人であるはずのお嬢様、麗子に対する暴言(?) が売りです。
今回も決め台詞を各短編から抜き出してみます。

「なぜ、お嬢様は数多くの事件を経験しながら、一ミリも進歩なさらないのでございますか? ひょっとして、わざとでございますか?」
「お嬢様はわたしくと比べて目だけはよろしいものと思っておりましたが、どうやら見当違いでございました。目の前にあるヒントにまるでお気づきにならないとは……わたくしお嬢様には心の底からガッカリでございます」
「お嬢様、いま少しばかり脳みそをご使用になられてはいかがでございますか?」
「どーでもいいアリバイ崩しに血道を上げる警部も警部ですが、それにお付き合いするお嬢様も風祭警部とどっこいどっこいでございますね」
「この程度の謎で頭を悩ませておいでとは、お嬢様は本当に役立たずでございますね」
「失礼ながら、お嬢様は無駄にディナーをお召し上がりになっていらっしゃいます」

これでお分かりになります通り、決め台詞の切れ味がすっかり鈍っています。
この影山のせりふが日本語としておかしいことは相変わらずですが、その上切れ味まで鈍ってしまっては......。
敬語をちゃんと使えない、という執事、だけでかなり興醒めなのに。
敬語が怪しい点では、麗子に加えて話題に麗子の父が出てくると顕著です。
「お嬢様がそのような軽薄な振る舞いをなさったと知れば、きっと旦那様が嘆き悲しむに違いございません」(272ページ)

まあ、このシリーズにこのような点を指摘しても詮無いことですので、ミステリとしての側面に目を向けることにしましょう。

「犯人に毒を与えないでください」では、小味ではありますが、行方不明の猫と現場にあったペットボトルを絡めて推論を立てるところがおもしろく、特に同じ手がかりから2つの切り口を導き出すところは冴えていますね。

「この川で溺れないでください」は、死体移動したことがあからさまな状況から(なにしろ風祭警部すら気づくくらいです)どう捌くのかな、と思っていたら、なかなか気が利いた処理をしています。花見シーズンらしい手がかりとともに楽しめます。

「怪盗からの挑戦状でございます」は、怪盗に宝生家の秘宝が狙われます。秘宝が「金の豚」「銀の豚」というのが笑えますが、ちょっとしたミスディレクションが仕掛けてあるのがポイントでしょうか。

「殺人には自転車をご利用ください」は、子供用の椅子に座らされていた被害者、という謎が魅力的ですね。自転車を使ってアリバイ崩し! としてストーリーが進んでいくのをさらっとうまく処理して見せたところが面白かったです。

「彼女は何を奪われたのでございますか」は、被害者が身につけていた小物類を全て奪われているという状況で、犯人の狙いは何だったのか、という謎が味があります。なかなかおもしろい発想で仕立てられているのですが、ちょっと無理があるのが残念です。

本編最後の「さよならはディナーのあとで」は、空き巣狙いが家人に見つかり殺人に及んだか、と思われた資産家殺しを扱っていますが、おおかたの読者が想定する展開となり、かなり既視感(既読観)ある解決になるのが致命的です。とはいえ、凶器の木刀を出発点とする手がかり(アイデア)は目の付け所がいいな、と思いましたし、なにより本編は、あの宝生警部に関して驚愕のラストが訪れますので、まあ、事件の方なんかどうでもいいのでしょう。
このあとシリーズ新刊は出ていません。

おまけ編の「探偵たちの饗宴」は、名探偵コナンとの共演という趣向ですが、ダイイング・メッセージとされる「カムサハムニダ」には大笑いさせてもらいました。

東川篤哉は、このシリーズが終わったとしても、ほかに数多くのシリーズを抱えていて、新刊はじゃんじゃん出ています。
ミステリと笑いのバランスの取れた作品に出会えるのを楽しみにしています。




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