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赤い月、廃駅の上に [日本の作家 有栖川有栖]


赤い月、廃駅の上に (角川文庫)

赤い月、廃駅の上に (角川文庫)

  • 作者: 有栖川 有栖
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2012/09/25
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
廃線跡、捨てられた駅舎。赤い月が昇る夜、何かが起きる――。17歳の不登校の少年が一人旅で訪れた町はずれの廃駅。ライターの男と待合室で一夜を明かすことになるが、深夜、来るはずのない列車が不気味な何かを乗せて到着し…。(表題作) 温泉地へ向かう一見普通の列車。だが、梢子は車内で会うはずのない懐かしい人々に再会する。その恐ろしい意味とは。(黒い車掌) 鉄道が垣間見せる異界の姿。著者新境地のテツ怪談!


2021年11月に読んだ7冊目の本です。
有栖川有栖といえばロジックで魅了する本格ミステリの雄ですが、この作品は怪談集。
引用したあらすじによれば、テツ怪談。鉄道の絡む怪談を集めたものですね。
収録作品は以下の10作。

夢の国行き列車
密林の奥へ
テツの百物語
貴婦人にハンカチを
黒い車掌
海原にて
シグナルの宵
最果ての鉄橋
赤い月、廃駅の上に
途中下車

怪談といっても心底ぞっとするというよりは、奇談、奇譚と呼びたくなるようなテイストの作品が多いかな、という印象を受けました。

表題作である「赤い月、廃駅の上に」は廃駅を扱っていますが、同時に「鉄道忌避伝説」が取り上げられています。
町の中心にあるべき駅が、市街地から離れているケースがままあるのは地元の人が鉄道が来ることを拒んだからだ、という説ですが、作中で「確たる記録がない」「単なる風説みたいなもの」と明言されています。解説でも小池滋さんが敷衍しています。
個人的に「鉄道忌避」説は納得感があると思って信じていたので、認識を改めました。

集中で一番好きなのは「密林の奥へ」です。
この作品の雰囲気、大好きです。
こういうのもっと読みたいですね。

ファンの方ならずいぶん前からご存じだったのかもしれませんが、有栖川有栖の新たな一面を発見した気分でうれしくなりました。





<蛇足>
「大型連休の真ん中に、ぽつんと一つだけある出勤日なのだ。課員はみんな、定刻きっかりに退社するに違いない。親会社の銀行はもちろん、取引先も多くは休んでいる。」(8ページ)
連休中の出勤日とは大変だな、と主人公に同情しながら読みました。祝日でも休めない業種の方ということでしょう(銀行が休んでいるということは、土日あるいは祝日ということになります)。
続けて
「いつもの時間に家を出た。ふだんより人通りは少なく、駅へと歩く勤め人たちの顔には気のせいか、無粋なカレンダーへの恨みがにじんでいるようだ。」
とあります。
すると祝日ではありませんね。祝日なら「無粋なカレンダー」とはならないでしょうから。
とするとこの作品「夢の国行き列車」は土曜日で幕を開けたということですね、きっと。




タグ:有栖川有栖
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