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スープ屋しずくの謎解き朝ごはん [日本の作家 た行]


スープ屋しずくの謎解き朝ごはん (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

スープ屋しずくの謎解き朝ごはん (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

  • 作者: 友井 羊
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2014/11/07
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
店主の手作りスープが自慢のスープ屋「しずく」は、早朝にひっそり営業している。早朝出勤の途中に、ぐうぜん店を知ったOLの理恵は、すっかりしずくのスープの虜になる。理恵は最近、職場の対人関係がぎくしゃくし、ポーチの紛失事件も起こり、ストレスから体調を崩しがちに。店主でシェフの麻野は、そんな理恵の悩みを見抜き、ことの真相を解き明かしていく。心温まる連作ミステリー。


2022年1月に読んだ5冊目の本です。
「嘘つきなボン・ファム」
「ヴィーナスは知っている」
「ふくちゃんのダイエット奮闘記」
「日が暮れるまで待って」
「わたしを見過ごさないで」
の5編収録の連作です。

「僕はお父さんを訴えます」 (宝島社文庫)
「ボランティアバスで行こう!」 (宝島社文庫)
と読んで個人的に注目の作家になっていた友井羊なのですが、この「スープ屋しずくの謎解き朝ごはん」 (宝島社文庫 )が出た時には手が伸びませんでした。


というのも、お店がメインの舞台となっていて、お客がもたらずいろんな日常の謎を、店主あるいはバイトなどの店員が解き明かす、というパターンの物語だと思ったからです。
本屋さんにいけば、今、このパターンの物語があふれかえっているような気がします。
まさに有象無象。
一つのジャンルと捉えると、そのすそ野がどんどん広がっている印象で、すそ野が広がるということはそのぶん頂も高くなるはずですが、どうもこのジャンルはこのパターンのきっかけとなった諸シリーズを超える作品はなさそうで、いたずらにすそ野ばかりが広がっているように感じられたからです。
そしてそんなジャンルに友井羊も行ってしまった。
自分勝手な読者として、極めて高慢でわがままな感想ながら、(ミステリとしては)安易な方向に行ったのだな、と思ってしまったのです。

でもまあ、友井羊だし、なにか特色がでているのでは? と思い買ってみました。
このジャンルの常道として連作短編集です。

正直読み進んでも、あまり良い印象は抱きませんでした。
どの話も、まあ言ってしまえばよくある日常の謎で、すらすら読めるけれど特に印象に残ることもなく、読んで失敗だったな、と思ったのです。

ところが!
最終話「わたしを見過ごさないで」で認識を改めました。
これまで出てきたお馴染みのレギュラー登場人物にまつわる謎を解くという段取りで、お店ものの枠内を出るものではないですが、非常に丹念に織り上げられた絵柄に見とれてしまいました。
パーツパーツを見れば決して大きなサプライズをもたらすような手がかりや仕掛けではないのですが、それぞれがきちっと全体に奉仕しています。また、メインとなる仕組みと、それぞれの部分の仕組みが相似形というのか、フラクタルな印象を受けます。
とてもすごいな、と思いました。
このシリーズ好評のようで、続々と続きが出ているのですが、みんなこのレベルのシリーズになっているのでしょうか?
読まなきゃいけないシリーズが増えてしまった。




<蛇足1>
「ブロッコリーは冬が旬で、欧米では栄養宝石の冠という格好良いのか悪いのか悩む名前で呼ばれているらしい。」(87ページ)
知りませんでした。
ネットで調べてみると、Crown of Jewel Nutrition というのですね。
ちょっと長ったらしい訳語なので、「栄養の宝冠」くらいにしておけばいいのにと思いました。

<蛇足2>
ネタばれになるので字の色を変えておきますが、
入れ墨に使用される染料には、電磁波に反応して発熱する種類があるそうです。そのためMRIで検査する前に、タトゥーの有無を聞かれる場合があるのですよ」(116ページ)
これも知りませんでした。
個人的には関係ないのですが、覚えておこうと思いました。


タグ:友井羊
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