半席 [日本の作家 あ行]
<カバー裏あらすじ>
御家人から旗本に出世すべく、仕事に励む若き徒目付の片岡直人。だが上役から振られたのは、不可解な事件にひそむ「真の動機」を探り当てる御用だった。職務に精勤してきた老侍が、なぜ刃傷沙汰を起こしたのか。歴とした家筋の侍が堪えきれなかった思いとは。人生を支えていた名前とは。意外な真相が浮上するとき、人知れずもがきながら生きる男たちの姿が照らし出される。珠玉の武家小説。
「半席」
「真桑瓜」
「六代目中村庄蔵」
「蓼を喰う」
「見抜く者」
「役替え」
6編収録の連作短編集です。
一代御目見の半席で、永々御目見になるべく旗本を目指す徒目付(かちめつけ)の主人公片岡が、正式なお役目以外の頼まれごと、御用をこなしながら成長していくという物語になっています。
正式な取り調べ、捜査では抜け落ちてしまう動機を探るストーリーです。
最初の「半席」は、正直感心しなかったんですよね。
肝心の動機が、ちょっと作り物臭いな、と思えてしまったので。
よく考えられているとは思ったのですが。
さらにラストが悲劇になっているのも、あまり好みじゃないな、と。
ところが、「真桑瓜」に驚かされました。
これ、クリスティの「ネタバレにつき伏せます。気になる方はリンクをたどってください」ではないですか。
いや、もうあっぱれです。
主人公片岡や、彼を取り巻く人物も興味深い人が多く、そのあとはすっかり引き込まれました。
ミステリ的な趣向が勝って、少々建付けが悪くなっているものもありますが(第一話の「半席」がそうだったのかもしれません)、いやいや、こんなにわくわく、楽しく時代小説を読めたら、大満足です。
青山文平のほかの作品も読んでみたいです。
タグ:青山文平