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北緯43度のコールドケース [日本の作家 は行]


北緯43度のコールドケース

北緯43度のコールドケース

  • 作者: 伏尾 美紀
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2021/10/06
  • メディア: 単行本

<帯から>
私はもう怯まない
この仕事を選んでよかったと思えるように。
博士号取得後、とある事件をきっかけに大学を辞めて30歳で北海道警察に入り、今はベテラン刑事の瀧本について現場経験を積んでいる沢村依理子。ある日、5年前に未解決となっていた誘拐事件の被害者、島崎陽菜(ひなた)の遺体が発見される。犯人と思われた男はすでに死亡。まさか共犯者が  捜査本部が設置されるも、再び未解決のまま解散。しばらくのち、その誘拐事件の捜査資料が漏洩し、なんと沢村は漏洩犯としての疑いをかけられることに。果たして沢村の運命は、そして一連の事件の真相とは。


2023年1月に読んだ5冊目の本です。
単行本で、第67回江戸川乱歩賞受賞作。
先日の桃野雑派「老虎残夢」(講談社)と同時受賞でした。

新人作家の作品にこういうことをいうのは申し訳ないとは思うのですが、非常に読みにくかったです。
個人的には、乱歩賞史上最高の読みにくさ。巻末の選評をみても、選考委員も揃って読みにくいと指摘しています。
「特に序盤、書き方がちょっと読者に不親切すぎて首を傾げたくなった」(綾辻行人)
「整理をしてほしい。順番、内容を整理すれば、このお話、ずっと読みやすくなる」(新井素子)
「惜しむらくは小説としての体裁が整えられていない。」(京極夏彦)
「最も読みにくい作品」「警察小説としての部分に新鮮味はなく、本筋や時系列をいたずらにわかりにくくしているだけで、全部不要であると思いました。」(月村了衛)
「一番小説が下手でした」(貫井徳郎)
応募原稿の段階から、受賞が決まって刊行されるまでのあいだに修正されているはずだと思うのですが、それでも読みにくい。

ついでに言っておくと、タイトルも今一つ。
未解決事件を扱っているので、コールドケースはまあよいとしても、北緯43度というのが北海道を舞台にしているからというだけの意味しかないというのはちょっと困りものではないでしょうか。
応募時点のタイトルは「センパーファイ ──常に忠誠を──」だったそうで、こちらもピント外れ。

選考委員はミステリとしての謎や真相を誉めています。
実はこの部分も、着眼点はおもしろいと思うものの、全体を通してみると無理が多すぎて、ありかなしかと聞かれたら、なしと答えざるを得ないかなと思います。
また最後の対決シーンもあっけなく、不満が残ります。

とこう書いてしまうと、ではこの作品はつまらなかったのですね、と言われそうですが、そうではない。つまらなくはないのですよ、決して。
読みにくいのだけれど、物語の牽引力はありますし、登場人物もカラフルです。
読みにくさの主因である詰め込みすぎという部分が、不思議な魅力を放っているのです。
未整理という部分はなんとかしてもらいたかったとは思いますが、この小説に盛り込まれている数多の物語の要素が組み合わさった様子は、ある意味壮観です。
仕上がりは決して綺麗なものではなく、いびつではあるのですが、一大建造物が構築されたとでも申しましょうか。
作者の力、熱意にねじ伏せられた、ということなのかもしれません。
この作者の別の作品を読んでみたいですね。



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