SSブログ
日本の作家 は行 ブログトップ
前の10件 | 次の10件

北緯43度のコールドケース [日本の作家 は行]


北緯43度のコールドケース

北緯43度のコールドケース

  • 作者: 伏尾 美紀
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2021/10/06
  • メディア: 単行本

<帯から>
私はもう怯まない
この仕事を選んでよかったと思えるように。
博士号取得後、とある事件をきっかけに大学を辞めて30歳で北海道警察に入り、今はベテラン刑事の瀧本について現場経験を積んでいる沢村依理子。ある日、5年前に未解決となっていた誘拐事件の被害者、島崎陽菜(ひなた)の遺体が発見される。犯人と思われた男はすでに死亡。まさか共犯者が  捜査本部が設置されるも、再び未解決のまま解散。しばらくのち、その誘拐事件の捜査資料が漏洩し、なんと沢村は漏洩犯としての疑いをかけられることに。果たして沢村の運命は、そして一連の事件の真相とは。


2023年1月に読んだ5冊目の本です。
単行本で、第67回江戸川乱歩賞受賞作。
先日の桃野雑派「老虎残夢」(講談社)と同時受賞でした。

新人作家の作品にこういうことをいうのは申し訳ないとは思うのですが、非常に読みにくかったです。
個人的には、乱歩賞史上最高の読みにくさ。巻末の選評をみても、選考委員も揃って読みにくいと指摘しています。
「特に序盤、書き方がちょっと読者に不親切すぎて首を傾げたくなった」(綾辻行人)
「整理をしてほしい。順番、内容を整理すれば、このお話、ずっと読みやすくなる」(新井素子)
「惜しむらくは小説としての体裁が整えられていない。」(京極夏彦)
「最も読みにくい作品」「警察小説としての部分に新鮮味はなく、本筋や時系列をいたずらにわかりにくくしているだけで、全部不要であると思いました。」(月村了衛)
「一番小説が下手でした」(貫井徳郎)
応募原稿の段階から、受賞が決まって刊行されるまでのあいだに修正されているはずだと思うのですが、それでも読みにくい。

ついでに言っておくと、タイトルも今一つ。
未解決事件を扱っているので、コールドケースはまあよいとしても、北緯43度というのが北海道を舞台にしているからというだけの意味しかないというのはちょっと困りものではないでしょうか。
応募時点のタイトルは「センパーファイ ──常に忠誠を──」だったそうで、こちらもピント外れ。

選考委員はミステリとしての謎や真相を誉めています。
実はこの部分も、着眼点はおもしろいと思うものの、全体を通してみると無理が多すぎて、ありかなしかと聞かれたら、なしと答えざるを得ないかなと思います。
また最後の対決シーンもあっけなく、不満が残ります。

とこう書いてしまうと、ではこの作品はつまらなかったのですね、と言われそうですが、そうではない。つまらなくはないのですよ、決して。
読みにくいのだけれど、物語の牽引力はありますし、登場人物もカラフルです。
読みにくさの主因である詰め込みすぎという部分が、不思議な魅力を放っているのです。
未整理という部分はなんとかしてもらいたかったとは思いますが、この小説に盛り込まれている数多の物語の要素が組み合わさった様子は、ある意味壮観です。
仕上がりは決して綺麗なものではなく、いびつではあるのですが、一大建造物が構築されたとでも申しましょうか。
作者の力、熱意にねじ伏せられた、ということなのかもしれません。
この作者の別の作品を読んでみたいですね。



nice!(13)  コメント(0) 
共通テーマ:

老子収集狂事件 [日本の作家 は行]


(P[ふ]3-2)老子収集狂事件 (ポプラ文庫ピュアフル)

老子収集狂事件 (ポプラ文庫ピュアフル)

  • 作者: 藤野 恵美
  • 出版社/メーカー: ポプラ社
  • 発売日: 2015/11/05
  • メディア: 文庫

<カバー裏表紙あらすじ>
弱小タウン誌『え~すみか』のバイト編集者・真島が出会った美女書道家の胡蝶先生は、中国の思想家・老子の言葉を引用し、どんな謎をも解き明かす名探偵だった。ある日、寂れた神社の賽銭箱に、三千万円が投げ入れられる珍事が起こる。折りしも、街では猫の連続行方不明事件も起きているようで……。
ハルさん』の著者が贈るほのぼのユーモアミステリー、すべての謎が明かされる涙と笑いの完結篇!


