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金田一耕助対明智小五郎 [日本の作家 芦辺拓]


金田一耕助VS明智小五郎 (角川文庫)

金田一耕助VS明智小五郎 (角川文庫)

  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2013/03/23
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
昭和12年、大阪。老舗薬種商の鴇屋蛟龍堂(ときやこうりゅうどう)は、元祖と本家に分かれ睨み合うように建っていた。エスカレートする本家・元祖争いで起きた惨事が大事件に発展するなか、若き名探偵・金田一耕助は、トレードマークの雀の巣頭をかきむしりながら真相究明に挑む。もう一人の名探偵・明智小五郎も同地に到着して――!? 豪華二大名探偵の共演作に、本文庫のための書き下ろし「金田一耕助対明智小五郎」を加えた、目眩くパスティーシュワールド。


2022年1月に読んだ4冊目の本です。

「明智小五郎対金田一耕助」
「《ホテル・ミカド》の殺人」
「少年は怪人を夢見る」
「黄昏の怪人たち」
「天幕と銀幕の見える場所」
「屋根裏の乱歩者」
「金田一耕助対明智小五郎」
収録の短編集。

芦辺拓には創元推理文庫から「明智小五郎対金田一耕助」という短編集が出ています。(感想ページはこちら
引用したあらすじに『本文庫のための書き下ろし「金田一耕助対明智小五郎」を加えた』とあることから、この創元推理文庫版にボーナストラックが加わったのだな、と思っていたのですが、そうではないのですね。
冒頭の表題作であった「明智小五郎対金田一耕助」だけが引っ越してきて、創元推理文庫版と区別するためにタイトルを「金田一耕助VS明智小五郎」 に変更し、さらに文庫タイトルに合わせた「金田一耕助VS明智小五郎」という短編を書き下ろして加えたのですね。
まあ、昔読んだ本の内容は忘れてしまうたちなので、そのままでも気づかなかったでしょうが......

なにより角川文庫になったことで、表紙絵が横溝正史でお馴染み杉本一文によるもの、というのが嬉しい。
しかも文庫カバーの背表紙頭部にある著者の分類も、芦辺拓の「あ」ではなく横溝正史の「よ」になっているという凝りよう。ステキです。

ということで冒頭の「明智小五郎対金田一耕助」は再読なのですが、やはりこれは傑作ですね。
他人の創作した名探偵の対決というとどちらに軍配を上げても難しいのですが、ここで芦辺拓が出した答えはすごいですね。

「《ホテル・ミカド》の殺人」にはチャーリー・チャンが登場します。
もう一人、苗字と名前のイニシャルが同じ名探偵が登場するわけですが、この正体はお分かりですね(笑)。

「少年は怪人を夢見る」が誰の物語かはタイトルからわかりますね......

「黄昏の怪人たち」は小林少年大活躍で、文代夫人も登場しますが、いやはや犯人の狙いがすごいです。それにしても芦辺拓さん、ずるいよ。森江春策にねたまれますよ。

「天幕と銀幕の見える場所」は大阪に作られたサーカスを舞台にした少年の冒険物語?なのですが、ペーソスとでもいうのでしょうか、哀愁が漂う作品です。

「屋根裏の乱歩者」は本当にあった話でしょうかね?

「金田一耕助対明智小五郎」は『お化け屋敷の掛け小屋』と嘲笑された名探偵たちの復活ののろしとして描かれています。
金田一耕助が名探偵として「防御率」が低いことも盛り込まれているのには笑ってしまいました。
魔法の杖の一振りの効果がいついつまでも続きますように。




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