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無防備都市 禿鷹II [日本の作家 逢坂剛]


無防備都市 (文春文庫―禿鷹の夜2)

無防備都市 (文春文庫―禿鷹の夜2)

  • 作者: 逢坂 剛
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2005/01/10
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
ヤクザにたかり、弱きはくじく、冷酷非情な刑事が帰って来た! 彼にかかれば、上司もキャリアも関係なし。警察組織を食い荒らし、南米マフィアを翻弄し、さらには関係を持った女性をも平気で見殺しに――。圧倒的存在感で描かれた悪漢、神宮署生活安全特捜班のハゲタカこと禿富鷹秋の非道ぶりをご覧あれ。


逢坂剛の悪徳警官もの禿鷹シリーズ第2作です。
このシリーズは新装版が出ています。
前作「禿鷹の夜」 (文春文庫)(感想ページはこちら)と違い、amazonで旧版のものを見つけたので、上の書影は旧版のものです。
新装版はこちら ↓。
無防備都市 禿鷹II (文春文庫 お 13-20)

無防備都市 禿鷹II (文春文庫 お 13-20)

  • 作者: 逢坂 剛
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2022/08/03
  • メディア: 文庫


主役である禿富が前作比パワーアップしていますね。
前作では、恋人の敵を討つ、というわかりやすい動機を禿鷹は持っていたのですが、それがなくなった今作では禿鷹がどういうやつなのか本当にわかりません。
普通だと、こういう人物を主役に据えた物語って、楽しめないような気がするのですが、この禿鷹シリーズは違いますね。ぐんぐん読み進んでしまう。

作中で、主要登場人物の一人である監察官が考えます。
「その一方で、松国は禿富に対してある種の畏敬のようなものを、感じていた。禿富の中に、自分自身がついに持ちえなかった貴重な資質を、見出したのだった。
 自分が、よくも悪くも模範的な警察官の一人であり、禿富がその対極に位置する悪徳警官だということは、だれの目にも明らかだろう。
 にもかかわらず、松国は心のどこかで禿富の生き方をうらやましく感じ、あこがれている自分を意識するのだ。」(438ページ)
ここで言われているのは、自分の思い通りに何事も扱ってしまうというだけではなく、なんだかわからないけれど、筋が通っているというのか、傍若無人ではあるけれどもどこか信じられるところがあるというのか、そういう感じであり、不思議な感覚に包まれます。

とはいえ、決して禿富だけで持っている物語ではありません。
マフィア・スダメリカ(略称マスダ)との闘いが全体を通して底流ではあるのですが、その過程で描かれるヤクザにも注目してしまいました。
渋六興業の面々も、魅力的に感じられました――禿富と比べるからかもしれませんが(笑)。
悲劇のヒロイン役を割り振られているバーのママも、よくある造形ではあるものの、しっかり印象に残りました。
ストーリー展開が少々乱暴なところがありますが(暴力シーンが多いという意味ではなく、物語の建付けが乱暴という趣旨です)、しっかり楽しむことができました。
シリーズの今後も楽しみです。





タグ:禿鷹 逢坂剛
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