読了本落穂拾いです。
藤野恵美「老子収集狂事件」 (ポプラ文庫ピュアフル)
「猫入りチョコレート事件」 (ポプラ文庫ピュアフル)(感想ページはこちら)の続編にして完結編。
手元の記録によると2017年10月に読んでいます。「猫入りチョコレート事件」からそれほど間を開けずに読んだのですね、珍しい。

今回もタイトルが「老子収集狂事件」と、やってくれています。

収録作品は
「見えないスクリーン」
  ……ジョン・スラデック「見えないグリーン」 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
「金曜日ナビは故障した」
  ……ハリイ・ケメルマン「金曜日ラビは寝坊した」 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
「五匹の仔猫」
 ……アガサ・クリスティー「五匹の子豚」 (ハヤカワ・クリスティー文庫)
「そして江角市の鐘が鳴る」
 ……キャサリン・エアード「そして死の鐘が鳴る」 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
「老子収集狂事件」
 ……ディクスン・カー「帽子収集狂事件」 (創元推理文庫)
の5つ。
それぞれ内容が元の作品にちなんでいるわけではないですが、こういうのは楽しい。

前作「猫入りチョコレート事件」のあとがきで作者も「少しでも朗らかな気持ちになり、くすりと笑っていただけたなら幸いです」と書いておられた通り、肩の凝らない軽ミステリを目指した作品で、それはその通りなのですが、探偵役である(はずの)胡蝶先生の謎が明らかになっていくにつれ、現実的なというか俗世間的なというか、世知辛い(?) 内容も絡んできます。

老子の使い方はかなり強引ですが、猫が登場するので許す!(←偉そうに、何様?)
大器晩成ならぬ大器免成というのは気に入りました。いい言葉。

推理に使う老子は強引で無理筋でも、物語の着地に用いられるところはしっくりきました。
軽ミステリとして楽しい連作です。



タグ:藤野恵美
nice!(14)  コメント(0) 
共通テーマ:

〇〇〇〇〇〇〇〇殺人事件 [日本の作家 は行]


○○○○○○○○殺人事件 (講談社文庫)

○○○○○○○○殺人事件 (講談社文庫)

  • 作者: 早坂 吝
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2017/04/14
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
アウトドアが趣味の公務員・沖らは、仮面の男・黒沼が所有する孤島での、夏休み恒例のオフ会へ。赤毛の女子高生が初参加するなか、孤島に着いた翌日、メンバーの二人が失踪、続いて殺人事件が。さらには意図不明の密室が連続し……。果たして犯人は? そしてこの作品のタイトルとは? 第50回メフィスト賞受賞作


読了本落穂ひろいです。
手元の記録によると2018年1月に読んでいます。
早坂吝「〇〇〇〇〇〇〇〇殺人事件」 (講談社文庫)

第50回メフィスト賞受賞作で、「2015本格ミステリベスト10」第6位。
文庫の帯に、「ミステリが読みたい! 2015年版」(早川書房)第1位! と書かれていて、いつもこの早川のベストはこのブログで使っていないのですが一位であれば、と思って確認したところ第7位。
あれっと思って帯をもう一度見たら、(国内篇新人部門)と小さく書かれていました。

ミステリを読んでずいぶん長くなりますが、一番の衝撃作、です。
というより、撃作、というべきかもしれませんが。読者を選ぶ作品ですね。嫌いな方はとことん嫌いでしょう。
早坂吝らしくエロ全開で、軽薄に軽快につづられていきますが、ミステリの骨格はしっかりしっかり忍ばされています。

タイトルが非常に特徴的ですね。
文庫本の表紙は、〇の数がわかりやすくていい。〇は八つ。
文庫本の奥付には「まるまるまるまるまるまるまるまるさつじんじけん」とルビが振られています。
冒頭「読者への挑戦状」が掲げられていて、タイトル当てを挑まれています。〇〇の部分はことわざだと。
(英語だとよいのですが、日本語だと漢字をひらく、ひらかないで文字数が変わってしまうのが気になりますが、これは余計な話)

このタイトル当てという趣向に加えて、ミステリ的側面から言うと、この「〇〇〇〇〇〇〇〇殺人事件」を特徴づけるポイントがあと2つあります。
厳密にはネタバレになってしまいますが、
特徴2は、孤島が舞台であることの必然性、
特徴3は、物理的な(と呼んでおきます)トリック、
です。
個人的に、特徴2でギョッとし、特徴3で爆笑してしまいました。

これらを成立させるのに、南国モードと通常モードで人格が切り替わる主人公(視点人物)というのがとても重要なポイントとなっています。
南国モードの一人称が俺、通常モードの一人称が僕、という親切設計でわかりやすく、親しみやすい。
入れ替わる113ページとか楽しいですよ。
探偵役である上木らいちは本作が初登場作ですが、初登場シーンからインパクト大。
島へと向かう船の中からすでにエロ全開。さすがです。

特徴2は、あっぱれと言いたくなるような首尾で、きめ細かに手がかり(?) が埋め込まれていて、さらっと読み飛ばしたような箇所が、そういう意味だったのか、とにんまりできます。
今回この感想を書こうとしてパラパラと見返していたのですが、結局ほとんど通読してしまい、あちこちに紛れ込んでいる細かな表現をとても楽しんでしまいました。
この特徴だと、クローズドサークルが成立するのが必然であることに深く感心しました。

