SSブログ

節約は災いのもと [海外の作家 は行]


節約は災いのもと (創元推理文庫)

節約は災いのもと (創元推理文庫)

  • 作者: エミリー・ブライトウェル
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2016/11/11
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
テムズ川に浮いた射殺死体は、許欺師の疑いがあるアメリカ人のものだった。またも難事件を押しつけられたウィザースプーン警部補は、被害者の会社の大株主に捜査の的を絞る。もちろん、家政婦のジェフリーズ夫人たちも、こっそり行動を始めていた。今回の目的はふたつ。殺人事件の解決と、警部補が導入した極端な“家計費節約計画”の撤回である! 使用人探偵団シリーズ第4弾。


あけましておめでとうございます。
2020年になりましたね。
本の感想は未だ12月分をよたよたと、なんですが......

「家政婦は名探偵」 (創元推理文庫)
「消えたメイドと空家の死体」 (創元推理文庫)(ブログの感想ページへのリンクはこちら
「幽霊はお見通し」 (創元推理文庫)(ブログの感想ページへのリンクはこちら
に続くシリーズ第4弾です。

ウィザースプーン警部補のぼんくらぶり、絶好調です。
いくらなんでもここまでぼんくらだと、スコットランドヤードの刑事は到底つとまるまい、と思えるくらいに。
「考えてみれば、わたしは殺人事件の捜査にはかなりの手腕を発揮していたではないか。どうやって解決したのかが自分でもよくわからないことなど、どうでもいいのかもしれない」(125ページ)
なんて、ウィザースプーン警部補が考えるシーンがありますが、もう開き直ったというか、あくまでつける薬がないというのか......

前作「幽霊はお見通し」 では、さらに前作「消えたメイドと空家の死体」 のあと事件がなくて退屈していた探偵団の面々でしたが、今回は「幽霊はお見通し」 からほどなく、ウィザースプーン警部補に新たな事件が襲い掛かります。

ミステリ的には、投資詐欺をやっていた被害者ということで、ジェフリーズ夫人たち探偵団が捜査しにくいジャンルの事件であることがポイントでしょうか。ウィザースプーン警部補の手に余ることは当然として......
そのためか、ちょっとストーリー展開がもたついた印象があります。

一方で、探偵団の面々の過去が少しずつ明らかになってくるところが新しいポイントなのでしょう。
ウィザースプーン警部補が持ち出す倹約令で、探偵団、特に料理人であるグッジ夫人が困ってしまう、というのも物語に彩りを添えてはいますが、ちょっとやりすぎですかね。ウィザースプーン警部補に倹約令が愚にもつかないと思い知らせるために(!) わざとまずい料理を作るグッジ夫人のせいで、ウィザースプーン警部補が外でご飯を食べたがる、というのは笑えましたけどね。

前作「幽霊はお見通し」 から登場した、アメリカ人のルティに仕える執事であるハチェットもレギュラーメンバーとして定着しそうですし、シリーズの今後に期待、というところなのですが、邦訳はこのあと途絶えているようですね......


<蛇足1>
「ロッティが逃げた日は、自分が来客に対応しなきゃならないっていうんで、バンシーみたいにわめいていたよ。」(183ページ)
バンシー?
死を予見し泣く女性の姿をした妖精で、スコットランドやアイルランドの伝承に登場するらしいです。

<蛇足2>
ウィザースプーンは硬い馬巣織りの長椅子の上で体をもぞもぞと動かし(185ページ)
馬巣織り、というのがわからなかったですね。
馬巣織とはホースヘアクロス、毛芯(けじん)ともいう。経糸に綿糸、時によって梳毛糸、麻糸を使い、緯糸に馬の尻尾の毛を使った織物で、平織、綾織、朱子織のものがある。」と解説してもらっても今一つピンとこない......

原題:Mrs. Jeffries Takes Stock
作者:Emily Brightwell
刊行:1994年
訳者:田辺千幸








nice!(19)  コメント(8) 
共通テーマ: