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私の嫌いな探偵 [日本の作家 東川篤哉]


私の嫌いな探偵 (光文社文庫)

私の嫌いな探偵 (光文社文庫)

  • 作者: 東川 篤哉
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2015/12/08
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
男が真夜中の駐車場を全力疾走し、そのままビルの壁に激突して重傷を負った。探偵の鵜飼杜夫は、不可解な行動の裏に隠された、重大な秘密を解き明かしてゆく。(「死に至る全力疾走の謎」)烏賊神神社の祠で発見された女性の他殺死体が、いったん消失した後、再び出現した! その驚きの真相とは?(「烏賊神家の一族の殺人」) 何遍読んでも面白い、烏賊川市シリーズ傑作集!


2023年2月に読んだ6冊目の本です。
「私の嫌いな探偵」 (光文社文庫)
東川篤哉の烏賊川市シリーズの短編集で
「死に至る全力疾走の謎」
「探偵が撮ってしまった画」
「烏賊神家の一族の殺人」
「死者は溜め息を漏らさない」
「二〇四号室は燃えているか?」
の5編収録。

「私立探偵、鵜飼杜夫。黎明ビルの四階にて《トラブル大歓迎》のキャッチフレーズとともに、探偵事務所の看板を掲げる彼こそは、街いちばんの名物探偵、略して、名探偵である。」(63ページ)
とは言い得て妙。
名探偵とは言い難いけれど、それでもこの鵜飼杜夫、数々の事件を解決してきてはいますね。

「死に至る全力疾走の謎」は奇抜なトリックが特徴ですが、このトリックでこの作品のような状況になるでしょうか?
すくなくとも「壁に向かってもの凄い勢いで走っていく姿」(18ページの目撃者の証言)のようには見えないと思います。

「探偵が撮ってしまった画」は連続した写真が不可能状況を解き明かすきっかけになるという話ですが、うーん、この段取りに切れ味がないのが残念。トリックの解明はできたとしても決め手にはならないし、トリックそのものがあまりにも凡庸で写真がなくても解明できそうです。

「烏賊神家の一族の殺人」は現場の状況がわかりにくいのが難点。まあ、はっきり書いてしまうとトリックが露骨になりすぎるからだと思いますが、ずるい印象をぬぐえません。
ただ、剣先マイカというゆるキャラには注目すべきではあるマイカ(笑)。

「死者は溜め息を漏らさない」は、エクトプラズムを見た中学生という謎がおもしろい。
ただ解明された状況を見て、エクトプラズムと思うことはないのではないかと感じてしまうのが難点です。

「二〇四号室は燃えているか?」での小道具(と書いておきます)を利用したトリックがあまりにも陳腐なのでびっくりできますが、作中に書かれているような流れで手がかりが捜査で見過ごされることはあり得ないと思うので、さらにがっかり。

ベタな笑いにくるまれた本格ミステリというのがこのシリーズの(というか東川篤哉の)売りだと思うのですが、どうもこの短篇集ではユーモアというのを隠れ蓑にして詰めるべき点を詰めないでいるように思えてならないですね。





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