特徴2が読者に明らかになった段階で、読者がそれまで想定していた謎解きが一旦ご破算になってしまうところがすごい。
仮面を常につけているという非常に怪しげな特徴を持った登場人物がいるのですが、その段階で読者は「ああ、なるほどねー」とある種のトリックを想定して読み進めると思うんですね。
でも、特徴2が明かされた途端、その想定が吹っ飛ばされてしまう。
この衝撃にはすっかりやられてしまいました。
特徴2のせいで、それまで組み立てていた推理・推測をやり直さなければならない。

その衝撃が冷めやらぬうちに、特徴3が読者に襲い掛かります。
特徴3は、特徴2が明らかになるまではまったく想定外の事象に関連していまして、まさかね。
ただ、特徴3は、個人的には無理があると思います。これ、すぐばれますよ、きっと。
ここで使われる手法には詳しくはないのですが、通常想定される手法とは違う手法が適用されたのだ、と説明されているものの、それでもほかの人が気づかないということはありえないと思います。
見ないようにするのが普通だとはいえ、どうしたって見えてしまうものですし、見えてしまえば違いは明らかだと思うんですよね。ここで使われている手法ではカバーしきれない違いがそもそもある気がします。本当に千差万別ですよ。
でもね、この発想、好きです。爆笑。
犯人のセリフにらいちが突っ込むところ(265ページ)とか、もう最高。
こんなバカバカしいアイデア(褒め言葉です)を作品に仕立て上げるなんて、早坂吝、すごい!!

特徴2から特徴3にいたる衝撃の連打でもたらされる(読者の)感情の起伏は、なかなか得られない読書体験でした。

エロの衣を纏っていなければ本書の成立は難しかったでしょうね。性行為がらみのエロだけではなく、中学生・高校生男子レベルのエロもあります(お嫌な方もいらっしゃるでしょうから、下の<蛇足1>に書いておくことにします)
さらに探偵が犯人を突き止める過程でも、エロは重要なポイントとなっています。
その後の作品も読み進めているところですが、最強のエロ・ミス作家かもしれません(笑)。


<蛇足1>
「俺は顔の傷を見ないよう、実は少しだけ見てみたいという気持ちもあるが、失礼なので絶対に見てしまわないよう、じっと俯いていた。そんな俺の目に皮を被ったペニスが映る。俺のムスコも仮面を着けているのだ。包茎に特段コンプレックスはないつもりだったが、重紀のズル剥けと並ぶと、一流民間企業に就職した大学の同期の手取りを聞いた時のような劣等感が芽生えてくる。右隣に座っている浅川の、同じく皮被りを盗み見て、こんなもんでいいんだと自分に言い聞かせる。」(134ページ)
包茎を気にするシーンって、ミステリではなかなかお目にかかれませんね。
西村京太郎の青春ミステリ「おれたちはブルースしか歌わない」 (講談社文庫)にちらっと出てきたような記憶がありますが、それくらいでしょうか。
しかし、この「〇〇〇〇〇〇〇〇殺人事件」のすごいところは、こういう部分も謎解きに奉仕している(?)点ですね。

<蛇足2>
「風呂から出て、食堂でメタリックに冷えたコーラを飲んでいると、」(135ページ)
メタリックに冷えた、という比喩表現がいいですね。すごく伝わります。

<蛇足3>
「そこまで先読みしていたとは……。まさかこいつクローズドサークル慣れしている!?
 そっち方面でも経験豊富なのかもしれない彼女は続ける。」(251ページ)
らいちに対する主人公沖健太郎のコメントですが、クローズドサークル慣れ(笑)。
そして「そっち方面」。もちろん「こっち方面」はエロですね。



nice!(15)  コメント(0) 
共通テーマ:

完本 妖星伝〈1〉鬼道の巻・外道の巻 [日本の作家 は行]


完本 妖星伝〈1〉鬼道の巻・外道の巻 (ノン・ポシェット)

完本 妖星伝〈1〉鬼道の巻・外道の巻 (ノン・ポシェット)

  • 作者: 半村 良
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 1998/09/01
  • メディア: 文庫


<カバー裏あらすじ>
神道とともに発生し、超常能力をもってつねに歴史の闇に潜み暗躍してきた異端の集団──鬼道衆。彼らの出没する処、必ず戦乱と流血、姦と淫が交錯する。彼らを最も忌み嫌った徳川政権は徹底的な弾圧を繰り返した。が、八代将軍吉宗が退いた今、鬼道衆の跳梁が再び開始された! 民族や宗教を超え、人類の破壊と再生を壮大なスケールで描く、大河伝奇巨編。


