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レジまでの推理 本屋さんの名探偵 [日本の作家 似鳥鶏]

レジまでの推理: 本屋さんの名探偵 (光文社文庫)

レジまでの推理: 本屋さんの名探偵 (光文社文庫)

  • 作者: 似鳥 鶏
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2018/04/12
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
書店員は超多忙。品出しや客注をこなし、レジ対応の合間に万引き犯を捕まえ、閉店後には新作を読んでPOP書きやイベントの準備。でも、本と本屋が好きだから、今日も笑顔でお店に出るのだ。でも時には、お客様から謎すぎる悩みが寄せられて……。ここは町の本屋さん。名物店長と個性的なバイトの面々が、本にまつわる事件を鮮やかに解決します。本屋さんよ、永遠に。


「7冊で海を越えられる」
「すべてはエアコンのために」
「通常業務探偵団」
「本屋さんよ永遠に」
4編収録の連作短編集です。

流行のお仕事ミステリです。
流行とは言え、似鳥鶏は一味違う、と言いたいところですが、残念ながら違いません...
個人的には、似鳥作品の中ではかなり下の方、ひょっとしたら最下位くらいになってしまうと思います。

冒頭の「7冊で海を越えられる」、仲たがいした彼女から届いた7冊の本に込められたメッセージを読み解きたい、という謎なんですが、この謎がねぇ。
日常の謎、ですし、この種の暗号というかメッセージって、相手に解いてもらいたいものなので難しいわけがないことはわかっているのですが、あまりにも芸がなさすぎていただけない。現実の謎なんてそんなもの、かもしれませんが、ミステリとして提供する以上、なんのひねりもないのは困ると思うんですよね。すらすら読めるだけ、では似鳥鶏に求めるレベルからして不十分です。

「すべてはエアコンのために」の謎は、持ち出せない本を部屋からどうやって持ち出したのか、というもので、「7冊で海を越えられる」に比べればミステリらしいものにはなっていて一安心。
しかも、推理合戦ではないけれど、珍妙な推理も飛び出して笑えます。
でも、このトリック、この作品の設定の時間で成立するものでしょうか?

「通常業務探偵団」は、おもしろいトリックを使っているとは思うんですが、「学参の担当をしていれば、すぐわかったかもね」(163ページ)と店長が評するこのトリック、現実的には成功しないんじゃないかな。

そして最大の問題が「本屋さんよ永遠に」。
一挙にミステリらしく、と思ったのでしょうか。
でも残念ながら効果を上げるよりは、むしろがっかりというか...
ミステリを読みなれた人なら仕掛けにすぐ気づくと思いますし、ミステリを読みなれていない人なら作者の意図を測りかねるのではないでしょうか。
本屋さんを舞台にした意義を最も感じさせる作品なのに、残念ですね。

ふと思ったのですが、扱われているテーマを考えると、こういう本を本屋大賞にすべきなんじゃないかなぁ。
最初の頃はともかく、本屋大賞は売れている本を「本屋大賞受賞」ということにしてさらに売れるようにするためだけに運営されている賞という印象で、受賞作だと言われてもまったく感銘を受けません。「全国書店員が選んだいちばん! 売りたい本」というのが賞の狙いらしいですが、本と読者を「最もよく知る立場」にある書店員が売りたいものとして選ぶのが、すでに売れている本ばかり、というのでは意味がまったくありません。本屋大賞など見ずにベストセラーリストだけ見ていれば十分です。
似鳥鶏の中ではかなり落ちるといっても、ちまたにあふれている本の中では上位に位置づけてよい作品だと思いますし、ベストセラーの後追いをするだけなんだったら、本屋さんとか出版業界の内情をわかりやすく書いた「レジまでの推理 本屋さんの名探偵」を選んだほうが、本屋大賞として意義あるように思えます。
まあ、本屋さんを舞台にしているから本屋大賞というのでは、ベタすぎますし馬鹿馬鹿しいかもしれませんが、せめてベストセラー上位〇作は選考対象外、とかすればいいのに...



タグ:似鳥鶏
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