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いわゆる天使の文化祭 [日本の作家 似鳥鶏]


いわゆる天使の文化祭 (創元推理文庫)

いわゆる天使の文化祭 (創元推理文庫)

  • 作者: 似鳥 鶏
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2011/12/10
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
夏休みも終わりに近づいた文化祭目前のある日、準備に熱の入る生徒たちが登校すると、目つきの悪いピンクのペンギンとも天使ともつかないイラストが描かれた貼り紙が目に飛び込んできた。別館中に貼られた、部活にちなんだ様々な恰好の〈天使〉を不思議に思いつつも、手の込んだ悪戯かと気を抜いていると――。波瀾万丈で事件に満ちた、コミカルな学園ミステリ・シリーズ第四弾。

葉山君シリーズです。
文化祭が舞台かと思ったら、文化祭の準備期間中の事件(笑)。
あらすじには、「手の込んだ悪戯」とありますが、本当に手が込んでいます。事件も、作者も。
事件(悪戯?)の進行や人物の出し入れも、すーっと読めてしまうのですが、振り返ってみると非常によく考えられています。凝っている。
視点が葉山君だけではなくて複数視点になっているので、お馴染み度は低くなってしまっていますが、これがまた味わい深かったですね。他人の眼を通してみた葉山君をご覧いただけます。最後にちょっとだけ出てくる文化祭のシーンなんか、とっても楽しい。
事件が深刻さを増していくにつれて、シリーズの雰囲気を損ねてしまうのではないかと、変な心配もしましたが、着地もぴたりと決まっていてお見事。
殺人事件のような大掛かりな事件はなくても、これまでの作品を拝見したところでは、作者はミステリのセンス十二分、と思います。これからも必ず買います。
柳瀬先輩との仲も気になりますね。どう見ても、進展してるとしか思えないシーンがあちこちに。181ページからのくだりなんて、もう... さて、どうなっているのでしょうか? 『演劇部を始めとする彼女の周囲では、僕は「柳瀬の愛妾」と認知されてしまっているほど』なんてあっけらかんとした説明もあるのですが。早く続編でないかな。
あと、創元推理文庫に収録される作品は日本人作家のものであっても英語タイトルがつけられているのですが、この作品は「KILROY WAS HERE」。かっこいい。創元推理文庫の英語タイトルは作者が考えるのだと聞いたことがありますが、素敵ですね。センスがいいと思いました。
本筋とは関係ないですが、「鋼の錬金術師」 (ガンガンコミックスデラックス)「動物のお医者さん」 (白泉社文庫)-どちらもリンクは第1巻に-の名前が出てくるのも楽しかったですね。これだけでなく、注書きがコミカルで、このシリーズの読みどころ(?)の一つです。
最後に。本書の冒頭9ページに、天使の絵があるんですが、これ見て天使と思う人いますかね? 文中でも「これのどこが天使だ?」と書いてはありますが。まあ、だったら何に見える、といわれても困るんですけど...こういうぬけぬけとしたところがまた楽しい。お気に入りの作家、確定です。

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まもなく電車が出現します [日本の作家 似鳥鶏]

まもなく電車が出現します
似鳥鶏
創元推理文庫

まもなく電車が出現します (創元推理文庫)

まもなく電車が出現します (創元推理文庫)

  • 作者: 似鳥 鶏
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2011/05/28
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
芸術棟が封鎖され、困ったクラブや同好会が新たな棲処を探し始めた。美術部の僕は美術室に移動して、無事作品に取り掛かれるかと思いきや、美術部の領地と思しき開かずの間をめぐる鉄研と映研の争いに、否応なく巻き込まれてしまう。しかし翌日、その開かずの間に突如異様な鉄道模型が出現!?表題作を含む五編収録の、山あり谷ありで事件に満ちたコミカルな学園ミステリ短編集。

「理由(わけ)あって冬に出る」 (創元推理文庫)
「さよならの次にくる <卒業式編>」 (創元推理文庫)
「さよならの次にくる <新学期編>」 (創元推理文庫)
に続く新作です。帯には「にわか高校生探偵団」というフレーズがありますが、このシリーズ、そう呼ぶんですね、知りませんでした。
学校を舞台に、作風としてはいわゆる「日常の謎」に属します。このタイプでは、米澤穂信(「氷菓」 (角川スニーカー文庫)を第1作とする「古典部」シリーズや「春期限定いちごタルト事件」 (創元推理文庫)を第1作とする「小市民」シリーズが該当します)が代表的な作家ではないかと思いますが、似鳥鶏は、米澤穂信とは違ったテイストで展開していて、コミカル、とあらすじには書かれていますが、ドライというか軽やかな味わいを、主人公の葉山くんが醸しているのが特徴だと思います。おそらく、葉山くんが、事件に対して、巻き込まれていても、いい意味で余裕があるというか、一定の距離感を持って語っているのがポイントなのだと思います。葉山くんに彼女ができた!という最終話の「今日から彼氏」などにもよくあらわれているのではないでしょうか。
謎とき、としてみると、とても小粒なものばかりですが、この舞台にはぴったりですし、欠点として捉えるのではなく、このシリーズの雰囲気にマッチした長所として積極的に受け止めたいです。
葉山くん(美術部)と、先輩の柳瀬さん(演劇部)の、友達以上恋人未満ならぬ先輩・後輩以上恋人未満な掛け合いがいつもの読みどころですが、最終話の「今日から彼氏」を受けて、次作ではどんな雰囲気になるのか、楽しみです。

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