2022年10月に読んだ2冊目の本です。
もともと全7巻の妖星伝を3巻に編集しなおして文庫化されたものです。
まさに大伝奇。
半村良の伝奇小説、大好きです。
「産霊山秘録」 (ハヤカワ文庫JA)
「石の血脈」 (ハルキ文庫)など、とても面白かったですね。夢中になりました。
それでも、妖星伝はさすがに全7巻ということで、ためらっていたのですが、ついに読み出しました。
本当は全部を一気に読もうと思っていたのですが、逆に読んでしまうのがもったいないような気がして、1巻だけで一旦止めることにしました。

いやあ、もう楽しい、楽しい。
時代背景といい、扱われている内容といい、決してとっつきやすいものではないのに、読み始めたらやめられない。
鬼道と命名されていますが、裏の勢力というのか闇の勢力というのか、歴史の流れに組み込まれている点が伝奇の醍醐味ですよね。
「たとえば、伊賀、甲賀など、細作、游偵を業とする者は大伴細人(しのび)を祖と称している。大伴細人は伊賀の人とされ、紀州の昔に大伴氏が在ったことにやや符合する。そのうえ、細作、游偵は孫氏の兵法第十三篇に用閒(ようかん)として明記されている。孫氏とは呉の人。孫氏の書がこの国にもたらされたのは、どうやら紀州に帰化人が増えた頃と一致するらしい」
「なるほど、すると忍びが用いる九字の印や密呪とも重なるわけだな」
「そうなのだ。密呪とはすなわち真言だ。」(228ページ)
あるいは
「四諦三法印」
「苦、集、滅、道で四諦。諸行無常、諸法無我、涅槃寂静で三法印だ。」(238ページ)
「さっきいった四諦三法印は修験道の根本だが、山伏たちの実際の用には、むしろ六神通の方が親しまれている。」
「第一の神通は天眼通」「二番目は天耳通」「三が神足通」「四番は他心痛でこれは読心の術という奴だろう」「第五が今お幾のいった昇月法にあたる宿命通だ。過去未来を見通す力さ」「第六の神通力は」「漏尽通。人間界はいうに及ばず、地獄、極楽、天上界……どこでも木戸ご免さ。」(242ページ)
なんか、わくわくしますよね。

その鬼道たちの話から、さらに大きく拡がっていきます。
なにしろ空を飛ぶ円い船、すなわち宇宙人(補陀洛[ポータラカ]人と呼んでいます)まで絡んできます。
「宇宙のどこに、これほど生命に満ち溢れた、血みどろの星があるのでしょう。あり得ません。ここは極端なまでに生命に満たされているのです。この星の春の醜怪さをご承知のはずです。草花も樹々も、鳥もけものも人も、他の命を奪い合っているのです。そうした殺し合う世界に何がもたらされるか、お気付きでしょうか」
「進化の加速」(595ページ)

物語がどう展開し、どう収束していくのか、この第1巻だけではまったくわかりませんが、日本の江戸時代という背景をはるかに超えて展開してくことは確実で、とても楽しみです。



<蛇足1>
「三人は途中菊川の立て場で軽く腹ごしらえをし、さらに登って子育観音の辺りへさしかかった。」(208ページ)
「立て場」がわかりませんでした。宿場と宿場の間にあって、旅人や人足、駕籠かきなどが休息した場所のことらしいです。

<蛇足2>
「歩度をまったく乱さず、次に踏み出した足の爪先を軸にして、独楽のように体をまわしたのである。」(209ページ)
「歩度」も知らない単語でした。歩く速度や歩幅をまとめて言うことができる便利な単語ですね。

<蛇足3>
「あれが有名な四日市の諏訪明神か」
―略―
「七月のおわりに京の祇園祭り、近江の長浜祭りと並べられるたいそうな祭りをする」(224ページ)
諏訪大社のことかと思ったら場所が違いますね。四日市にも行ってみたいかも。





nice!(14)  コメント(0) 
共通テーマ:

アリス・ザ・ワンダーキラー 少女探偵殺人事件 [日本の作家 は行]


アリス・ザ・ワンダーキラー: 少女探偵殺人事件 (光文社文庫)

アリス・ザ・ワンダーキラー: 少女探偵殺人事件 (光文社文庫)

  • 作者: 吝, 早坂
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2020/01/08
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
十歳の誕生日を迎えたアリスは、父親から「極上の謎」をプレゼントされた。それは、ウサ耳形ヘッドギア《ホワイトラビット》を着けて、『不思議の国のアリス』の仮想空間(バーチャルリアリティ)で謎を解くこと。待ち受けるのは五つの問い、制限時間は二十四時間。父親のような名探偵になりたいアリスは、コーモラント・イーグレットという青年に導かれ、このゲームに挑むのだが──。


