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空を見上げる古い歌を口ずさむ [日本の作家 さ行]


空を見上げる古い歌を口ずさむ (講談社文庫)

空を見上げる古い歌を口ずさむ (講談社文庫)

  • 作者: 小路 幸也
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2007/05/15
  • メディア: 単行本


<裏表紙あらすじ>
みんなの顔が“のっぺらぼう”に見える――。息子がそう言ったとき、僕は20年前に姿を消した兄に連絡を取った。家族みんなで暮らした懐かしいパルプ町。桜咲く“サクラバ”や六角交番、タンカス山など、あの町で起こった不思議な事件の真相を兄が語り始める。懐かしさがこみ上げるメフィスト賞受賞作。

「東京バンドワゴン」 (集英社文庫) の作者のデビュー作で、メフィスト賞受賞作です。
ミステリ的要素も入ってはいますが、ミステリではないですね、これは。ファンタジーでしょうか?
現在と過去の2つの時制があって、みんなの顔が“のっぺらぼう”に見えるようになってしまった息子彰のために、おなじような症状を抱える兄恭一が語る昔話という設定で、ほとんど過去の話で、現在は過去を呼ぶための額縁のようなつくりです。この額縁部分がなくてもストーリーは展開できるとおもいますが、ノスタルジックなことを強調するために「振り返る」かたちをとりたかったのと、人のつながり、家族という部分を強調するための仕組みとして機能させるために、作りこんであるのだと思いました。
ミステリファンとしては、恭一は現場に居合わせた人物を見たけれど、のっぺらぼうに見えるのでそれが誰だか分からない、というあたりはとても魅力的なシチュエーションなので、それを強く活かして進めていってほしいところですが、そういう狙いの作品ではないので...
ファンタジーとして見るとラストはややありきたりな印象ですが、昭和三十年代や四十年代という時代背景に、企業城下町を舞台にして、視点を子供にすることで、見える範囲をうまく限定し、レトロ感を演出しているので、その雰囲気を楽しめばよいと思います。
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