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誘拐犯の不思議 [日本の作家 な行]

誘拐犯の不思議 (光文社文庫)

誘拐犯の不思議 (光文社文庫)

  • 作者: 二階堂 黎人
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2013/01/10
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
「心霊写真家」が取り出した三枚の写真。それを見た二之宮彩子は、十ヵ月前に自らが誘拐された事件の顛末を語り始める。写真に写る男が、犯人の一人だというのだ。彼女は無事救出されたが、身代金は消え、事件は未解決のまま。捜査に乗り出した彩子の恋人・水乃サトルの前に、完璧に構築されたアリバイが立ちはだかる。名探偵と誘拐犯の息づまる対決! 長編本格推理。


7月に読んだ8冊目の本です。
「智天使(ケルビム)の不思議」 (光文社文庫)(感想ページはこちら)に続く水乃サトルシリーズです。

水乃サトルが探偵役を務めるシリーズには、大学生時代を描く「〇〇〇の不思議」というタイトルのシリーズと、社会時になってからを描く「〇〇〇マジック」というタイトルのシリーズの2つの流れがあり、本作品は学生時代を描いたもの、となります。
サトルに婚約者がいますよ!
しかも彼女が事件に巻き込まれる、というのですから、一大事です。

大仰であること、時代がかっていることが特徴である二階堂蘭子シリーズほどではないものの、やはり二階堂黎人の作品は、どことなく泥臭い感じがします。
水乃サトルも大学生というのに、とても爺臭い。
時代設定が1987年ということで、今から30年以上前なんですが、もっともっとはるか昔のような感じがします。

前作「智天使(ケルビム)の不思議」は、東野圭吾の「容疑者Xの献身」 (文春文庫)を意識して書かれた、ある意味異色作だったわけで、今回は通常運転に戻っているはずなんですが、どことなく「容疑者Xの献身」の影響、というほどでもないですね、影を感じてしまいました。

扱われているのはアリバイトリックなのですが、うーん、どうでしょうか。
大きなトリックが二つ盛り込まれているのですが、二つとも既視感あり、です。
二階堂黎人にはトリックメーカーとして期待するところ大なので、既視感が強いのが残念です。
(特に一つはかなり使い古されたトリックです)

このシリーズはこのあと出ていないようです。
社会人になった水乃サトルの作品で未読がいくつかありますので、そちらを読み進めます。


<蛇足1>
「いいえ、そのことは後で説明します」
と、サトルはなぜか口を濁し(425ページ)
「口を濁す」ですか。
よくある間違いですが、「言葉を濁す」ですよね......

<蛇足2>
本作品に、ホームレスが出てきます。
確認できていないのですが、この作品の舞台となっている1987年当時「ホームレス」という語は一般的ではなかったのではないかと思います。まだ浮浪者と呼んでいた頃ではないでしょうか。

<蛇足3>
ネタバレにつき伏字だらけになりますが......
「-略-シールなども、-略-綺麗に剥がして、-略-取り替えました。」(424ページ)
さらっと書いてあるのですが、貼ってあるシールを取り替える、貼り替えるのって、かなり難しいと思うんですよね。特に貼り替えたことがばれないようにするとなると。
どうやったんでしょうね?




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