2022年8月に読んだ5冊目の本です。
早坂吝の5作目の著作です。

「今からしっかり勉強して、私のような堅い職業につきなさい」(7ページ)
としつこく言ってくる母親から逃れるように、父親のような名探偵になりたいアリス10歳が主人公。
「私の前に不思議はない!」
なんて決め台詞まで持っているのですから、なかなかのものです。
もっともこの点は
「僕からすれば、どうしてその恥ずかしい台詞を毎回大真面目に言えるのかが不思議なのだが」(177ページ)
なんて作中でからかわれたりもしていますが。

誕生プレゼントにもらったバーシャルリアリティの世界で謎を解く、という設定です。
5問用意されています。

こういう作中人物が作った謎を解くという設定は好きではありません。
よほど堅固な設定と詳細な説明がないと、謎解きの前提がしっかりしたものとはならない、と考えているからです。
謎解きクイズではなく小説である以上、事前に長々と設定を説明するわけにはいかず、どうしても途中で説明が繰り出されるということになるわけですが、よほどうまく組み立ててもらわないと、後出しじゃんけんでなんでもできるじゃん、という印象を受けてしまいがちです。

また、当然ながら、それぞれの内容の解決・真相とは別に、出題者の意図というものが問われるはずなのですが、この取り扱いが意外と難しいのか、単に謎を出したかった、というだけのものになっていることもあり、更なるがっかりということにもなりがちです。

その点で、この「アリス・ザ・ワンダーキラー: 少女探偵殺人事件」 (光文社文庫)は背景がミステリ的にしっかり作り込まれていてよかったです。
さすがは早坂吝。

第一問 SOLVE ME はクイズ、ですね。まあ小手調べといったところ。

第二問 ハム爵夫人はかなり残酷な話ですが、原典である
「不思議の国のアリス」も相当残酷なところがあるので、これはこれで。
余談ですが、アリスのリンクをロバート・サブダの<とびだししかけえほん>に貼ったのですが、この絵本とてもすごいものなので、ぜひご覧ください。高いけど...

第三問 カラスと書き物机はなぜ似ているか はダイイング・メッセージ(?)を扱っています。もともとダイイング・メッセージはパズルに近いので、こういうのに向いていますね。

第四問 卵が先か はハンプディ・ダンプディが殺される事件を扱っています。おもしろい着想のトリックを使っているな(しかも、戯画的な世界観に合っています)、と思えたのですが、うまくいくかな?と疑問に思うこともないではないです。

第五問 Hurt the Heart はちょっと強引なところもありますが、周到に作りこまれた作品で、論理的な謎解きというものを通して意外な犯人を浮かび上がらせています。
そして、この謎解きそのものがエピローグ、すなわちこの作品全体の背景につながっていくところが見事です。


<蛇足1>
「最近、この国を治める『ハートの王』が新しい王妃『ハートの女王』を迎えたのですが、この女王が大層わがままで、数々の独裁的な法律を作ったのです。」(101ページ)
ここを読むまでなんとも思っていなかったのですが、英語 queen の訳は、女王とも王妃ともなるのですね。日本語では女王と王妃は別物ですね。
したがって、普通に考えると引用した部分の「この女王が」のところは日本語的には「この王妃が」というべきところなのですが、「ハートの女王」という名称をつけてこの点をクリアしていますね。

<蛇足2>
「『卵の体を作るには卵を食べるのが一番だ。私からすれば、人間が同族を食べたがらないのは理解に苦しむね』
 ハンプティは人を食ったようなことを言うと、私に聞いてきた。」(163ページ)
一瞬合理的な考えのように思ってしまいました(笑)。



タグ:早坂吝
nice!(13)  コメント(0) 
共通テーマ:

独白するユニバーサル横メルカトル [日本の作家 は行]


独白するユニバーサル横メルカトル

独白するユニバーサル横メルカトル

  • 作者: 平山 夢明
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2006/08/22
  • メディア: 単行本


2022年8月に読んだ2冊目の本です。
第59回日本推理作家協会賞短編賞受賞作を表題作とした短篇集です。
単行本で読みましたが、当然、文庫化されています。

独白するユニバーサル横メルカトル (光文社文庫)

独白するユニバーサル横メルカトル (光文社文庫)

  • 作者: 平山 夢明
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2009/01/08
  • メディア: 文庫


「C10H14N2(ニコチン)と少年──乞食と老婆」
「Ωの聖餐」
「無垢の祈り」
「オペラントの肖像」
「卵男(エッグマン)」
「すまじき熱帯」
「独白するユニバーサル横メルカトル」
「怪物のような顔(フェース)の女と溶けた時計のような頭(おつむ)の男」
の8編収録の短編集です。

ホラーはもともと得意科目ではないことに加えて、グロい描写を特に苦手としますので、実のところ好きな作風ではありません。
普通だったら手に取らないところ、日本推理作家協会賞を受賞しているので購入した次第。

で、当然の如く永らく積読にしていたわけですが、こわごわ読みだしたら、好きな作風ではないのに、一編一編読み進んでやめられず一気に読んでしまいました。
なんという吸引力。
8話それぞれ違うタイプの悪夢を見せてくれます。

やはり表題作「独白するユニバーサル横メルカトル」のインパクトが強いですね。
語り手が地図という技巧、その語り口が執事風という楽しさに浸りました。

「怪物のような顔の女と溶けた時計のような頭の男」に
「確かにブリキ板に落ちたスプーンを目覚まし代わりにするのは画家ダリが工房で好んで使った眠り方だった。」(268ページ)
なんてさらりと衒学的なことが書いてあるように、グロになかにも変幻自在な語りが魅力なのだと思います。

しかし、この年の協会賞の候補作は、表題作に加えて
『克美さんがいる』 あせごのまん
『壊れた少女を拾ったので』 遠藤徹  
『バスジャック』 三崎亜記
『流れ星のつくり方』 道尾秀介
というラインナップだったようで、ホラーサイドに大きく寄った候補作群だったのですね。


nice!(13)  コメント(0) 
共通テーマ:

火喰鳥を、喰う [日本の作家 は行]


火喰鳥を、喰う

火喰鳥を、喰う

  • 作者: 原 浩
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2020/12/11
  • メディア: 単行本

<帯裏側あらすじ>
信州で暮らす久喜雄司に起きた二つの異変。ひとつは久喜家代々の墓石が何者かによって傷つけられたこと。もうひとつは、70年以上前の死者の日記が届けられたこと。日記は太平洋戦争末期に戦死した雄司の大伯父の、生への執着が書き記されていた。そして日記が届いた日を境に、久喜家の周辺では怪異が起こり始める。日記を発見した新聞記者の狂乱、雄司の祖父・保の失踪。そして日記に突如書き足された、「ヒクイドリ ヲクウ ビミ ナリ」という一文。雄司は妻の夕里子とともに超常現象に詳しい北斗総一郎に頼るが……。


2022年7月に読んだ7冊目の本です。
第40回横溝正史ミステリ&ホラー大賞受賞作。
この賞、名前が転々と変わっていますが、ナンバリングは刷新されておらず、横溝正史賞からの連番なのですね。
単行本で読みました。
もう文庫本になっています。書影はこちら。

火喰鳥を、喰う (角川ホラー文庫)

火喰鳥を、喰う (角川ホラー文庫)

  • 作者: 原 浩
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2022/11/22
  • メディア: 文庫

単行本と同じ絵を使っていますね。

さて、横溝正史ミステリ&ホラー大賞受賞作。
ミステリかホラーか、というとミステリ読者としては残念ながらホラー。
何が起こったのか知りたくて、真相を追い求めていく姿はミステリ的。
戦時中の火喰鳥のエピソードが浮かび上がってきて、ホラー色が出てくるのですが、これが怖くない。
エンディングへ向けてホラー色が高まっていきますが、どうも理が勝っている印象。

ですが、そこが面白い。
謎を追求していく様子にすっかり引き込まれてしまいました。
賞にふさわしい作品だと思います。

ただ、個人的にこのエンディングが好きじゃないんですよね。
あくまで好き嫌い、好みの問題なので、作品の価値には毫も影響を与えませんが。そこがちょっと残念でした。


<蛇足>
「我々の戦力を鑑みるに、敵陣への玉砕攻撃の挙に及ぶは愚の骨頂と言うべき他なく」(42ページ)
戦時中の日記の記載です。
当時「戦力鑑みる」という言い方をしたとは思えないのですが。
そもそも「所々片仮名混じりの達筆」(30ページ)とされていますが、当時の感覚だとほぼ片仮名ではないかと思います。(現代の)記者が介在しているのだから、今風に読みやすくした、とでもしておけばよかったのにと思います。
それであれば、「鑑みる」という不自然な用法は、記者が勝手に直したからだと解釈できてよかったのに。
もはや「を鑑みる」も正しいという人の方が多いようですので、無駄な指摘ではありますが。まさに、蛇足。
これを最後に「を鑑みる」を指摘するのはやめようと思っています。




nice!(16)  コメント(0) 
共通テーマ:

松谷警部と向島の血 [日本の作家 は行]


松谷警部と向島の血 (創元推理文庫)

松谷警部と向島の血 (創元推理文庫)

  • 作者: 平石 貴樹
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2016/09/25
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
必ず解決して、警部のご退職に間に合わせます―とは言ったものの、白石巡査部長は真相解明の糸口を掴めず焦っていた。犠牲者は力士ばかり、現場の共通項から同一犯と思われるが、アリバイと動機を考え合わせても有力な容疑者は浮かんでこない。迫る松谷警部定年の日。現場百遍の教えに従って調べ直す白石が見出した手掛かりとは……。フーダニットの極限に挑むシリーズ第四作。



2021年11月に読んだ最初の本です。
「松谷警部と目黒の雨」 (創元推理文庫)(感想ページはこちら
「松谷警部と三鷹の石」 (創元推理文庫)(感想ページはこちら
「松谷警部と三ノ輪の鏡」 (創元推理文庫)(感想ページはこちら
に続くシリーズ第4作で、松谷警部が定年を迎えるということで、このシリーズも最終作となりました。

今回もいつものように(?)、創元推理文庫の常で、表紙をめくった扉のあらすじを引用します。

これが現職最後の担当事件か――松谷警部が駆けつけた現場は両国国技館から歩いて行ける距離にあった。被害者は五稜郭光夫、渡島部屋の十両力士だという。胸部を刺されており、傍らに「コノ者、相撲道ニ悖ル」と印刷された紙片が。捜査が進むなか先輩格の鴎島、葛灘が相次いで殺害され、同じメッセージが残っていた。狭い社会だけに関係者も限られるが、三件全部にアリバイのない者はおらず、動機やメッセージの真意も定かではない。苦心惨憺の末、白石巡査部長が真相に至ったのは、実に松谷警部の退職二日前だった!


今回取り上げられているスポーツは相撲です。(相撲はスポーツじゃないとお叱りを受けるかもしれませんが)

何より今回特筆すべきなのは、懐かしの更科ニッキの義理の娘マイラが登場し、事件に絡んでくることですね。
相撲に外国人?と思わないでもないですが、すっきり入り込んでいます。

事件の方は、無事、松谷警部の引退直前に解決します。白石巡査部長、さすが。
謎解きは、松谷警部の引退旅行を兼ねて函館の「五島軒」で行われるという設定です。
第五章がほぼまるまるこの謎解きに当てられていて、ニンマリ。
こういう解決シーンが読みどころですよね。特に308ページから展開されるラジオをめぐる推理は読んでいて気持ちよかったですね。
事件の構図を振り返ってみると、よくこんな事件をロジックで解決したな、と感心します。同時に、もはやこれは難癖のレベルになりますが、そこが弱点でもあるなと感じました。

最後の最後に、松谷警部が詠んできた俳句が抄としてまとめられていて、23句載っています。
ひょっとしてなにかの暗号になっていたりしないかな、と考えてみましたがさっぱりわかりません。たぶん邪推でしょうね(笑)。

松谷警部が引退しても、白石巡査部長は現役ですし、警察にいなくても事件にかかわりあいになることだってあるでしょう。
このシリーズはいったん打ち止めにしても、また出会いたいなと思いました。



<蛇足1>
「捜査本部が置かれてから、同一犯による殺人が次々と起こるとは、どういうことなんだ。これじゃまるで火曜サスペンス劇場じゃないか。」(194ページ)
火曜サスペンス劇場、懐かしいですね。
若い方はご存じないのではないでしょうか?

<蛇足2>
「目の前に夫の昶(あきら)がいて、音を立てて明滅している電話機を巡査部長の顔に近づけていた。」(194ページ)
白石巡査部長の夫登場なのですが、昶とは珍しいです。
この漢字、常用漢字でも当用漢字(懐かしい)でも人名漢字(これまた懐かしい語ですね)でもないので、1948年の戸籍法改正以降は名前に使えないのではないかと思います。
昶さんの年齢設定がそれほどの高齢とは思えませんので、少々変ですね(笑)。


<2023.8.3追記>
「2017本格ミステリ・ベスト10」第9位です。

nice!(14)  コメント(0) 
共通テーマ:

猫入りチョコレート事件 [日本の作家 は行]


(P[ふ]3-1)猫入りチョコレート事件 (ポプラ文庫ピュアフル)

(P[ふ]3-1)猫入りチョコレート事件 (ポプラ文庫ピュアフル)

  • 作者: 藤野 恵美
  • 出版社/メーカー: ポプラ社
  • 発売日: 2015/07/03
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
横暴な編集長にこき使われている弱小タウン誌『え~すみか』のバイト編集者・真島は、取材先の猫カフェで、“密室”から従業猫の一匹が消えた事件に遭遇する。猫を捜す真島の前に現れたのはチャイナドレスに身を包んだ謎の美女。書道家の胡蝶と名乗る彼女は、中国の思想家・老子の言葉を引用し、どんな事件もたちどころに解決してしまう名探偵だった――!
ハルさん』の著者が贈る、ほのぼのユーモアミステリー。


読了本落穂拾いです。
手元の記録によると2017年7月に読んでいます。

藤野恵美という作者は、「ハルさん」 (創元推理文庫)が本屋さんでどーんと大きく展開されていて以前から気になっていましたが、ミステリ味が薄そうな気がしてなかなか手にとらずにいたところ、タイトルが「猫入りチョコレート事件」ときたら、レーベルがポプラ文庫ピュアフルでジュブナイルだろうとなんだろうと、手にとらずにはいられません。しかも、続巻のタイトルが「老子収集狂事件」 (ポプラ文庫ピュアフル)

で、その「猫入りチョコレート事件」ですが、タイトルのネタ元である「毒入りチョコレート事件」 (創元推理文庫)ばりの多重解決ものか、と思ったら、短編集(連作集)でした。
収録作品は
「店でいちばんかわいい猫」
「幻の特製蕎麦」
「オフ会で死んだ男」
「ヒーローの研究」
「猫入りチョコレート事件」
の5つ。

「店でいちばんかわいい猫」はリタ・メイ・ブラウン「町でいちばん賢い猫」 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
「幻の特製蕎麦」はジョン・ダニング「幻の特装本」 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
「オフ会で死んだ男」はクリスティの「教会で死んだ男」 (ハヤカワクリスティー文庫)
「ヒーローの研究」は「緋色の研究」 (光文社文庫)
をそれぞれ意識しているのでしょうね。
特にだからといって内容が元の作品にちなんでいるわけではなさそうですが。

作者もあとがきで「少しでも朗らかな気持ちになり、くすりと笑っていただけたなら幸いです」と書いておられますが、肩の凝らない軽ミステリを目指した作品です。
老子の言葉は引用されていますが、まあ強引というか無理筋というか、飛躍を楽しむんでしょうね。
謎解きは他愛もないといっても失礼には当たらないのではないかと思いますが、ちょっとした謎を解くと、逆に探偵役である胡蝶先生の謎が深まっていく、という構図が楽しいですね。
続巻の「老子収集狂事件」 で伏線が回収される仕組みです。

<蛇足1>
「好きな歌 乾いた大地。嫌いな歌 濡れた髪のLonely」(203ページ)
「乾いた大地」の方は知りませんが、「濡れた髪のLonely」は知っています。この後段で説明されますが池田聡の曲ですね。
嫌いな歌、かぁ。ぼくは割と好きです。

<蛇足2>
「胡蝶先生はメニューを受け取ると、ひややかな視線で僕を見た。
 それから、懐からすっと筆を取り出して、小皿に突っ込む。
 筆先に、ギョウザのタレが吸い込まれていく。」(209ページ)
謎解きのためとはいえ、食べ物を粗末にしてはいけません。老子に叱られますよ。




タグ:藤野恵美
nice!(14)  コメント(0) 
共通テーマ:

天狗小僧 [日本の作家 は行]


天狗小僧ー大富豪同心(2)(双葉文庫)

天狗小僧ー大富豪同心(2)(双葉文庫)

  • 作者: 幡 大介
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2010/04/08
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
盗賊・霞ノ小源太一味が江戸の町を震撼させていた。そんな折、油問屋・白滝屋の一人息子が高尾山の天狗にさらわれるという事件が起きた。見習い同心の八巻卯之吉は、筆頭同心の村田銕三郎から探索を命じられる。江戸一の札差の息子、卯之吉が八面六臂の活躍をする待望のシリーズ第二弾!


幡大介の「大富豪同心」 (双葉文庫)(感想ページはこちら)に続くシリーズ第2弾。

主人公は、豪商三国屋の若旦那にして、見習い同心の卯之吉。
どう考えても同心として活躍できそうもないキャラクターなのに、そして本人はたいしたことをしないのに、周りが勝手に動いたり、勝手に勘違いしたりして、剣豪で腕利きだと思われてしまう、という設定のシリーズです。

今回も快調に勘違い(卯之吉自身の勘違いもあれば、周りの勘違いも。周りの勘違いのほうが盛大です)がさまざまな事件を解決します。

江戸を騒がす盗賊一味、高尾山で天狗にさらわれて帰ってきた油問屋の一人息子。
こうした事件に加えて、吉原に魅入られてしまった与力の沢田、なんていう難物もあります。
糸がどんどんもつれるにもかかわらず、馬鹿馬鹿しい笑いに包まれながら、するするとほどけていくさまを堪能できます。
おもしろい。

さらっと軽く書かれていますが、「善行を為すために、悪事を働いたことが、いけないのだ」(296ページ)というセリフ、個人的には考えさせられました。
「善行を為すために、悪事を働」くって、小説の中で割とよくあることですから。

このシリーズ、読み進んでいってみようと思いました。
次の「一万両の長屋ー大富豪同心 (3) 」(双葉文庫)も買ってきました!



nice!(15)  コメント(0) 
共通テーマ:
前の10件 | 次の10件 日本の作家 は行 ブログトップ